2014 Fiscal Year Annual Research Report
脳卒中患者の予後予測~拡散テンソル法FA値を用いた数式モデルの構築~
Project/Area Number |
25282168
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Research Institution | Hyogo Medical University |
Principal Investigator |
小山 哲男 兵庫医科大学, 医学部, 特別招聘教授 (40538237)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
道免 和久 兵庫医科大学, 医学部, 教授 (50207685)
内山 侑紀 兵庫医科大学, 医学部, 助教 (50725992)
足立 清香 兵庫医科大学, 医学部, 助教 (70731694) [Withdrawn]
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Project Period (FY) |
2013-04-01 – 2016-03-31
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Keywords | 脳卒中 / 帰結 / 予後 / 予測 / 画像 / 栄養 |
Outline of Annual Research Achievements |
脳卒中は罹患患者が多く、また手足や認知機能に後遺症を残すことが多い、要介護状態の原因疾患の第1位を占める疾患である(平成22年度調査)。罹患患者の機能回復のために、リハビリテーションが行われる。その効果を高めるために、個々の患者ごとに、どの程度の回復が見込まれるかをある程度予測しておくこと、予後予測が必要である。
従来の予後予測の方法は、患者の年齢と急性期治療中の下肢体幹機能等より、発症数か月後の移動能力(歩行、杖歩行、車椅子等)を予測するものが主流である。しかし近年、脳画像診断や栄養管理の手法が発達したため、予後予測にこれらの因子を組み入れることが試みられている。
本研究においては、MRI脳画像による脳内の神経線維の損傷を定量化し、単純な移動能力を超えた日常生活動作や上肢下肢の機能の長期的な予後との関連を検討するものである。また近年、脳卒中による直接の神経障害に加えて、栄養状態とその管理が重要な予後規定因子とされている。しかしこれまで、脳卒中患者の栄養管理に関する基礎的な知見に乏しい。本研究では、脳画像研究と並立して、長期的予後に影響する栄養評価の基本である安静時代謝量等について基礎的な知見を得る。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
平成26年度、脳梗塞患者に関して、MRI拡散テンソル法による脳内神経線維の障害の程度(大脳脚FA値の低下)と、上肢、下肢、日常生活動作自立度の長期的予後に関する研究を行い、論文公表の成果を得た。具体的には、発症前の日常生活動作が自立したテント上病変の初発脳梗塞患者において、病巣側大脳脚FA値と非病巣側大脳脚FA値の比(rFA)と上肢、手指、下肢機能のBrunnstrom Stage評価値、およびFunctional Independence Measure(FIM)による日常生活動作の評価値の関連を求めた。正確な長期的予後の追跡が可能であった症例(16例)において、rFAは上肢機能(相関係数r = 0.687)、手指機能(r = 0.579)、下肢機能(r = 0.623)と統計的に有意(Spearman順位相関検定、p < 0.05)であった一方、FIM値との関連は有意ではなかった(Koyama et al. Journal of Stroke and Cerebrovasucular Diseases 2014)。
また脳梗塞患者においての安静時代謝量(酸素消費量)の実測を行ったところ、従来臨床場面で広く応用されながらも検証を経ていなかったHarris-Benedict式による推定値とよく合致することの知見を得て、論文公表の成果を得た。具体的には、発症前の日常生活動作が自立した脳梗塞患者において、Harris-Benedict式による推定値と酸素消費量の実測値より算出された安静時代謝量の差異の二乗平均平方根(RMS)は99 kcalであり、臨床場面でよく使われている他の推定式(日本人のための簡易式 RMS 217 kcal、Mifflinの式RMS 187 kcal)よりも正確であることの知見を得た(Nagano et al. Journal of Stroke and Cerebrovasucular Diseases 2015)。
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Strategy for Future Research Activity |
MRI拡散テンソル法による脳内神経線維の障害の程度(大脳脚FA値の低下)と、上下肢や日常生活自立度の長期的予後に関する解析で、脳卒中病型による差異が認められた。具体的には、脳梗塞例に比較して、脳出血例ではFA値の低下がより大きく、上下肢や日常生活自立度との相関がより高かった。これら脳出血例と脳梗塞例の差異について、平成27年度に論文公表する予定である。
脳卒中の急性期の安静時代謝量について、予備的な解析により、病型による差異が認められた。具体的には、脳梗塞例では酸素消費量より計算された実測値とHarris-Benedict式推定値が比較的よく合致したのに対して、くも膜下出血例では実測値がHarris-Benedict式推定値を上回る症例が多かった。これら脳梗塞例とくも膜下出血例の安静時代謝量の差異について、平成27年度に論文公表する予定である。
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Causes of Carryover |
予備的な解析により、MRI拡散テンソル脳画像解析の結果も、安静時代謝量の結果も、脳卒中病型による差異が認められた。病型によりMRI拡散テンソル脳画像解析結果が異なることは、これまでにあまり報告されていない。近年、脳卒中の治療は10年以上前のそれらとは大きく異なっている。例えば、脳卒中全般で早期離床が推奨されている。さらに脳梗塞例での血栓溶解療法、くも膜下出血例での血管内手術(コイル塞栓術等)が一般的になっている。しかし急性期脳卒中患者の安静時代謝量について、最近の報告は極めて少ない。予備的解析の結果より、安静時代謝量について病型別に論文報告する方針とした。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
予備的な解析の結果より、脳卒中の病型のうち、脳出血例は急性期の麻痺が比較的重篤である症例であっても、長期的に歩行を含めた日常生活が自立する例が多いことが示されている。脳出血例では、麻痺が重篤なために急性期の臥床期間が長い場合が少なくない。これらの患者について、歩行器等を用いてのより早期よりの離床が予後の改善につながることが考えられる。歩行器や歩行支援装置を導入し、可及的な早期離床と訓練法の可及的な統一を計画している。
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Research Products
(3 results)