2014 Fiscal Year Annual Research Report
歴史的ヨーロッパにおける複合政体のダイナミズムに関する国際比較研究
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25284145
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Research Institution | Osaka University |
Principal Investigator |
古谷 大輔 大阪大学, 言語文化研究科(研究院), 准教授 (30335400)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
後藤 はる美 東洋大学, 文学部, 講師 (00540379)
大津留 厚 神戸大学, その他の研究科, 教授 (10176943)
中本 香 大阪大学, 言語文化研究科(研究院), 准教授 (30324875)
中澤 達哉 福井大学, 教育地域科学部, 准教授 (60350378)
小山 哲 京都大学, 文学研究科, 教授 (80215425)
内村 俊太 上智大学, 外国語学部, 助教 (90710848)
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Project Period (FY) |
2013-04-01 – 2017-03-31
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Keywords | 西洋史 / 近世史 / 近代史 / 普遍君主 / 複合王朝 / 複合国家 / 礫岩国家 / 国家形成 |
Outline of Annual Research Achievements |
平成26年度は、歴史的ヨーロッパの複合政体に関する日本とヨーロッパの歴史学者の知見を結びつけようとする本研究の目的にたち、海外の歴史学者との研究交流に主軸を置いて研究活動を展開した。本研究が主催者となり、ジャン・フレデリック・ショーブ氏(フランス社会科学高等研究院教授)を招いた国際セミナー(2014年4月12日於早稲田大学)、ハラルド・グスタフソン(ルンド大学歴史学部教授)氏をはじめスウェーデン・デンマークの歴史学者たちとともに複合政体を論ずる国際ワークショップ(2014年9月11日於クルチューレン(南スウェーデン歴史民俗博物館)、ルンド(スウェーデン王国))を開催した。前者ではショーブ氏の基調報告に対して本研究に参画する研究者の知見からコメントが示され、後者ではグスタフソン氏の基調報告の後に本研究に参画する研究者から氏の複合国家論に触発された個別報告が示された。(その他、ルンド・ワークショップの準備を目的とした会合(2014年8月9日於大阪)、2014年度の研究活動の総括と個別研究の進捗確認を目的とした会合(2015年3月25日・26日於東京)も開催された。)これら議論を通じて、本研究は大西洋を挟む同時代的な理解として普遍政体への指向性から歴史的ヨーロッパ論を構築する可能性を得た。これは、国際比較研究と銘打った本科研の複合政体の比較論が共同研究のプラットフォームとして有効であることを確認した機会だった。しかし各地域における複合政体の検討は当該地域の政治事情をコンテクストとした議論であることから、複合政体をめぐる研究史や研究視座も地域ごとのヴァリアントが確認される機会でもあった。本研究の目的は最終的に日本の歴史学界が媒介者となって各地域の複合政体論を総合化して国際的な議論を前進させることに置かれていることから、多様な複合的政治編成を比較するためのマトリクスも求められている。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
1: Research has progressed more than it was originally planned.
Reason
本研究の目的は、君主制・共和制・公共善などをめぐる概念史の知見と中世から近代へと至る国家形成史の知見を結びつける分析方法と日本と欧米の歴史学者の緊密な連携をもって、各地域を対象とした従来の国家形成論に総合的な議論を喚起することに置かれている。平成26年度は歴史的ヨーロッパの複合政体に関する日本とヨーロッパの歴史学者の知見を結びつけようとする本研究の目的に立ち海外の歴史学者との研究交流に主軸を置いて研究活動を展開して、本科研の複合政体の比較論が国際的な共同研究のプラットフォームとして有効であることを確認した。これは当初の計画に従った研究成果であるが、平成26年度はこれらの議論を踏まえて、日本の歴史学界が媒介者となって各地域の複合政体論を総合化しようとするために必要となる作業として、多様な複合的政治編成を比較するためのマトリクスの提示という具体的な課題を得ることもできた。海外研究者との研究交流の実現はもとより、日本の歴史学界の知見が各地域の歴史学界を「橋渡し」する際に必要となる課題を本研究の実施2年目にして見出すことができたことをもって、本研究は当初の計画以上に研究目的の実現にむけて親展していると判断する。
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Strategy for Future Research Activity |
本研究は以下の三つの方針に従って今後推進される。(1)海外での国際ワークショップに関しては最近の円安傾向の影響もあり当初計画通りに毎年開催することが困難となったため、当初計画を修正し平成27年度は最終年度(平成28年度)に開催予定のワークショップにむけた準備期間として研究を展開し、その活動内容を踏まえて平成28年度にあらためてワークショップを開催する。(2)その実現にむけて本研究に参画する研究者は、次年度以降も平成25年度・平成26年度に得られた研究成果を基に、各自の所属する研究機関において各々の役割分担に従い複合政体のダイナミズムを支える政体理念と統治実践の変化について実証研究を進める。(3)平成26年度の海外研究者との研究交流で明らかとなった多様な複合的政治編成を比較するためのマトリクスを提示する目的にたち本研究に参画する研究者による研究会合を重ね、平成27年度には平成28年度に開催を予定する国際ワークショップを念頭におきつつ、当初計画では平成28年度に予定していた国内研究者との公開シンポジウムを前倒しして開催し、複合政体に関する総合的な議論をまずは国内の歴史学界を対象として喚起する。
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Causes of Carryover |
平成26年度は研究分担者の1名が育児期間中にあり、当初予定のスウェーデンで開催された国際ワークショップへの海外渡航が1名分行われなかった。また海外研究者との連絡も研究代表者が直接コンタクトをとるなどして、補助事業者を雇用することがながったため、人件費・謝金が使用されなかった。これらのことから、当初使用予定の旅費・人件費などが圧縮され、次年度使用額が生じた。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
例えば平成26年度は円安が進行したため、各研究分担者の分担金はほぼこの海外渡航費目的に使用され、年度末開催の国内研究会に必要となる旅費の一部は研究代表者の管理する研究費から支払いがなされた。この経験を踏まえ各研究分担者に配分される分担金は主として各々の海外旅費に充てるものとし、平成26年度に生じた次年度使用額については国内開催の研究会に必要となる旅費などに適宜充当する予定である。
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Research Products
(26 results)