2015 Fiscal Year Annual Research Report
健やかな発達を促すエクセルギー・リズム環境-新生児集中治療室からの挑戦
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25282221
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Research Institution | Saitama Medical University |
Principal Investigator |
小柴 満美子 埼玉医科大学, 医学部, 客員准教授 (90415571)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
山内 秀雄 埼玉医科大学, 医学部, 教授 (10250226)
宿谷 昌則 東京都市大学, 環境学部, 教授 (20179021)
國方 徹也 埼玉医科大学, 医学部, 教授 (50195468)
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Project Period (FY) |
2013-04-01 – 2017-03-31
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Keywords | 高感受性期 / 発達障がい / 行動計量 / 環境適応発達 / 光環境 / 音環境 / 温熱環境 / 重力環境 |
Outline of Annual Research Achievements |
ヒトの胎児期から高齢期までの全生涯は、環境に適応する生物機能の連続し累積する記憶情報によって、特徴つけることができる可能性がある。複雑な精神や身体の健康状態の推移は、ある年齢の短期的な過去の経験を反映するだけでなく、幼少期に育まれる基礎因子が遺伝子、タンパク、細胞、組織、器官、個体の形成や機能に影響を与えることを、多くの学術報告が支持する。そこで、本研究では、発達を導くよりよい環境を知るために、環境とヒト、そのモデル動物の生体信号を複数種捉え記録するマルチ・センシング技術の開発、および、その信号の包括的分析に基づき、新たな複雑系の環境適応的発達の可視化と理解を目指している。 平成27年度の主要な達成は、新生児集中治療室に入院するヒト胎児期新生児の生理・行動と周囲環境をホームPCで数か月以上同時計測・記録・分析することができる臨床前線で最重視すべき安全性と機能性が担保されたマルチ・レコーダー・スマートネットワーク1号を試作することができたことである。我々の先行研究により特許を取得している行動と体表温や心理機能が分析できる赤外画像情報分析技術等をベースに、児の感覚器に影響を与える光・音・温熱環境値の同時かつ高精度な計測・分析機能を非接触計測システムとして構築し、1-3か月前臨床試験確認を複数回行った結果、順調な記録・分析が達成された。本安全性確認に基づき、埼玉医科大学・治験委員会による審議を経て承認を得た。 また、同技術のさらなるヒト適用・発展を可能とする前臨床的検証に必須の霊長類モデル動物開発を目指した研究成果としては、前年度の乳幼児心身発達における重力環境依存的な行動発達の重要性を提示した研究成果[Behav Brain Res.2015]に基づく、ヒト原始反射を投影する霊長類・原始反射行動モデルの開発を進め、検証を行った。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
1: Research has progressed more than it was originally planned.
Reason
本研究は、対象とする胎児期新生児の発達において、留意すべき環境因子を探索し、その同定と根拠を導く分析法を見出すことを、主目的のひとつとしている。本研究計画時に焦点と予想していなかった環境因子、「重力」環境について、ヒト新生児研究およびその投影を探索する霊長類モデル研究を進めるうちに、重視すべき要件として浮上した。ヒト新生児研究では、正期産後の神経発達のマイルストーンとみなされている原始反射行動から随意的行動への移り変わりについて、その要素を、胎児期新生児を対象に分析を続ける内に、重力環境において、早期に前者のみならず、後者も複雑系数理モデルを利用することで示唆された可能性を見出し、このことを報告した[Expert Opin Drug Discov. 2016, Neurosci Biobehav Rev. 2016, CNS Neurol Disord Drug Targets. 2016、こども環境学会2015年福島大会・ポスター優秀発表賞受賞]。重力環境は、地球上に生息する全生物にとり、多大な影響を与える一方、意識する機会が少ない因子であるが、胎内で羊水中に発生する胎児にとっては、臍帯からの母体循環血流循環から肺呼吸に変化するガス環境と共に、出生時に劇的な変化を与える因子となる。本来は正期産時まで触れることのなかった重力環境に早期に暴露される胎児期新生児において、特定の齢期に必要な環境との相互作用を要する神経発達基盤があるならば、本来の発生プログラムから逸脱することへの何らかの補償支援プログラムを開発する必要がある。基礎疾患を伴わない早期産児は、わが国では先進国中、高い人口比率を呈し、自閉症スペクトラムなどの発達障がいとの相関性が示唆されていることから、重力環境に留意する環境相互作用の生物基盤を解明する次なる課題が示唆された。
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Strategy for Future Research Activity |
新生児集中治療室に入院する胎児期新生児を対象として、治験承認内容に基づく臨床試験を実施する。前項説明の通り、重力環境を考慮した環境と生体が相互作用する発達の様子を捉えるための、包括的な計測・分析ネットワークシステムを開発すべきことを、次の研究課題として見出されたことから、本研究期間を1年延長し、次課題の研究期間に資する試作技術要素を見出す準備を行う。包括計測・分析システムの試作について、これまで高精度化および新生児集中治療の臨床に則した仕様化を図り、医師、看護師、メディカルエンジニアと試作、および、安全性・機能性の確認を行って来たので、臨床試験を実施することにより、同試作システムの最適化を進める。マルチ・センシングによるビッグ・データに基づき、多様な複雑系解析法の探索を行うことで、本技術の改良すべき方向を提示する。また、この技術のさらなる改良、発展を進めるために、重力環境を考慮した環境と生体が相互作用する発達を、前臨床的に検討を行うことができる、霊長類モデルを開発する。学会および論文発表活動を進め、国内外の評価を受けて、開発要件の提示を行う。
