2013 Fiscal Year Annual Research Report
低線量・低線量率放射線発がん高感受性モデルマウスの開発と発がんリスク評価
Project/Area Number |
25281020
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Research Category |
Grant-in-Aid for Scientific Research (B)
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Research Institution | Hiroshima University |
Principal Investigator |
神谷 研二 広島大学, 原爆放射線医科学研究所, 教授 (60116564)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
笹谷 めぐみ (豊島 めぐみ) 広島大学, 原爆放射線医科学研究所, 助教 (80423052)
飯塚 大輔 広島大学, 原爆放射線医科学研究所, 助教 (00455388)
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Project Period (FY) |
2013-04-01 – 2016-03-31
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Keywords | ゲノム障害 / ゲノム修復 / 放射線 / 発がん / 小腸腫瘍 / 突然変異 / 線量率効果 / 低線量(率) |
Research Abstract |
現代社会では、医療、産業等での放射線利用が激増し、低線量放射線の健康影響問題は人類共通の課題である。さらに、東京電力福島第一原子力発電所事故(福島原発事故)では、低線量・低線量率放射線被ばくにおける科学的なリスク評価が緊急の課題となっている。本研究では、ヒト家族性大腸腺腫症のモデルマウス(Minマウス)が、放射線により高感度に小腸腫瘍が誘発され、誘発腫瘍にはゲノム欠失が同定できることを利用して、低線量・低線量率放射線による発がんモデルを開発する。同時に、低線量率発がんにおける線量効果関係を解明し、ゲノム欠失を誘発する線量効果関係と「しきい値」の有無を同定する。 初年度である今年度は、バックグランドの違う2種類のMinマウスを準備した。同週齢のMinマウスに異なる線量率の放射線照射を行い、発がん実験を行った。Minマウスでは、小腸、大腸腫瘍の進行に伴い、出血による貧血、脾臓の肥大がみられる。そのため、屠殺時には、小腸、大腸腫瘍の個数、大きさだけでなく、脾臓重量の測定、末梢血の採血を行った。その後、末梢血中のヘモグロビン値を測定した。また、採取した小腸、大腸は、固定後、それぞれ、アルカリフォスファターゼ染色、アルシアンブルー染色を行い、腫瘍の数を計測した。 その結果、脾臓重量の増加、血中ヘモグロビン値の低下が観察されたマウスでは、腫瘍の数が多い傾向がみられた。また、今回用いた線量率においては、2種類の系統により、その線量率効果が異なる結果が得られた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
実験を開始する前に、目的の線量率での照射実験を行うための線量評価を行った。線量評価を行うにあたって、動物飼育ラック、動物飼育ケージを用いた条件下で、正確な線量評価を行うために、当初予定していたよりも多くの時間を費やした。だが、実験に必要なマウスの準備を予定よりも早めに準備をすることができたため、その後の発がん実験は順調に進み、本研究はおおむね順調に進展しているといえる。
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Strategy for Future Research Activity |
ヒト家族性大腸腺腫症のモデルであるMinマウスは、片側の染色体にApc癌抑制遺伝子変異(Min)を有し、小腸腫瘍を多発する。この際、自然発症がんの多くは、正常Apc遺伝子が座位する染色体(1本)の欠損と、ApcMinアレルの増幅が観察される。一方、高線量率放射線照射によって誘発された小腸腫瘍では、正常Apc遺伝子領域の部分欠失が特徴的に検出されると報告されている。すなわち、Minマウスを用いることにより、高線量率放射線誘発がんにおける遺伝子変異パターンを高感度に検出することができる。昨年度は、このMinマウスを用いて発がん実験を行い、線量率効果について検討を行った。今年度は、その腫瘍組織試料からDNAもしくはRNAを抽出し、分子生物学的手法を用いることにより、 ApcMin/+遺伝子座における遺伝子変異パターンを検出することを試みる。具体的には、定量的PCR解析、LOH解析、シークエンス解析を行うことにより、図1に示すように、対側アリルの変異が、自然発症型、高線量率放射線誘発型なのか、あるいは、新たな変異なのかを同定する。 さらには、一連のDNA損傷応答関連遺伝子欠損マウスとMinマウスを交配した放射線高感受性マウスを開発し、低線量率放射線発がんにおける放射線の爪痕、さらには低線量率放射線発がんにおける損傷応答機構の関与を解明する。最終的には、発がん高感受性マウスを用いて、低線量・低線量率放射線発がんのリスク評価を行う。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
今年度の発がん実験から得られた腫瘍を用いた遺伝子変異パターンを検出するための予備的検討を行った。この検討において、予定していた計画よりもスムーズに検討を行うことができたため、当該助成金が生じた。 今年度出た余剰金については、来年度の研究計画の中で予定した腫瘍解析数を増やすことにより、詳細な実験解析を行う予定である。
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Research Products
(18 results)