2013 Fiscal Year Annual Research Report
日本敗戦と新しい国境による台湾・沖縄の変容の口述歴史に基づく研究
Project/Area Number |
25257009
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Research Category |
Grant-in-Aid for Scientific Research (A)
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Section | 海外学術 |
Research Institution | Tokyo Woman's Christian University |
Principal Investigator |
栗原 純 東京女子大学, 現代教養学部, 教授 (40225264)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
所澤 潤 東京未来大学, こども心理学部, 教授 (00235722)
中田 敏夫 愛知教育大学, 教育学部, 教授 (60145646)
菅野 敦志 名桜大学, 国際学部, 講師 (70367142)
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Project Period (FY) |
2013-04-01 – 2016-03-31
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Keywords | 植民地台湾 / 聞き書き / 皇民化 / BC級戦犯 / 捕虜収容所 / 国境 / 戒厳令 / 民主化 |
Research Abstract |
年間、4回の研究会を開催した。その報告者、内容は以下の通りである。台湾と沖縄との交流について取材を重ねてきた『八重山毎日新聞』記者松田良孝氏に「台湾疎開と八重山・沖縄」と題して、戦時中に実施された八重山から台湾への疎開について当事者からの聞き書きを中心に報告していただいた。松田氏が勤務している石垣島の主要な産業であるパイナップル栽培は、戦後、台湾から移住してきた農民により開発されたものであり、研究会では、国境のなかった戦時中の沖縄と台湾との関係、国境が設置された戦後の関係について議論がされた。 12月に開かれた研究会では、フィリピンの捕虜収容所にかんする取材をされてきたライターの成田福裕氏に「モンテンルパ刑務所からの戦犯釈放活動を巡って」と題してモンテンルパの捕虜収容所にかんする報告をしていただいた。また1月の研究会では、朝鮮人・台湾人のBC級戦犯、日本軍の捕虜政策について研究をされてきた大阪経済法科大学アジア太平洋研究センター所長の内海愛子氏に「台湾人BC級戦犯について」と題して、台湾人BC級戦犯からの聞き書きについて、当時の台湾の状況を含めて戦犯として過ごさざるをえなかった方の置かれてきた状況について報告していただした。また、植民地台湾の教育史がご専門の埼玉大学名誉教授の新井淑子氏には「台湾人高等女学校卒業者のインタビュー」と題して報告していただいた。 報告集としては、上記松田氏の研究会に記録を刊行し、また、台湾教育史研究者の弘谷多喜夫氏が70年代に実施した植民地台湾において初等教育に従事していた教員からの聞き書きの記録を整理して刊行した。さらに研究代表者の栗原純は植民地台湾において裁判官として活躍した黄演渥氏のご子息からの聞き書きを重ね、また、研究分担者の所澤潤・中田敏夫は教育関係者から日本統治当時の聞き書きを行った。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
日本語世代の方からの聞き書きについて、教育史、総督府関係者及びその家族などからの聞き書きは今年度も継続的に実施できたこと。本科研との同様の問題関心、取材・研究を共通にする方からの報告を中心とする研究会を4回実施し、その報告集も刊行できたこと。とくに、八重山現地と台湾において長年にわたり取材を重ねてきた松田良孝氏の報告を受け、植民地時代の台湾・沖縄について人の交流について具体的な成果を得たこと。本科研が開始される以前において、長年にわたり、そのご専門分野である教育あるいは皇民化、捕虜政策についてそれぞれ聞き書きをされてきた先行研究者の方からその成果を得て、今後の活動に資することができたこと。研究会に台湾からの留学生など、若い研究者の参加が多くあり、聞き書きを通じて歴史を研究していく方法論、体験などを引き継ぎ、次世代の研究者の養成に貢献しつつあるのではないかと思われること。 以上のことより、おおむね順調に研究は進められてきたのではないかと判断できると思われる。
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Strategy for Future Research Activity |
従来通り、聞き書きの活動をされてきた研究者を招いて研究会を開催するとともに、平成26度の課題としては、台湾において植民地時代の聞き書きの活動をしている台湾の研究者との交流があげられる。 台湾においても近年、口述歴史の学会が組織され、多くの活動記録が出版されている。今までも台湾の日本語世代の方からの聞き書きにおいて台湾の研究者の協力をいただいて来たが、このような協力関係の積み重ねのうえに、平成26度は同学会の中心的研究者、本科研の台湾側研究協力者などとの打ち合わせを重ね、中央研究院台湾史研究所において、日本と台湾との研究者を報告者とする合同の公開研究会の開催を計画している。 この公開研究会において、日本人として台湾に生活した方からと、あるいはまた台湾人として植民地を体験した方からの、同じ聞き書きにしても異なる点も多くみえてくるのではないかと考えている。 台湾において聞き書きをする場合、当時公用語とされていた日本語を使用するのか、ご本人の母語を使用するのかにもより内容が変容することがある。聞き書きをめぐる方法論の議論など、日本と台湾との聞き書きの成果を交流することにより、当時の社会、生活をより多面的、複眼的に浮かびあがらせることができればと期待している。
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Research Products
(4 results)