2014 Fiscal Year Annual Research Report
廃棄物由来レアメタル等金属類の土壌圏への拡散機構と微生物生態系影響の解明
Project/Area Number |
25281034
|
Research Institution | Azabu University |
Principal Investigator |
稲葉 一穂 麻布大学, その他部局等, 教授 (60176401)
|
Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
永野 匡昭 国立水俣病総合研究センター, その他部局等, 研究員 (10393464)
村田 智吉 独立行政法人国立環境研究所, その他部局等, 研究員 (50332242)
山村 茂樹 独立行政法人国立環境研究所, その他部局等, 研究員 (90414391)
|
Project Period (FY) |
2013-04-01 – 2017-03-31
|
Keywords | 土壌汚染 / 廃棄家電製品 / レアメタル / 溶出量 / 微生物多様性 |
Outline of Annual Research Achievements |
本年度は、初年度から継続した溶出試験の他に、実環境から採取した土壌試料を用いての土壌微生物培養試験を行い、廃棄家電部品由来の金属元素による微生物群集構造への影響を検討した。 森林および畑地から採取した土壌に、一定量のプリント基板粉砕物または鉛ペレットを混和し、最大容水量の60%となる蒸留水を添加して暗所25℃で2ヶ月間インキュベーションした。インキュベーション後にプリント基板または鉛ペレットを篩分けし、土壌中の金属濃度を蒸留水および1M塩酸で抽出測定した。さらに、サンプルからFastDNA SPIN kitによりDNAを抽出し、16S rDNA遺伝子の一部を対象としてPCRを行い、塩基配列の決定と系統解析を行った。 森林土壌では、基板添加系でPb、Cu、Zn、Niの溶出が確認でき、特にPbとCuが高濃度に溶出していた。鉛ペレット添加系では、基板添加系の10倍程度のPbの溶出が確認できた。溶出した金属元素はほとんどが塩酸抽出画分に含まれていた。畑地土壌では、基板添加系および鉛ペレット添加系のいずれでもPb濃度の上昇が確認できたが、森林土壌よりも変化は小さかった。 森林土壌の各サンプルから抽出したDNAによる16S rDNAのクローン解析では、コントロール系と基板添加系では門レベルの群集構造に大きな差は見られなかった。一方、鉛ペレット添加系では、Acidobacteria門の割合が増加していた。畑地土壌では、細菌の群集構造には大きな変化は見られなかった。 以上の結果より、廃棄電子機器が森林に投棄された場合、鉛等による土壌汚染が生じる可能性があること、鉛の拡散により、微生物生態系の一部が変遷する可能性があることが分かった。
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
廃棄家電部品に含まれる金属元素の総量測定、部品からの溶出量測定という化学的な検討と、土壌中に溶出した金属元素による土壌微生物生態系への影響という微生物学的な検討が、バランス良く進行していると考えている。
|
Strategy for Future Research Activity |
当初計画に沿って、実験室および実環境中での溶出試験を推進すると共に、土壌中に拡散した金属元素による生態系への影響評価を継続する。 さらに新たなサブ課題として、地下水を飲料水源としている住民や、周辺の農地、森林などへの影響を軽減する方策として、土壌・地下水圏に拡散したヒ素や鉛、亜鉛などの有害元素類を回収する方法についても予備的な検討を開始する。
|
Causes of Carryover |
平成26年4月に代表者が国立環境研究所から麻布大学へと異動があり、新たな研究環境の準備に時間を要したため、当初の予定額を使用できなかったものである。
|
Expenditure Plan for Carryover Budget |
平成27年度については、代表者は新たな研究環境で課題遂行を行う他、麻布大学での新たな共同研究の開始により、溶出重金属の回収法の研究にも着手する予定である。この研究に平成26年度の余剰金を使用する予定である。
|
Research Products
(1 results)