2013 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
25284114
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Research Category |
Grant-in-Aid for Scientific Research (B)
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Research Institution | Tokyo University of Foreign Studies |
Principal Investigator |
金井 光太朗 東京外国語大学, 大学院総合国際学研究院, 教授 (40143523)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
吉田 ゆり子 東京外国語大学, 大学院総合国際学研究院, 教授 (50196888)
青山 亨 東京外国語大学, 大学院総合国際学研究院, 教授 (90274810)
千葉 敏之 東京外国語大学, 大学院総合国際学研究院, 准教授 (20345242)
鈴木 茂 東京外国語大学, 大学院総合国際学研究院, 教授 (10162950)
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Project Period (FY) |
2013-04-01 – 2016-03-31
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Keywords | 世界史 / 日本史 / 地域史 / ジェンダー研究 / モデル授業 |
Research Abstract |
3年間の科研費プロジェクトの初年度にあたる平成25年度には、(1)高校世界史教育に関する先行研究およびその改善のための近年の取り組みの整理、(2)アンケートと聞き取り調査を通した、高等学校における地歴科教育の現状と教員・生徒の意識の解明、(3)高校世界史教科書の内容検討、(4)独創的な教材・教育方法の開発・実践を通して意欲的に世界史教育に取り組んでいる高校教員のネットワークの構築、以上四つの課題について重点的に取り組んだ。その中で、アンケート調査、聞き取り調査、資料収集を実施し、研究会を開催した。(1)に関しては、収集した資料の分析に加え、小田中直樹(東北大学教授)、大阪大学歴史教育研究会(桃木至朗、秋田茂両同大教授)からの聞き取りを行った。また、10月12日に桃木至朗、秋田茂両氏を招いて、研究会「「阪大史学」と「市民のための世界史」」(東京外国語大学本郷サテライト)を開催した。(2)に関しては、7月30、31日に東京外国語大学海外事情研究所主催「第5回夏期世界史セミナー」に参加した高校教員約120名への世界史教育の現状と認識に関するアンケート、10月1日から10日に本学1年生(一部2年生を含む)への出身高校での世界史教育に関するアンケートを実施した。また、後者から判明した世界史教員に前者と同様のアンケートを郵送で実施した。その上で、アンケート回答者のうち約40名に面接調査を実施した。(3)については、7月31日に山川出版社版『新世界史B』の共著者二人(小田中直樹、千葉敏之・東京外国語大学准教授)を招いて「教科書から考える高校世界史教育―研究と教育の架橋」(東京外国語大学海外事情研究所)を開催した。(4)については、夏期世界史セミナー参加者と教員アンケート回答者の名簿をもとに、メーリングリストを作成した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本研究の最終的な目的は、東京外国語大学における地域研究の成果を高校の世界史教育に生かすことにある。初年度は、まず、高校教員と生徒(高校卒業生)という双方向的な視点から高校における世界史教育の現状把握に努めた。そのため、本学海外事情研究所主催の「夏期世界史セミナー」参加教員へのアンケート、本学学生へのアンケート、学生アンケートで判明した高校教員へのアンケート、教員アンケート回答者への面接調査を実施した。アンケートが回収出来た高校教員は約180名、面接調査の承諾を得た約60名のうち3月末までに面接調査を終えた教員が約40名、学生アンケートの回答者約650名(本学定員の約85%)にのぼった。アンケート結果については集計中であり、面接調査については、許諾者の約3分の一が年度内に実施出来なかった。 研究会については、7月と10月の2回開催し、とくに10月の第2回研究会には20名以上の高校教員の参加を得ることができ、活発な討論が交わされた。これらの研究会と本科研メンバー以外の報告者(小田中直樹、桃木至朗、秋田茂)への聞き取りから、高校世界史教育をめぐる研究者による問題把握と検討の到達点を明らかにすることができた。 高校教員への面接調査は、主に研究代表者の金井光太朗と本研究プロジェクト幹事の鈴木茂が教員の勤務校を訪問して実施した。その際、面接対象者が開発した授業プリントなどの教材や授業実践の報告書、授業方法に関する研究論文等の収集に努めた。ただし、研究プロジェクトのメンバーによる地域研究に基づく教材とモデル授業の開発については、個別の取り組みにとどまり、一部を除きその成果を共有するまでには至らなかった。
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Strategy for Future Research Activity |
初年度の研究活動を通じて、高校の世界史教員へのアンケートと面接調査、本学学生へのアンケートは、高校現場における世界史教育の現状と課題の把握にとってきわめて重要な方法であることが明らかとなった。第2年度以降も引き続きこうした実態調査を継続するとともに、その結果の集計と分析を進めることとする。面接調査を通じて、面接対象者の高校教員から、本研究プロジェクトによる実態調査の結果への強い関心が寄せられており、研究の社会的責任の観点からも、その成果の公表が急がれる。 本学の地域研究の成果を踏まえた世界史教育の教材開発も、さらに組織的に取り組む必要がある。その際、本学の1、2年生の履修科目「地域基礎」科目と高校世界史とのつながりを体系的に検討するのが有効であろう。また、論述形式の入試問題が世界史の理解を深める教材として有益であるとの指摘を踏まえ、本学の過去の入試問題の教材化を図る。これに関連して、海外における歴史教育、とくに世界史教育と大学入学試験における歴史科目の位置づけについての調査を行う。 一方、日本学術会議における新科目「歴史基礎」「地歴基礎」の議論と試行、「日本史」必修化の議論などに見られるように、高校世界史をめぐる状況は変化しつつある。第2年度には、こうした高校世界史をめぐる新しい動きを踏まえて研究を進める必要があり、関係者を招いての研究会の開催を予定している。また、高校の世界史教員の多くが、研修の機会と地域や国公私立校をまたいだ教員間の交流機会の不足を痛感しており、本研究プロジェクトが高校教員と大学教員、高校教員同士が交流し意見交換するフォーラム的な役割を果たすことが期待されている。研究会やホームページ等を通じ、可能なかぎりこうした高校教員の期待に応えてゆく。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
当初、2013年度中に本研究の中心テーマの一つであるモデル授業の開発に取りかかる予定であったが、2013年度は全国の高校教員へのアンケート調査、各地の高校への訪問調査を主として行ったために、教材とモデル授業の開発が十分には進まなかった。それゆえ、教材とモデル授業開発に必要だと考えられた物品費分が残り、2014年度使用額となっている。 2014年度は、全国高校教員への調査を続けるとともに、教材とモデル授業の開発を進める。さらに、2013年度に全国高校の教員への訪問調査を行った結果、海外における歴史教育、特に世界史教育と大学入学試験における歴史科目の位置づけについての関心もみられることから、海外調査・視察を2014年度は行い、国内外の高校の歴史教員との情報交換を進める。また、地方の高校教員を招聘し、研究会を複数回開く予定である。そのため旅費を2014年度は多く計上している。さらに、アンケート調査の結果を分析し、統計する必要性、また、ホームページ作成作業等があるので、謝金を多く計上した。
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