2015 Fiscal Year Annual Research Report
古代テオティワカンの王族解明へ:「石柱広場」発掘調査
Project/Area Number |
25257016
|
Research Institution | Aichi Prefectural University |
Principal Investigator |
杉山 三郎 愛知県立大学, 国際文化研究科, 特任教授 (40315867)
|
Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
佐藤 悦夫 富山国際大学, 現代社会学部, 教授 (40235320)
|
Project Period (FY) |
2013-04-01 – 2017-03-31
|
Keywords | メソアメリカ / テオティワカン / 古代国家 / 計画都市 / 新大陸考古学 |
Outline of Annual Research Achievements |
メキシコ、古代都市テオティワカンの政治組織や為政者集団の実態をつかむため、都市の心臓部に位置する「石柱の広場」建築複合体の総合発掘調査を実施した。本研究の対象とする「石柱の広場」は、為政者集団の住居(宮殿)や行政・儀礼などの政務建造物の大複合施設の可能性が高く、また全く未発掘であり、その機能と歴史を探求する総合調査を開始した。都市の中心軸である「死者の大通り」に面した関連施設を含め、およそ南北200メートル/東西300メートルの巨大な建築複合体であり、本研究は今後も発展する予定の長期国際プロジェクトの第一期として実施した。 まず古代都市全体とその周辺地域を含む120平方キロメートルの正確な三次元地図作りを実施した。実績あるヒューストン大学の研究機関NCALMと共に現地調査を展開して、完了したLiDARマップの一次資料を2015年に入手できた。世界で初めての古代テオティワカンの3次元地形図・古代都市建築図となるべく、現在その解析作業を始めている。 また本研究による出土品は、特に都市形成の初期の社会・政治構成を解釈するために分析が行われている。同時に以前本研究代表者がテオティワカンで過去35年間実施してきたモニュメント調査の資料と比較研究として、膨大なデータ入力を同時に行っている。本研究の遺物・資料は、C14測定や磁気測定による年代の確定、また住民の行動を推測する資料として床面の化学分析なども行っている。 研究代表者(杉山)は、テオティワカンの先行調査に加え、本「石柱の広場」調査を開始し、これらによりメキシコ古代史解明への貢献度を高く評価され、本年度(2016年)にハーバード大学(モーゼ古文書館、ピーボディ―博物館)からH.B. ニコルソン・メソアメリカ研究優秀賞を受賞した。今後も本研究は、さらに長期の国際プロジェクトとして発展させる計画である。
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本研究の初年度から総合調査の準備そして現地での予備調査を、メキシコ政府人類学歴史学研究所との共同プロジェクトとして実施してきた。さらに昨年度からアメリカ政府基金(NSF)、ハーバード大学研究基金、そしてメキシコ政府研究基金の援助を受け、本格的に愛知県立大学がリーダー研究機関となり、アメリカの諸大学、そしてメキシコ政府研究所と共に国際共同プロジェクトを結成して、「石柱の広場」総合発掘調査を行った。昨年度は夏~秋にかけ集中的に発掘を行い、一年間を通して遺物の整理・分析作業を継続してきた。昨年度は、メキシコ国立自治大学人類学研究所のルイス・バルバ教授による地上探査を集中発掘の事前に行い、その成果を発掘計画へ有効に生かすことができた。 本発掘では2015年度に3ヶ月間「石柱の広場」調査を5班に分けてピット・トレンチ発掘、さらに一部区域を平面発掘し、その継続・発展した発掘を2016年度夏に行う予定である。本年度からはボストン大学もNSF基金により加わって、さらに多彩な総合調査を実施する計画である。現地ではアリゾナ州立大学のテオティワカン研究センターを基地として、研究者・調査員学生らが在住し発掘、また遺物の整理/分析、データ入力や様々な解析の作業を行っている。「石柱の広場」で大量に出土した土器・黒曜石遺物に関しては、収蔵し分析するための倉庫を新しくハーバード大学の研究基金でテオティワカン遺跡公園内に建築した。今後の長期化する研究を見据えたインフラストラクチャーの整備であり、今後も研究設備の充実を図り、土器・黒曜石・石彫に特化した常設の研究センターとする計画である。 愛知県立大学では、持ち帰ったデータの解析作業、さらに日本語での報告書作成、論文の出版準備を行う予定である。他大学の共同研究者らと2015年までの詳細な調査報告書(344ページ)を作成し、メキシコ政府の考古学審議会に提出した。
|
Strategy for Future Research Activity |
本研究の多大な成果と評価を受け、以下の4項目に沿って研究を継続・発展させる計画である。①古代都市発祥に関わる本「石柱の広場」発掘調査を、今後も国際プロジェクトとして継続させる予定である。まず愛知県立大学をリーダー研究機関として研究を継続するための科研申請を考えている。さらに本研究と補完的なアメリカ政府基金(NSF;2018年まで内定、その後追加申請の予定)を受けてアリゾナ州立大学、ジョージ・メイソン大学、ボストン大学、さらに自らの研究費援助(少なくても2019年まで確定)を受けたハーバード大学との国際プロジェクトとして発掘調査を広域にわたり調査する計画である。 ②本研究、そして上記の将来的なテオティワカン考古学研究を基盤として、さらに広範囲の比較研究を始めている。まず本研究代表者は、メソアメリカ古代都市発祥を共通テーマとした国際研究グループのメンバーであり、今後新大陸の古代都市形成の比較研究として発展させる計画である。さらに、認知科学、DNA、細菌研究、生態学、天文学の専門家を含め、新学術領域における古代文明の比較研究を準備している。 ③本研究の学術成果をアメリカの考古学協会で発表、さらに英語、スペイン語、日本語で論文や報告書、また関連編集本を出版する予定である。2017年のアメリカ考古学総会では、プロジェクトメンバーによるセッションを組み学会発表する計画である。メキシコ国立考古学審議会には毎年詳細な発掘報告書を提出しており、それらを基盤に報告書をまずスペイン語で出版するつもりである。 ④本研究や、テオティワカンのモニュメントに関する研究代表者(杉山)の先行研究の成果をデータベース化し、サーバから世界に発信する仕組みを他研究費により構築する予定である。さらに一般向けの「石柱の広場」調査団のホームページも開く計画で、日本語ページは愛知県立大学の多文化共生研究所から出版する予定である。
|