2014 Fiscal Year Annual Research Report
活性化雲母鉱物を用いた新たな放射性物質吸着材の研究開発
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25281041
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Research Institution | Fukuoka Institute of Health and Environmental Sciences |
Principal Investigator |
楢崎 幸範 福岡県保健環境研究所, その他部局等, 研究員 (00446866)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
和田 信一郎 九州大学, (連合)農学研究科(研究院), 教授 (60108678)
鳥羽 峰樹 福岡県保健環境研究所, その他部局等, 研究員 (60523438)
百島 則幸 九州大学, 学内共同利用施設等, 教授 (80128107)
天野 光 公益財団法人日本分析センター, その他部局等, 研究員 (80354851)
田上 四郎 福岡県保健環境研究所, その他部局等, 研究員 (80446856)
大石 興弘 福岡県保健環境研究所, その他部局等, 研究員 (90446857)
平川 周作 福岡県保健環境研究所, その他部局等, 研究員 (90527623)
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Project Period (FY) |
2013-04-01 – 2016-03-31
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Keywords | 放射能 / 放射性セシウム / 吸着材 / 原子力防災 / 復興支援 |
Outline of Annual Research Achievements |
活性化雲母鉱物AM2の量産化と造粒化を実施した。雲母鉱物を用いた形態が異なる2種類のAM2(粉末状AM2, フレーク状AM2 )の開発・改良を行い、ラボスケールでの合成法から工業生産ベースへと移行した。さらに粉末状AM2を母材に用いた円柱状吸着材及び顆粒状吸着材を製造した。これらはAM2 100%の造粒品及びAM2とA型ゼオライト(1:1)のハイブリッド造粒品である。 粉末状及びフレーク状AM2は活性化の段階で層間内K+ が最大で93%除去された。粉末X線回折の結果から、雲母の層間は10Åから12Å及び14Åへ拡張しており、水和したNa+ がK+をほぼ完全に置換していることを示した。 Sr 及びCsのイオン交換等温曲線からAM2の高い選択性と吸着容量を確認した。また、AM2及びハイブリッド吸着材の飽和吸着曲線から飽和吸着能を求めた。 粉末状AM2におけるSrの吸着当量は1.4meq/g、理論的陽イオン交換容量の55%であった。Csの吸着当量は0.90 meq/g これは35%の理論的陽イオン交換容量に相当した。 顆粒状のハイブリッド吸着材ではCsの飽和吸着量160mg/g、吸着当量は1.2meq/gであった。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
AM2の量産化と造粒化が可能となった。製造した円柱状吸着材及び顆粒状吸着材の崩壊度と硬度を計測し、汚染水処理装置への適用性とSr及びCsに対する高い吸着能並びに機能性を確認した。陽イオン交換等温式を求め有効性試験と吸着能の評価をもとに吸着泥の量を見積もり、実際の汚染水や海水等への利用と実用性を明らかにした。 新しいAM2合成法としてワンパスカラム方式による低コストな大量製造法を確立し、現在特許出願中である。
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Strategy for Future Research Activity |
①Sr及びCsの破過曲線を求め、浄化率や透水吸着性能をはじめ、安定して高い浄化能を維持するために必要な吸着材の量とAM2の寿命を予測する。また、最適な流速、圧力損失、温度、水素イオン濃度から、原水や海水等の多様な実環境溶液相での特性に対する実用性と最適化を検討する。 ② AM2のSr及びCs吸着メカニズム並びに吸着構造の様相と吸着量の変化を23Na MQMAS NMR、高分解能電子顕微鏡を用いて原子レベルで明らかにする。また、層間の広がり間隔を粉末X線解析装置で測定し、層間への進入と吸着態様を調べる。 ③アクリル基盤の上にAM2のゲルを塗布し、メンブランフィルターで覆ったAM2ディスクを作成して土壌中に埋設する。一定時間後に取り出し放射能を測定するこの方法では、土壌間隙水を拡散して吸着材まで到達したセシウム量が測定できる。その量は土壌中でのセシウム移行率として利用でき、土壌汚染メカニズムの研究やディスクの面積等の幾何学的なパラメータから土壌中でのセシウムの移動速度を計算する。 ④土壌や汚泥を保管する仮置き場あるいは中間貯蔵施設や汚染された廃棄物を焼却処分する際に生じる焼却残渣(焼却主灰、焼却飛灰)から放射性セシウムの拡散、溶出や移行抑制のための固定化材としてAM2を混合して埋設する保管技術を開発する。
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Causes of Carryover |
平成26年度に未使用額が生じたのはAM2の開発コストが軽減できたことに負う。AM2の合成に必要なKのインターカレーション反応に使用するテトラフェニルホウ酸ナトリウム製剤は非常に高価な試薬である。この試薬を同仁化学(株)製のカリボール(@29,520円/100g)から北興化学工業(株)製ホクボロン(@8,000円/100g)に変更した。そのうえ、合成で生じる副生成物のテトラフェニルホウ酸カリウムを処理してテトラフェニルホウ酸ナトリウムに再生して再利用できたことが大きな経費削減に繋がった。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
次年度はラボスケールのAM2合成から本格的な工業生産ベースに移行する。また、粉末状AM2を円柱状や顆粒状に形態を多様化する計画である。さらに、実証・実機試験に備えて顆粒状AM2の大量生産化も望まれており、生産量の増加が見込まれる。ホクボロンをはじめとする試薬の使用量の増加並びに顆粒化に伴い造粒費用も倍増する見込みであり、その費用に使用する。 また、AM2の応用技術開発を開始する。AM2の固定化技術やAM2ディスクの実証試験は福島県内を予定しており、試験を実施するに当たり、新たに発生する費用のために充当する。
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Research Products
(4 results)