2016 Fiscal Year Annual Research Report
Interdisciplinary Studies for Formulating the Common Grounds between Art Theory and Art Therapy
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25284046
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Research Institution | Konan University |
Principal Investigator |
川田 都樹子 甲南大学, 文学部, 教授 (00236548)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
三脇 康生 仁愛大学, 人間学部, 教授 (40352877)
服部 正 甲南大学, 文学部, 准教授 (40712419)
西 欣也 甲南大学, 文学部, 教授 (70388750)
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Project Period (FY) |
2013-04-01 – 2018-03-31
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Keywords | 芸術表現 / 芸術療法(アートセラピー) / 医療の歴史 / アウトサイダーアート / アール・ブリュット / 障がい者福祉 / 美術史 / 臨床美術 |
Outline of Annual Research Achievements |
・平成28年度に開催した公開研究会(計2回)は以下の通り。1、「アメリカにおけるアートセラピー」。これは、アメリカからアートセラピー研究者であるメルセデス・テルマート(Mercedes Ballbe ter Maat)氏を招いて講演会と講習会として開催した(6月11日、於甲南大学)。2、「リールはいかにして、アートを精神医療に導入したか」。これは、フランスのリールからアート活動に取り組む2名の精神科医、マッシモ・マーリ(Massimo Marsili)氏とジャン=リュック・ローラン(Jean-Luc Roelandt)氏を招いて講演会として開催した(11月11日、於甲南大学)。それぞれ多数の参加者、協力者を得て、芸術理論と、臨床心理学に根差した芸術療法、あるいは精神科医療現場と芸術活動との深い関りについての知見を広げることができ、異なる専門領域の研究者間での学際的かつ創造的対話が実現した。 ・地域貢献実践プログラムとしての「甲南アトリエ」は、第4回「親子孫子で楽しむアート~和紙で造形してみよう~」(10月9日、於甲南大学)と、第5回「親子孫子で楽しむアート~和紙や布を染めてみよう~」(2017年3月12日、於甲南大学)を開催した。 ・研究代表者が10月に、ロンドンのImperial War Museumの収蔵庫を調査し、アートセラピー創始者でもある第一次世界大戦従軍画家、Adrian Hillに関する膨大な資料を発見し、当該施設学芸員とともに資料の分析調査に着手することになった。 ・平成28年度末に刊行された甲南大学人間科学研究所紀要『心の危機と臨床の知vol.18』には、研究代表者と研究分担者1名と研究会講演者2名が寄稿した。また、各研究者が所属する学会での発表や、各種雑誌論文の投稿によって、本共同研究の成果が公開された。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
4: Progress in research has been delayed.
Reason
研究代表者は、平成28年10月13日・14日に、ロンドンのImperial War Museumの収蔵庫を当該館の美術担当Curatorとともに調査し、そこに死蔵されていた、アートセラピー創始者でもある第一次世界大戦従軍画家、Adrian Hillに関する膨大な資料を発見した。当初の予定ではこの調査は目視確認程度で終わるはずだったが、予想外の発見によって、アートセラピーの歴史、特にその発祥に関して従来説が大きく覆されることがわかった。また、10月19日に、A.Hillの遺産管理者に面接が叶い、多くの遺品が研究資料として提供されることになった。これも予期せぬ事態であり膨大な量にのぼるため、ロンドン在住のImperial War Museum のCuratorと連絡を取りつつ、これから資料の整理と分析解明にあたることが必要になった。 各国のアートセラピーに関する歴史の比較研究のために、米国と仏国からの講師を招聘して公開研究会を行ったが、上述の事態のせいで、英国に関しては歴史解明が来年度に持ち越されることになってしまった。 また、英国からの影響によってアートセラピーを導入した日本の歴史を考察するための調査も、英国の資料分析を完了してから行う必要がある。そのため、平成28年度に予定していた佐賀県嬉野温泉病院の「中川保孝記念館」と「アートセラピー美術館」の調査も延期することになった。
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Strategy for Future Research Activity |
平成29年1月から4月の期間に、ロンドン在住のImperial War Museum のCuratorと連絡を取りながら意見交換しつつ、新発見資料の整理と分析にあたる。連絡手段は主に電子メールを用い、調査資料の撮影画像をもとに内容を解釈・解析しながら意見交換を重ねる。 佐賀県嬉野温泉病院は、その創立者である中川保孝が、Adrian Hillの著作を式場龍三郎の翻訳を通じて知り感銘を受けて、日本で初めて「芸術療法」を正式に医療施設内で開始した場所であるが、その嬉野温泉病院に関する調査は、上述のAdrian Hillに関する資料研究を完了して後に、「中川保孝記念館」と「アートセラピー美術館」の見学と関係者(遺族)へのインタビューとして、平成29年5月に行い、日本における芸術療法の歴史研究を明らかにする予定である。 それらを踏まえたうえで、米国・仏国・に加えて、英国と日本でのアートセラピーの歴史や現状の比較と分析を行い、その結果は、公開研究会あるいは研究分担者による検討会を開催して情報を共有し、さらにそこから新たなアートワークショップの方式を考案し直す所存である。 平成29年度末には、それらの全成果を取りまとめた「成果報告書」を作成する予定である。報告書には、研究代表者、研究分担者、研究協力者、そして公開研究会に海外から登壇した講演者らも論考を執筆することになっている。
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Causes of Carryover |
本来は平成28年度が最終年度であり、年度末に成果報告書を上梓する予定であったが、10月のロンドンでの調査(Imperial War Museumの収蔵庫)で、アートセラピー創始者のAdrian Hillに関する膨大な資料を思いがけず発見した。これによって、アートセラピー発祥に関する従来説が大きく覆されることがわかった。さらに予期せぬことに、A.Hillの遺産管理者から多くの遺品が研究資料として新たに提供された。それらは膨大な量であるため、今後Imperial War Museum のCuratorとの協同による資料の整理と分析解明が必要になった。また、英国からの影響によってアートセラピーを導入した日本の事情を検証するのも、英国の資料分析を完了してから行う必要があり、来年度に持ち越さざるをえなくなった。それらを全て完了してから、平成29年度中に成果報告書を出版する予定である。 英国資料の整理と分析は、平成29年1月から4月の期間に英国の研究者と電子メールによって連絡を取りつつ資料の整理と分析にあたり、日本で最初に英国から芸術療法を移入した嬉野温泉病院を5月に訪問調査し、その成果を反映させたアートワークショップを6月に開催、7月に記録集を作成し、10月にシンポジウムを開催し、それらすべてを取りまとめて平成30年度末に成果報告書を出版する予定である。
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Research Products
(17 results)