2014 Fiscal Year Annual Research Report
日本、中国における聖山を象るカミ迎えの祭礼装置にみるアジアンデザインの構造比較
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25282009
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Research Institution | Kobe Design University |
Principal Investigator |
杉浦 康平 神戸芸術工科大学, アジアンデザイン研究所, 所長 (00226432)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
さくま はな 神戸芸術工科大学, 先端芸術学部, 助教 (00589202)
山之内 誠 神戸芸術工科大学, デザイン学部, 准教授 (40330493)
今村 文彦 神戸芸術工科大学, デザイン学部, 教授 (50213244)
黄 國賓 神戸芸術工科大学, デザイン学部, 准教授 (50441382)
曽和 英子 神戸芸術工科大学, アジアンデザイン研究所, 客員研究員 (80537134)
齊木 崇人 神戸芸術工科大学, 芸術工学研究科(研究院), 教授 (90195967)
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Project Period (FY) |
2013-04-01 – 2016-03-31
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Keywords | 国際研究者交流 / 国際情報交換 / タイ / シンガポール / 葬儀車 / 須弥山 / 龍 / 象と馬の複合獣 |
Outline of Annual Research Achievements |
26年度の研究は、東アジアにおける日本、中国山車の位置づけを明らかにするために、タイにおける死者の霊を天界に運ぶ山車、霊船を調査の対象を取り上げ、その造形と関わるタイの寺院の空間構成原理(古代インドの宇宙観において世界の中心にそびえ立つ宇宙山(須弥山))などの調査を行った。また、シンガポールにおける国際シンポジウム「Cosmic Serpent in Asia,a symposium on the meaning ofsymbols as visual language」に参加し、さらに調査資料、参考文献などをテーマごとに分類、記録、データベース化し、検索システムの構築を進めている。
8月には東北タイに伝わる独特な遷化の儀礼、高僧が亡くなった時に曳く山車の資料を調査した。調査には、ソーン・シマトラン氏、Mareeya Dumrongpho氏の指導と協力と得た。またLanner Tha(タイ東北部)の「山車作り」の造形調査について、山車製作者のWat Ko-Klang僧侶からの情報を得た。タイ僧侶の葬儀の山車の装飾や参列の規模は、身分や階級によって違ってくる。高僧の葬儀への参列は、巡礼を1回行ったことと同じ意味を持つため、多数の人々が見送りに参加する…「タイの人々は、どのようにして次の世界へ旅立つのか。死へのプロセス、その演出には極めて重要な死生観が反映している。葬儀の演出法や意味するものを、次年度のアジア各地の山車との比較テーマとして取りあげてみたい」…と考えている。
4月のシンガポールにおける国際シンポジウムは、中国の伝説神話における「伏羲(龍)」と「女か(竜)」をめぐる葫蘆(壺)、太極(陰陽)、崑崙山(宇宙山)に焦点をあて、「聖なる山」の概念や「山と龍との関係」の探求が、今後のアジアの山車を比較研究する際に、重要な研究分野となることを提示した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
1: Research has progressed more than it was originally planned.
Reason
当初、26年度の研究計画においては、中国の前童鎮における18の氏族がそれぞれ精緻な造形をもつ山車(鼓亭、抬閣)の調査を行い、各氏族の運営組織を分析し、各氏族の山車形態の選定要因や象徴する意味を比較。また、現地での実測された各集落の山車のデータをもとに、それぞれの山車の構造、形態、分布をとらえ、江南地方の各地域の山車の構成原理を明らかにするという計画内容であったが、過去の蓄積した現場調査資料によって明らかにされたのは前童鎮における18の氏族の山車構造、形態だけではなく、東北タイに伝わる高僧が亡くなった時に曳く山車の構造原理とタイ寺院の空間配置関係、及び須弥山との関係についても明らかにした。
さらに、シンガポールにおける国際シンポジウムの参加することにより、今後のアジアの山車を比較研究する際に、「聖山と聖獣(龍・蛇)」への探求が、重要な研究分野となることを提示した。その報告はすでに2014年度神戸芸術工科大学アジアンデザイン研究所の報告書に掲載し、今後のアジアの山車の研究方向を提案したい。
また、これまで蓄積してきた研究資料も系統的に分類、帰納作業も行い、共同研究メンバーの情報共有を図っている。今年度の達成度は当初の計画以上に進展している。
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Strategy for Future Research Activity |
27年度は最終年度として研究のまとめを行いながらタイ、ミャンマ、バリ島、日本の山車をアジアの山車と比較研究を行う。
申請者らはすでに予備的な研究結果を得ている『黄金の鳥を象るミャンマーの「カラウェー船」…仏像を戴き湖上を巡る』『慈雨を招く龍の舟山車「ルア・プラ・ナーン」…タイのチャクプラ祭』『多頭の龍が乱舞する…スラタニのチャクプラ祭』『多頭の龍が乱舞する…スラタニのチャクプラ祭』『巨大な翼が王の魂を天界に運ぶ「バデ」…バリ島の葬儀塔』『意匠としての舟・船…日本(信濃)のオフネ(舟山車)について』『龍の船・鳥の船…此岸と彼岸を結ぶ中国・日本の舟山車』などのアジア山車の資料をベースに、アジア諸国の山車文化の同異性を探る。
本研究は単に「アジアの山車」の比較研究だけでなく、柱立て、神輿、傘蓋、玉座といった神迎えの装置や祭礼の時空間構造を重層させた多角的な視野をもち、地域研究、宗教学、民族学、人類学、デザイン学などの複合的な領域におよぶ研究となる。年度末には三年間の研究集大成として、出版物を刊行する予定である。
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Causes of Carryover |
当初、26年度の研究計画においては、中国の前童鎮における18の氏族がそれぞれ精緻な造形をもつ山車(鼓亭、抬閣)の調査を行い、各氏族の運営組織を分析し、各氏族の山車形態の選定要因や象徴する意味を比較。また、現地での実測された各集落の山車のデータをもとに、それぞれの山車の構造、形態、分布をとらえ、江南地方の各地域の山車の構成原理を明らかにする二回、中国前童鎮のフィールドワーク調査を計画していたが、前童鎮に関する調査は現地でのフィールドワーク調査ではなく、これまで蓄積してきた資料に基づいて、山車の形態、装飾などを作表を起こすという研究方法に変更した。そのため、現地調査の対象地をタイに変えた。海外調査のメンバーは最小限だったため、旅費の予算が本来の計画より少なかった。また、当初の計画に必要な人件費、謝金、その他などの予算も、本来の計画の予算より、大分おさえられたためである。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
H27年度はシンガポール(バリ島の葬儀車研究者)やタイ(葬儀車研究者)を招き、研究会を開催する予定。両地の葬儀山車の構成原理を読み解いていく。年度末までにはこれまでの三年間の研究成果を出版物の形態でまとめ、社会に還元する。特に当初の研究計画に入っていなかった海外研究者の招請に伴う旅費、謝礼、出版物の印刷作業に伴う編集費、印刷費などは大幅に増えてくると予測している。H27年度はH26年度の使用額と合わせながら、研究会、データベースを構築、出版、学会での研究成果発表などの計画で研究を進めていく。
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Research Products
(6 results)