2013 Fiscal Year Annual Research Report
多角的視座からの「感情」現象の哲学的解明を通じた価値倫理学の新たな基礎づけの試み
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25284002
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Research Category |
Grant-in-Aid for Scientific Research (B)
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
古荘 真敬 東京大学, 総合文化研究科, 准教授 (20346571)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
野矢 茂樹 東京大学, 総合文化研究科, 教授 (50198636)
信原 幸弘 東京大学, 総合文化研究科, 教授 (10180770)
高橋 哲哉 東京大学, 総合文化研究科, 教授 (60171500)
梶谷 真司 東京大学, 総合文化研究科, 准教授 (50365920)
石原 孝二 東京大学, 総合文化研究科, 准教授 (30291991)
原 和之 東京大学, 総合文化研究科, 准教授 (00293118)
山本 芳久 東京大学, 総合文化研究科, 准教授 (50375599)
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Project Period (FY) |
2013-04-01 – 2016-03-31
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Keywords | 感情の哲学 / 共感 / 不安 / 近さと遠さ / 環境 / 現象学 / 精神分析 / 中世哲学 |
Research Abstract |
社会的・文化的に規定された世界の内に生きる私たちにとって、「感情」という現象は、いったい何を意味しているのであろうか。一方では、合理的な判断や意志遂行を阻害する動物的情動の反映としても捉えられがちな「感情」は、他方では(いわゆる道徳感情論の系譜において)、それなしには何らの「道徳」も「社会」も成り立ちえない規範的価値認識の基盤としても見なされることがある。本研究は、西洋哲学史におけるこうした「感情」概念の重層的意味づけを広く批判的に検討しながら、「感情」現象をめぐる現代の現象学・分析哲学・心の哲学・精神分析による最新の考察をここに突き合わせ、批判的に綜合することを通じて、私たちの共生空間に生成する倫理的価値の基礎を哲学的に解明することを目指すものである。 初年度にあたる平成25年度においては、上記の研究目的に沿って、研究分担者が、「感情」現象をめぐる各自の専門分野における議論状況の整理・消化に取り組み、外部の研究者をも交えた会合での研究交流に努めた。とりわけ、フッサールおよびハイデガーの現象学的哲学とフロイト=ラカン的な精神分析における感情理解に通底する特徴や差異をめぐる意見交換が活発になされた。具体的には、「共感」および「不安」という現象をめぐる理解の仕方が論議の的となった。また、キリスト教神学を背景にした中世哲学における「感情」理解をめぐる考究や、「環境」の内での共生をめぐる諸問題にとって遠近・親疎の感情がもつ意味についての考察も、同時平行的に深められており、次年度以降におけるさらなる共同研究の進展が期待される状況となっている。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
本研究プロジェクトの初年度にあたる平成25年度においては、元来、「感情」現象の自然的性格と人間の合理的思考との関係という論点に関する各分野における最先端の議論を整理しつつ、「感情」概念の内実を明確化することに努める計画であった。 「感情」現象にかかわる各研究分担者の研究推進のための基礎資料は、順調に収集されつつあり、また、本研究の基本的な方法に則って、研究代表者と研究分担者が、各自の専門分野にもとづく課題分担に沿って共通の研究主題にアプローチし、その成果を互いに突き合わせ、批判的に検討しあう努力も重ねられた。しかしながら、その成果が予想以上に多様であったこともあり、プロジェクト全体を、包括的・総合的研究へとまとめ上げていく努力が十分ではなかった。研究分担者の各専門分野における感情研究の具体相についての報告が積み重ねられ、「感情」概念の明確化には一定の成果はあったものの、これを、「感情」現象の自然的性格と人間の合理的思考との関係というような統一的な視点から見透して総合するというところまでは、残念ながら至ることができなかった。
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Strategy for Future Research Activity |
2年目にあたる平成26年度においては、初年度に着手された共同研究をさらに深化させながら、人間の規範的価値認識にとって「感情」の果たす役割について、各分野の見地から徹底検討していきたい。その際、初年度には十分検討できなかった、「感情」現象の自然的性格と人間の合理的思考との関係という論点に関する考察を共同で深めていけるよう、とりわけ努力したいと考えている。 そのため、各研究分担者にあっては、前年度に収集・整備された文献・資料の調査・読解を進めながら、未入手の現代哲学関係図書、哲学史および比較思想関係図書、認知科学および精神分析ないし精神医療関係図書の収集・整備を進めるばかりでなく、研究会をより頻繁に開催することを通じて、一層活発な研究交流を進め、研究プロジェクト全体を見透した哲学的対話を深めていくことにしたい。相応の国内および海外旅費が不可欠であるは言うまでもない。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
海外出張の予定が一件繰り延べになり、また、一部の購入図書の選定を見直しすることになったため。 見直された案にしたがって早めに購入図書の発注を済ませ、海外出張の計画についても先方の行事日程が確定次第、速やかに立て直すことを計画している。
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Research Products
(19 results)