2014 Fiscal Year Annual Research Report
仏典における認識機序記述の研究―最初期から大乗期に至る記述の構造的把握を通して
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25284014
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Research Institution | Kansai Gaidai University |
Principal Investigator |
中谷 英明 関西外国語大学, 外国語学部, 教授 (20140395)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
室寺 義仁 滋賀医科大学, 医学部, 教授 (00190942)
加納 和雄 高野山大学, 文学部, 准教授 (00509523)
山畑 倫志 北海道科学大学, 公私立大学の部局等, 講師 (00528234)
宮崎 泉 京都大学, 文学研究科, 准教授 (40314166)
志賀 浄邦 京都産業大学, 文化学部, 准教授 (60440872)
榎本 文雄 大阪大学, 文学研究科, 教授 (70151991)
熊谷 誠慈 京都大学, 学内共同利用施設等, 准教授 (80614114)
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Project Period (FY) |
2013-04-01 – 2016-03-31
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Keywords | パーリ聖典 / 認識論 / ブッダの思想 / スッタニパータ / インド仏教 / 潜在意識 / 知覚 / 情動 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究の目的は、最初期から大乗期に至る諸仏典における認識機序記述の解明である。すなわち最古の仏典、ATThaka-vagga(SuttanipAta4章)に含まれる認識機序の精密な記述(闘諍篇862-874)を出発点として、後代の諸仏典・諸論書の記述の再解釈を試みることである。 研究会は昨年度に実施した3回を受け、本年度は第4回と第5回の研究会を京都大学文学部において実施した。第4回研究会(2014年7月13日)においては、宮崎泉(京大文学部)、熊谷誠慈(京大白眉センター)、第5回研究会(2015年2月22日)においては加納和雄(高野山大学)、志賀淨邦(京都産業大学)が発表した。 京都大学白眉センター、コレージュ・ド・フランス、フランス極東学院が共催した国際研究集会「仏教と普遍主義」(京都大学、フランス極東学院京都支部、2014年10月3日~5日)において、中谷英明(研究代表者)、宮崎泉 、熊谷誠慈は招待講演を行い、本研究の成果を発表した。 また中谷はパリに出張し(2014年12月24日~2015年1月6日)、多数のフランス人研究者とブッダの認識論の心理的、社会的意味について検討し、情報を交換した。 これらの共同研究を通じ、闘諍篇におけるブッダの認識論の精密な構造とその極めて縮約された記述法が明らかにされると同時に、ブッダにとって認識分析が「こころの絶えざる刷新」という究極目標を実現するための修行法の主要部をなすものであったことが明らかになりつつある。現時点までに判明した諸点について中谷は、『ブッダの認識論、あるいはこころの可能性について ― 「闘諍篇」中核部(862-874)訳注』龍谷大学現代インド研究センター伝統思想シリーズ(平成26年3月31日)、フランス極東学院刊行の”Bouddhisme et universalisme”(近刊)等に報告した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
1: Research has progressed more than it was originally planned.
Reason
本研究がその基準点・出発点とする闘諍篇中核部(SuttanipAta 862-874)の理解において、研究計画立案当初には予期しなかった大きな進展があった。 それは第一に、闘諍篇中核部の精密なダイアグラムを作成することによって、1)認識作用saJJAからの「表層意識」と「潜在意識」と呼ぶべき2種の連関する諸意識の生成の記述が明らかになったこと、またその中で、2)itonidAnaという複合語が指示するものが明確になったことである。これによって闘諍篇中核部が意識の生成プロセスを構造的に記述することが初めて明らかにされた。これは「五蘊」、「十二処十八界」、「十二支縁起」等の起源を解いたことにもなる。第二に、ATThaka-vagga におけるdhammaという語の指示する諸事象と上記諸意識の正確な対応が本年度の研究によって一層明確となり、ブッダはdhammaの語を「意識」の意味で用いたことが初めて確定された。第三に、上記対応が判明した結果、rUpaの意味が「(5種の)感覚」と特定された。 おそらくブッダ自身がその制作に関与したと推測される当該詩節が、このような諸意識の生成の予想以上に精密な構造的記述であるという発見は、今後の仏教理解に大きな寄与をなすものと期待される。
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Strategy for Future Research Activity |
引き続き、(1)年2回の研究会、(2)メールによる情報共有と研究打合せ、(3)外国の研究者との共同研究、(4)公開可能論文、研究参加者の最近5年間の発表論文リスト等のホームページにおける公開、を実施して研究を遂行する。来年度(2015年度)からは従来研究協力者として参加していたM-H DEROCHE氏(京大総合生存学館 (思修館))を研究分担者に加え、共同研究体制を一層充実させる。引き続き、桂紹隆(龍大)、横地優子(京大文)、佐藤明実(宗教情報センター)の各氏には研究協力をお願いする。 本科研の研究成果の公開は、各研究参加者が外国雑誌に少なくとも1編の外国語論文を掲載することによって行う。この成果報告論文は2015年8月末日までに出版されるように配慮する(出版が8月末日に間に合わない場合は、論文がアクセプトされていること)。 また2016年9月開催予定の日本印度学仏教学会において本研究班が「仏教の認識機序」パネルを主宰する。なお、中谷はコレージュ・ド・フランス主催のシンポジウム「聖典言語」(2015年6月16日・17日、コレージュ・ド・フランス)に招聘され、講演することが決定している。本研究課題のさらなる発展をはかり、2015年11月に科研費基盤研究(B)第2期を申請する。
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Causes of Carryover |
所有するパソコンが故障することなく使用できたため、新しいパソコン購入を次年度に持ち越した。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
(1)増大したデータの情報処理を円滑に行うため、ノートパソコンをH27年度当初に購入する。 (2)書籍をpdf化し、ocrソフトによってテキスト化するためのスキャナーとocrソフトは購入済みなので、これらを使って必要な研究書のpdf化を推進する。
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Research Products
(27 results)