2014 Fiscal Year Research-status Report
雑誌研究の理論と方法に関する比較文学・比較芸術的研究――明治大正期日本を中心に
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25284069
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
今橋 映子 東京大学, 総合文化研究科, 教授 (20250996)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
永井 久美子 東京大学, 総合文化研究科, 助教 (10647994)
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Project Period (FY) |
2013-04-01 – 2017-03-31
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Keywords | 雑誌研究 / 美術雑誌 / 明治大正文化 / 岩村透 / 初期社会主義 / 美術雑誌 / 思想雑誌 / 比較文学 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究はこれまで、明治大正期研究で一次資料そのものとして対象とされてこなかった「雑誌」という存在を前面に出し、「雑誌研究」がいかに可能かを、比較文学・比較芸術的観点から明らかにしようとするものである。とりわけ. 1900年代~1920年代に豊かな展開をみた「文学芸術総合雑誌」を中心課題とする。その際、茫漠とした総合把握、あるいは特定雑誌の個別研究ではなく、明治大正期の文化研究に新たな側面を拓く視点、方法論を提供しうる雑誌を複数選び、それを新たな方法で分析することが、何より肝要となる。研究第二年目である本年は、昨年度来の研究をさらに深め、本格的論文執筆をおこなった。重要な成果は、以下の3点である。 1)雑誌研究の方法論としての「一号分析」の可能性を、明治大正期の美術雑誌『美術新報』を対象としておこなった(東京大学『超域文化科学紀要』掲載論文、別途発表論文一覧参照のこと)。その結果、編集者の意志や企図が大変に強い場合、あたかも通常の人文研究の「作品論」と同じく、一号分析が可能であることが明らかになった。これは雑誌研究の方法論として、新たな発見であると思われる。 2)昨年度に続き、「明治大正期雑誌と思想統制の解明」を行い、岩波書店『思想』に論文後半を公表した。 3)上記2)の論文では、さらに、明治の思想雑誌である『六合雑誌』を詳細に取り上げることで、一見関係性が薄いように一般的には思われるような美術界と思想界との深い連関が、明るみに出された。 4)雑誌『美術新報』に続き、『美術週報』の巻頭言(社説)を詳細に分析することにより、岩村透および坂井犀水が社説欄を、思想統制をかいくぐるための戦略として使用している様相が明らかになった。これは次年度発刊の学術誌に公表予定である。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
平成26年度の本研究は、申請時の研究計画通り、あるいはむしろ若干それより早く 進んでいる。その理由は、当初の研究計画を練り上げていたため、確実に分析および執 筆が進んだためである。
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Strategy for Future Research Activity |
来年度から、この申請研究の後半2年に入るため、文学芸術系雑誌と思想系雑誌の連関の解明をさらに徹底的に行い、引き続き学術論文のかたちで公表した結果、最終的に単行本に至るべく執筆を続けていく。
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Causes of Carryover |
次年度使用額と合算して直接経費として使用したいと思ったため。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
次年度使用額と合わせて、主に物品費として執行予定である。
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Research Products
(3 results)