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Causes of Carryover |
新生児集中治療室(NICU)の新生児の健やかな発達を定量再現的に評価する方法、および、同法に基づいて新生児の発達を支援する環境の要素、その基盤について、霊長類モデルによる前臨床評価を深めた結果、有用と思われる多量の情報が得られた。その分析を探索的に進め、論文報告を行うと共に、霊長類における、さらなる発達を追跡する実験および解析と、同前臨床評価を投影するNICU新生児計測系の改良、計測と分析、論文報告を行う必要性が生じた。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
新生児集中治療室に入院する新生児を対象として、治験委員会の承認事項を遵守する臨床研究、および、霊長類コモン・マーモセットの前臨床評価系を、それぞれ平行し、定量再現的に評価する方法、および、同法に基づいて新生児の発達を支援する環境の要素、その基盤について、前臨床評価・分析を深める。長期計測に伴う多量の情報に対する、分析技術を探索的に進める。論文報告、学会発表を行う。霊長類における、さらなる発達を追跡する実験および解析と、同前臨床評価を投影するNICU新生児計測系の改良、計測と分析を予定する。
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Research Products
(37 results)
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[Journal Article] Improving treatment of neurodevelopmental disorders: recommendations based on preclinical studies.2016
Author(s)
Homberg JR, Kyzar EJ, Stewart AM, Nguyen M, Poudel MK, Echevarria DJ, Collier AD, Gaikwad S, Klimenko VM, Norton W, Pittman J, Nakamura S, Koshiba M, Yamanouchi H, Apryatin SA, Scattoni ML, Diamond DM, Ullmann JF, Parker MO, Brown RE, Song C, Kalueff AV
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Journal Title
Expert Opin Drug Discov
Volume: 11
Pages: 11-25
DOI
Peer Reviewed / Int'l Joint Research / Acknowledgement Compliant
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[Journal Article] Understanding autism and other neurodevelopmental disorders through experimental translational neurobehavioral models.2016
Author(s)
Homberg JR, Kyzar EJ, Nguyen M, Norton WH, Pittman J, Poudel MK, Gaikwad S, Nakamura S, Koshiba M, Yamanouchi H, Scattoni ML, Ullman JF, Diamond DM, Kaluyeva AA, Parker MO, Klimenko VM, Apryatin SA, Brown RE, Song C, Gainetdinov RR, Gottesman II, Kalueff AV
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Journal Title
Neurosci Biobehav Rev
Volume: 65
Pages: 292-312
DOI
Peer Reviewed / Open Access / Int'l Joint Research / Acknowledgement Compliant
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[Journal Article] Susceptible period of socio-emotional development affected by constant exposure to daylight.2015
Author(s)
Mamiko Koshiba , Aya Senoo, Genta Karino, Shinpei Ozawa, Koki Mmimura, Ikuko Tanaka, Yoshiko Honda, Setsuo Usui, Tohru Kodama, Shun Nakamura, Tetsuya Kunikata, Hideo Yamanouchi,,Hironobu Tokuno
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Journal Title
Neuroscience Research
Volume: -
Pages: 9391-9398
DOI
Peer Reviewed / Open Access / Acknowledgement Compliant
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[Journal Article] 我が国の超早産児に対する黄疸管理と治療の現状2015
Author(s)
森岡一朗, 中村肇, 香田翼, 横田知之, 岡田仁, 片山義規, 國方徹也, 近藤昌敏, 中村信, 細野茂春, 安田真之, 横山直樹, 和田浩, 伊藤進, 船戸正久, 山内芳忠, 李容桂, 米谷昌彦
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Journal Title
日本新生児成育医学会雑誌
Volume: 57(2)
Pages: 95-100
Peer Reviewed
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