2014 Fiscal Year Annual Research Report
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25284132
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Research Institution | Tokyo University of Foreign Studies |
Principal Investigator |
高松 洋一 東京外国語大学, アジア・アフリカ言語文化研究所, 准教授 (90376822)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
近藤 信彰 東京外国語大学, アジア・アフリカ言語文化研究所, 准教授 (90274993)
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Project Period (FY) |
2013-04-01 – 2017-03-31
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Keywords | イスラーム史 / 簿記術 / 史料研究 / 国際研究者交流 / 中東 |
Outline of Annual Research Achievements |
定期研究会:公益財団法人・東洋文庫において月1回(1年で合計11回)の研究会を行った。前年度に引き続き、サファヴィー朝シャー・タフマースプ時代に著されたギヤース・アッディーン・アブー・イスハーク・ケルマーニーの『簿記術論説』の講読を、序論第11章から始め、序論の最終章である第15章まで読み進めた。年代が最も古いマルアシー図書館所蔵の写本を底本としつつ、マジュレス図書館(2写本)、アースターネ・ゴッズ図書館所蔵の写本の4写本の比較検討を通じ、ペルシア語仮校訂テキストと日本語訳を作成した。 海外学会派遣:2014年8月6-9日にカナダのモントリオールで開催された第10回国際イラン学会に、研究協力者の渡部良子氏、阿部尚史氏を派遣し、それぞれRyoko Watabe, "Fiscal Problems of the Ilkhanids and the Development of Bookkeeping System in 14th-century Iran"; Naofumi Abe, "The Survival of Sheykh Safi's Shrine after the Collapse of the Safavid Dynasty"と題する報告を行なった。 海外調査派遣:2014年8-9月に研究協力者の熊倉和歌子氏を、オランダのライデンおよびエジプトのカイロへ、写本調査のために派遣した。また2014年9月および2015年1-2月に研究代表者の高松洋一をトルコのイスタンブルおよびアンカラへ、文書・写本調査のために派遣した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
初年度である昨年度の初めに、当初の計画と異なり、サファヴィー朝支配下のイランで著されたギヤース・アッディーン・アブー・イスハーク・ケルマーニーの『簿記術論説』を研究会で講読することとなったが、これまでに17回の研究会を開催して、すでに序論部分はほぼペルシア語テキストの仮校訂と日本語訳を終えることができた。 また上記写本のうち、研究会の講読で取り上げなかった分数と度量衡を扱う第5章、第6章についても、研究協力者渡部良子氏らの努力により、解読を進めることができた。 イランで作成された簿記術指南書と対照すべきオスマン朝の帳簿資料の収集も順調に進めることができた。
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Strategy for Future Research Activity |
研究はおおむね順調に進展していると言えるので、昨年度までの推進方策をこのまま維持していきたい。 まず、昨年度までと同様に東洋文庫における月に1回の定例研究会を継続し、ギヤース・アッディーン・アブー・イスハーク・ケルマーニーの『簿記術論説』の講読を進める。今年度からは、いよいよ具体的な帳簿の諸類型の実例を解説した、「日誌」を扱う第1部の講読に入っていける見込みである。これまで仮校訂を進めてきた序論のペルシア語校訂テキストに関しては、国際学術雑誌『アジア・アフリカ言語文化研究』に資料として投稿を目指す。また分数と度量衡を扱う第5章、第6章に関しては、利用しやすいマニュアルの形にまとめ直し、ウェブ上での発表を目指す。 『簿記術論説』のペルシア語仮校訂テキストの作成と並行し、これまでに翻訳・注解を行なったイル・ハン朝期のペルシア語簿記術指南書『簿記術に関するファラキーヤの論説』をはじめとする他の簿記術指南書との比較作業も進める。さらにこれらの指南書の記述と、オスマン朝下で作成された帳簿史料の実例との比較対照も行なう。 2015年度は海外学会派遣として、研究協力者の阿部尚史氏をロシアのサンクト・ペテルスブルクで9月開催予定の第8回ヨーロッパ・イラン学会に派遣することを予定している。また海外調査派遣として、研究協力者の渡部良子氏をイランに派遣し、まだ入手することができていない、ギヤース・アッディーン・アブー・イスハーク・ケルマーニーの『簿記術論説』の重要な1写本の電子複写を手に入れることも計画している。 イランからアナトリア・バルカンへの簿記術が伝播した時期にあたる、書記オスマン朝時代の課税調査台帳の簿記システムに関して、この分野の第一人者であるビルケント大学のエヴゲニ・ラドゥシェフ博士を招聘してセミナーを開催することも計画している。
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Causes of Carryover |
研究代表者のトルコにおける海外調査が当初より長期間になる予定であったが、本務の都合により、当初計画より期間を短縮せざるをえなくなったため。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
今年度の海外学会派遣と海外調査派遣により、使用できる見込みである。
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