2014 Fiscal Year Annual Research Report
大学の研究・教育の診断を目的とする多次元アセスメント手法の開発
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25280121
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Research Institution | National Institute of Informatics |
Principal Investigator |
孫 媛 国立情報学研究所, 情報社会相関研究系, 准教授 (00249939)
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Project Period (FY) |
2013-04-01 – 2016-03-31
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Keywords | 評価研究 / ビブリオメトリックス / 教育評価 / 評価指標 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究は,大学の研究活動と教育活動を多面的に捉え,大学の特徴を多次元で評価・診断する方法の開発を目標としている。平成26年度は主として大学の教育力の評価について検討した。まず,大学ポートレート準備委員会より提供された国公立大学の学校基本調査のデータ(平成24年度版)など,教育のインプットを表す種々のデータを収集し,主成分分析により教育のインプット指標の作成を試みた。その結果,教員数や蔵書数から成る知識資源を表す指標と土地面積や設備費から成る物的資源を表す指標が見出された。これらの指標に基づいて分析したところ,知識資源への投資が多い大学は,物的資源への投資が少なくなる傾向が示された。一方,教育成果(アウトカム)として,大学間で比較可能である就職率を採用し,教育インプット指標のアウトカムへの影響をロジスティック回帰分析により検討した。その結果,インプット指標値の変化はアウトカムの変動にほとんど影響しないことが示された。つぎに,ミッションが明確な医学部に対象を限定し,医師国家試験合格率を教育成果(アウトカム)として,教育に関する変数を学習環境と教育プログラム実施状況に分けて検討を重ねた。このほかに,認知診断モデルを大学の教育力の診断的評価に応用することを視野に入れて,Q-matrixの自動学習方法の研究を行い,従来の方法と比べ格段に効率のよい推定アルゴリズムを提案した。 大学の研究面については,昨年度に引き続き,科研費データを用いた科研費分野分類とWeb of Scienceの分野分類のマッピング手法の検討,プレスリリース・新聞記事における大学研究の報道からみた各大学の研究の特徴分析や,研究成果の発信・社会還元の手段として近年注目を集めている学術機関リポジトリへの大学の登録状況と分野特徴の調査・分析等を行い,結果を論文や国際国内学会等にて発表した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
大学の教育力を研究しようとするとき,さまざまな困難が生じる。教育の成果をどう把握すればよいのかという本質的な問題があり,成果の指標としてGPAや履修状況に注目しようとすればデータの利用可能性の点で大きな制約がある。こうした中,研究代表者らは,平成26年度にはマクロな視点からの大学評価に重点を置き,インターネットや各種刊行物を広く渉猟し,日本の大学を多元的に評価する際に利用可能と考えられるデータを特定し,それらのデータをもとに教育成果と関連する変数を指標化し,それらの指標と教育成果の関係を分析するなど,着実に研究を積み重ねた。学術論文や国際学会・国内学会での発表,国立情報学研究所のオープンハウス等を通じて,研究成果の発信も積極的に行った。
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Strategy for Future Research Activity |
平成26年度の結果を踏まえ,平成27年度は,IR(インスティトゥーショナルリサーチ)を推進しているいくつかの大学と個別に連携し,主としてミクロな視点からの教育評価手法について研究する。また,学習・教育に関する個人データをどう整備・分析すれば教育改善に活用しやすいのか,大学の実務者とディスカッションを行いながら検討し,効果的なモデルを提案する。研究面についても引き続き研究を進め,最終的に大学の研究活動と教育活動の両面についての研究成果を総合し,複数の次元から大学を診断・評価し大学自身のために役立つアセスメント手法を提案する。
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Causes of Carryover |
発表する国際関連学会の大会が日本で行われたため旅費の支出を大幅に抑えられたことと,平成27年度が最終年度のため人件費以外にも多く支出されることを見込み,平成26年度のデータ購入などの使用額を抑え,全体の限られた予算を最大限に活用するため。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
人件費,分析を行うためのデータの入手,論文などの文献資料の入手,調査や学会発表の旅費などに用いる。
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Research Products
(17 results)