2013 Fiscal Year Annual Research Report
盛期・後期スコラ哲学の「実践的な知」と現代徳倫理学
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25284005
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Research Category |
Grant-in-Aid for Scientific Research (B)
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Research Institution | Kyoto University |
Principal Investigator |
川添 信介 京都大学, 文学研究科, 教授 (90177692)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
藤本 温 名古屋工業大学, 工学(系)研究科(研究院), 准教授 (80332097)
松根 伸治 南山大学, 人文学部, 准教授 (90432781)
辻内 宣博 京都大学, 文学研究科, 助教 (50645893)
小川 量子 立正大学, 文学部, その他 (60648442)
山口 雅広 立命館大学, 文学部, その他 (20646377)
伊藤 邦武 京都大学, 文学研究科, 教授 (90144302)
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Project Period (FY) |
2013-04-01 – 2016-03-31
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Keywords | 徳倫理学 / 西洋スコラ哲学 / 実践的な知 |
Research Abstract |
本研究の目的の特徴は、現代の徳倫理学を西洋中世の盛期・後期スコラ哲学の倫理思想と対比することにあり、現代哲学の研究者である伊藤邦武を除いて、研究代表者・分担者は西洋中世哲学の専門研究者である。 研究の初年度であった平成25年度には、研究分担者が各自の専門分野(トマス・アクィナス、スコトゥス、ビュリダンなどの倫理思想)について、ラテン語原典テキストの綿密な読解と哲学的・倫理学的分析を遂行し、その成果の一部は雑誌論文として公にされた。 それらの個別研究の焦点は「知性的徳」に向けられ、徳という実践に関わりながら、何を為すべきかについての人間の認識の能力(「知慮prudentia」)が集中的に吟味された。その結果、この時期の徳に関する思想は、アリストテレスの『ニコマコス倫理学』を中心とした古代ギリシアの深い影響を受けながらも、西洋中世の思想的基盤であるキリスト教の伝統とつながった面を保持していること、そしてその両者の関係が緊張を孕んでいることが明確となってきている。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
「研究実績の概要」に記したとおり、研究代表者・研究分担者の専門分野に関わる個別研究は順調に進捗している。別記したように、研究分担者小川量子の研究については学術雑誌論文として既に刊行され、松根伸治の論文も掲載が決定されている。 また、研究代表者と研究分担者伊藤邦武は、ギリシア・アテネで開催された国際中世哲学会に参加し、本研究の主題に関する世界レベルでの知見を得てきた。さらに、各自の研究内容を相互に吟味する研究会も年度内に2回開催し、研究内容についての相互的吟味を行うことにより、今後の研究の基盤ができつつあると言える。
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Strategy for Future Research Activity |
研究の第2年度である平成26年には、前年度の「知性的徳」についての各哲学者についての個別研究を踏まえながら、それら相互の関係についての吟味を開始する。さらに、「知性的徳」と「倫理的徳」との関連について、それらの関係の緊密さに焦点をあてながら研究を進める。 以上の中世スコラ哲学に関する歴史的研究と平行して、研究の最終年度である平成27年度を念頭におきながら、欧米を中心とした現代徳倫理学理論と中世倫理学との共通点と相違点を明確にするための研究にも研究者各自が着手することになる。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
発注していた中世スコラ哲学に関する書籍の入荷が遅れたために、次年度使用額が生じた。 前年度未入荷の書籍の購入によって、今年度の使用計画は予定されたとおりに復すると考えられる。その他の面での使用計画の変更はない。
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