2013 Fiscal Year Annual Research Report
Pickering安定化機構に基づいた農産物微粒子化素材の調理加工分野への新展開
Project/Area Number |
25282018
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Research Category |
Grant-in-Aid for Scientific Research (B)
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Research Institution | Kyoto University |
Principal Investigator |
松村 康生 京都大学, (連合)農学研究科(研究院), 教授 (50181756)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
香西 みどり お茶の水女子大学, その他部局等, 教授 (10262354)
松宮 健太郎 京都大学, (連合)農学研究科(研究院), 助教 (60553013)
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Project Period (FY) |
2013-04-01 – 2016-03-31
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Keywords | 微粒子化素材 / 調理と加工 / Pickering安定化 / 乳化 / 気泡 |
Research Abstract |
粉砕化技術の進歩により、様々な食品素材についても直径100μm以下の微粒子を調製することが可能となったが、そのような微粒子を食品に応用するための基礎的な研究はほとんど行われていない。本研究では、「Pickering安定化」技術(界面に固体粒子を吸着させ、その界面を物理的に安定化させる技術)の適用により、微粒子の食品分野への利用が拡大できるか、基礎的な検討を行うことを目的とする。 平成25年度は、様々な農産物、たとえば大豆、米、サツマイモ、ゴボウ、干し椎茸、トマト、ショウガ、ワカメ等を、スギノマシン社の協力を得て乾式微粒子化装置により、直径数十μmから数百μmの微粒子に粉砕した。それら微粒子について、粒度分布や見かけの密度を測定するとともに、起泡性、乳化性を調べた。その結果、見かけの密度と起泡性の間に相関が認められた。また、食物繊維が多い材料ほど、起泡しやすいうという傾向が認められた。乳化性については、油の濃度などにより結果は異なるものの、一般的な傾向として、大豆や干し椎茸の微粒子が、高い乳化性を示すことを明らかにした。 湿式微粒子化装置スターバーストシステムを購入し、上記の微粒子をさらに細かくすることができるのか検討した。その結果、比較的固い組織をもつ米、大豆等について、さらなる微粒子化が可能であったが、野菜や根菜類については、見かけ上、さらに細かくすることは困難であった。しかし、顕微鏡で組織を観察したところ、スターバーストで処理する前には、粒子状の構造を示していたものが、繊維状の構造体に変化していた。スターバースト処理により組織が破壊され、ナノファイバーへと変化したものと考えられる。 今後、微粒子化素材について、気液界面や油水界面における界面張力低下能や界面粘弾性を検討するなど基礎的な検討を続けるとともに、他の食品形態への応用の可能性を探る予定である。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
平成25年度は初年度にあたっており、様々な食品素材から、微粒子を調製できる最適な条件を見出すことが主な目的であったが、それについては、ほぼ課題をクリアーすることができた。また、調製した粒子の粒度分布やゼータ電位測定などのコロイド科学的特性を検討するとともに、起泡性や乳化性などについても検討することができた。来年度からの、さらに基礎的、応用的な検討に向けて、前提となるデータはほぼ収集できたと考えている。 実際に測定データが得られたのは年度後半であったので、昨年度中に学会等で発表することはできなかった。早急にデータをとりまとめて発表する予定である。
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Strategy for Future Research Activity |
平成25年度で確立した条件で、様々な農産物素材から微粒子を調製し、さらなる検討を進める。具体的には、微粒子の起泡性と乳化性については、水に微粒子を分散した状態での検討が主であったが、今後は、実際の加工や調理の工程を考慮して、塩類や砂糖、酢などの添加、加熱処理などが起泡性・泡沫安定性、乳化性・乳化安定性に与える影響を観察する。また、本研究とは違った手法で微細化された食品素材が販売されているという情報を入手したので、その素材を購入し、微粒子特性や起泡性・乳化性がどのように異なっているのかも検討したい。 スターバーストを用いて、数μmの微粒子の調製を目指す。その場合、本年度、乾式微粒化装置で調製した直径数十μm~数百μmの微粒子のほか、上記の市販の微粒子、さらには生野菜をスタート物質として微細化を試みる。これらの処理によって得られた直径数μmの粒子素材と、数十μmの粒子素材のコロイド科学的特性、起泡性、乳化性、分散性などを比較する。また、粒子分散液の物性(粘度、動的粘弾性等)についても比較検討を行う。 微粒子化素材そのもの、あるいは、それを使用して調製した泡沫、乳化物、分散液などの微細構造を電子顕微鏡や共焦点レーザー顕微鏡を使って観察する。 一部の微粒子化素材については、それらを添加して、実際の食品であるクリーム、メレンゲ、ホイップクリーム、マヨネーズ、スポンジケーキ様のものを調製し、官能検査によって、それら食品の品質を評価する。また、その微細構造について、上記の手法を用いて解析を行う。
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