2013 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
25284030
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Research Category |
Grant-in-Aid for Scientific Research (B)
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Research Institution | Kyoto University |
Principal Investigator |
稲本 泰生 京都大学, 人文科学研究所, 准教授 (70252509)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
岡村 秀典 京都大学, 人文科学研究所, 教授 (20183246)
船山 徹 京都大学, 人文科学研究所, 教授 (70209154)
上川 通夫 愛知県立大学, 日本文化学部, 教授 (80264703)
谷口 耕生 独立行政法人国立文化財機構奈良国立博物館, その他部局等, 研究員 (80343002)
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Project Period (FY) |
2013-04-01 – 2016-03-31
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Keywords | 美術史 / 仏教美術 / 東アジア / 聖地表象 |
Research Abstract |
助成金交付後、研究代表者・研究分担者を中心に研究内容・方針について具体的な討議を重ね、当該テーマに沿った資料蒐集(図書・画像など)及び研究活動に従事した。 その実績・成果として特に顕著なものは、2014年3月22日に京都大学人文科学研究所で実施したワークショップ(国際ワークショップ)である。米国から招聘したインド美術の専家・島田明氏(ニューヨーク州立大学准教授)による「南アジア初期仏教美術における聖地表象-仏伝図との関係を中心に」、研究分担者の谷口耕生による「五天竺図と中世南都の仏教世界観」、研究協力者の西谷功による「南宋時代の臨安・明州・台州周辺の諸寺院について-泉涌寺僧の参学寺院を中心に」、以上三本の報告が行われた。インド美術における仏蹟などの聖地表象と、日本人仏教者によるインド・中国の聖地観の実態を浮き彫りにする非常に充実した内容であり、活発な討論がなされた。 初年度の海外調査は、上掲の谷口・西谷報告の内容、及び日本人行歴僧の事蹟や美術作品とも密接に関わる、中国浙江省に重点をおいた。25年10月、代表者の稲本が同省杭州市の浙江省博物館で短期間の予備調査を行い、先方と今後の研究交流に向けた協議を行った。これをうけ、年度をまたいだ26年4月初(25年度の経費を使用)、計8名からなる調査団を組織し、同省にて10日間、当該テーマに関わる遺跡・遺物調査を実施した。普陀山、天台山など、当該地域を代表する仏教聖地のほか、杭州市、寧波市、新昌県、台州市、温州市の遺跡・博物館等で、主に呉越~両宋時代の東アジア海域交流と仏教美術の関係に留意し、研究資料の蒐集・蓄積を行った。 国内での調査に関しては、本研究で特に重点的な検討対象とみなしている「五天竺図」諸本の所蔵者との間で、実査に向けての調整を進めた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
25年度の経費により実施した中国浙江省における現地調査では、聖地に関するテキストの記述、聖地表象に関わる美術作品、聖地の実景と現状などの相関関係についての具体的なイメージを、海域交流に関心をもつ仏教史・美術史研究者が協働する中で、共有することができた。資料の蒐集・活用の方針も含め、本研究における今後の海外調査の基盤と方向性が、この調査を通して確立された意義は大きい。 また国内所在作例では「五天竺図」に特に焦点をしぼり、所蔵者との間で調整を行うことで、26年度における実査の準備・体勢を、ほぼ整えることができた。 また年度末には当初の計画通り、海外の第一線で活躍する研究者を招聘して、ワークショップを開催することができた。研究組織に属する二名の報告と併せ、当該テーマに関わる研究会としては、理想的な内容・水準を備えたものとなった。
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Strategy for Future Research Activity |
国内所在資料では、「東アジア仏教美術における聖地表象」という、本研究の題目の核心に対応する作例である「五天竺図」の諸本の実査に、重点的に取り組む。翻刻・対校・写真資料の収集整理などの基礎的な作業にも着手し、研究期間終了後に本研究の成果が盛り込まれた資料集として公刊できるよう、道筋をつけたい。 海外調査に関しては、26年度は五台山を中心とする中国山西省、インドの仏蹟(ボードガヤー、サールナートなど)における遺跡・遺物調査に加え、25年度の経費で行った浙江省における調査成果をより十全なものとすべく、補足的な調査を行う。 また海外で活躍中の研究者を招聘して行う国際ワークショップも含め、研究会を定期的に開催し、本研究のさらなる水準の向上と活性化を図りたい。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
本研究経費の使用計画を立てるにあたり、最も大きなウエイトを占める支出として想定しているのは、海外調査に伴う旅費である。25年度は中国浙江省において組織的な調査を実施して大きな成果をあげたが、参加者の延べ数(人数×日数)が当初の想定に達しなかったため、結果的に次年度使用額が生じた。その主因は、研究組織内に博物館関係者が多いため、メンバー間の日程調整が、展示活動等の都合で想像以上に難航した点に存する。 基本的に海外調査の旅費として使用する。具体的には、以下の二つの用途を想定している。 ①25年度に中国浙江省で実施した調査の成果をより十全なものとすべく、メンバーを同省に派遣するための経費。 ②26年度に実施を予定している中国山西省及びインド東北部での調査を、人員・日数の両面で可能な限り充実させるための経費。
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Research Products
(30 results)