2013 Fiscal Year Annual Research Report
文字列集合からの逐次データ同化によるインフルエンザウイルスの抗原変異予測
Project/Area Number |
25280080
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Research Category |
Grant-in-Aid for Scientific Research (B)
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Research Institution | Hokkaido University |
Principal Investigator |
伊藤 公人 北海道大学, 人獣共通感染症リサーチセンター, 准教授 (60396314)
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Project Period (FY) |
2013-04-01 – 2016-03-31
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Keywords | インフルエンザ / ワクチン / データ同化 / 変異予測 / 粒子フィルタ |
Research Abstract |
本研究では、インフルエンザに対するワクチン株を先回りして準備するために、人の集団免疫と感染およびウイルスの遺伝子変異の過程の状態空間モデルを構築し、文字列の集合に対する逐次データ同化により、ウイルス遺伝子配列の実データから、近い将来におこるウイルス遺伝子上の変異を予測する手法を開発し、さらに、実際に観測される変異と予測結果を照合して、予測の精度および状態空間モデルを評価することを目的とする。 (1) 理論生物学分野のQuasi-species 理論と、数理疫学分野の感染症流行モデルを融合し、これらを統一的に扱う新規モデルを構築した。 (2) 非線形状態空間モデルに基づき、感染・免疫・変異の大規模並列シミュレーションシステムを実装した。 (3) 粒子フィルタのフィルタステップにより、実際に観測されるウイルスの遺伝子配列から現在の集団免疫の状態を推定する手法を考案した。状態空間の尤度を、予測されるアミノ酸配列の分布Vt と観測される配列の分布V’t のKullbak-Leibler 距離を用いて表すことに決定した。 (4) 粒子フィルタの一期先予測ステップにより、次の変異と感染・免疫状態、すなわち、次の流行規模を予測するシュミレーションをPCクラスタ上で行い、64GB程度のメモリ容量でシミュレーションが効率よく実行できることを確認した。 (5) 数理モデル、シミュレータ、粒子フィルタにより、将来の遺伝子配列の候補を計算し、数理モデルで予測した結果を過去に起こった変異と比較した結果、パラメータの事前分布の選択が重要であり、また、安定した予測結果を得る為には数理モデルを修正する必要があることが判明した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本研究課題は、研究期間内に、1) ウイルスの遺伝子変異および感染・免疫の状態空間モデル、2) 感染・免疫・変異の大規模並列モンテカルロシミュレーションシステムの実装、3) ウイルスのアミノ酸配列の観測データから人の集団の感染・免疫状態を予測する方法、4) ウイルスのアミノ酸配列の観測データから次の変異と流行規模を予測する方法、5) 実際に観測される変異と予測結果の照合による予測精度および状態空間モデルの評価について研究することを目的とする。上記1)~5)に挙げたうち、モデル構築、シミュレーションシステム構築、データ同化法の確立、予測結果の評価は順調に進んでいる。
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Strategy for Future Research Activity |
文字列の集合に対する逐次データ同化により、ウイルス遺伝子配列の実データから、近い将来におこるウイルス遺伝子上の変異を予測する。安定した予測結果を得る為に、平成25年度に用いた数理モデルの性質を解析し、感染・免疫・変異を表す数理モデルを修正する。また、実際に観測される変異と予測結果を照合して、予測の精度および状態空間モデルの評価を継続する。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
平成25年度に予定していた国際発表を平成26年度に変更した為、次年度に使用する。 平成26年度の国際会議発表の旅費に充てる。
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Research Products
(11 results)