2014 Fiscal Year Annual Research Report
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25285053
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Research Institution | National Graduate Institute for Policy Studies |
Principal Investigator |
岩間 陽子 政策研究大学院大学, 政策研究科, 教授 (70271004)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
小窪 千早 静岡県立大学, 国際関係学部, 講師 (00362559)
川嶋 周一 明治大学, 政治経済学部, 准教授 (00409492)
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Project Period (FY) |
2013-04-01 – 2017-03-31
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Keywords | 政治学 / 国際関係 / 安全保障 / 核不拡散 / 核戦略 / NATO / NPT |
Outline of Annual Research Achievements |
研究の2年目にあたる平成26年度は、研究の基盤となる資料の収集を進めるとともに、研究会、学会などの場でプロジェクトのこれまでの成果を発表し、外部の研究者等と意見交換を行った。
まず関連資料の収集・整理については、新垣拓(研究協力者)が米国公文書館で、川嶋周一が独ボン大学政治学講座図書館で「核の歴史プロジェクト(Nuclear History Program)」関連史料の調査を行った。小窪千早は、仏国立公文書館およびフランス外務省外交史料館で、合六強(研究協力者)は、ニクソン・フォード・カーター各大統領図書館で史料収集を行った。
さらに、公開研究会を2014年5月31日と10月17日、2015年3月28日に計3回行った。1回目は小窪千早が、「フランスの核戦略をめぐる議論とドゴールの核政策」、2回目は、防衛大学校名誉教授の佐瀬昌盛氏が、「同時代人の目から見た1960-70年代 NATOの核問題」と題する報告を行った。3回目は、合六強と小林弘幸(研究協力者)が、それぞれ米英の核政策とNATOとの関連について研究発表を行った。また7月26日には、小松製作所顧問の中川義章氏を招いて、「原子力技術の発展と国際政治」と題する報告で、技術的側面の進歩が及ぼした影響について検討した。11月16には、日本国際政治学会研究大会(福岡国際会議場)で「NATO 核共有制度の起源―1956-1957 年の同盟危機を中心に」と題する部会を開催し、岩間陽子、川嶋周一、新垣拓が報告を行った。40名を超える出席者があり、討論者の赤木完爾氏(慶應義塾大学)、倉科一希氏(広島市立大学)をはじめとして多くの出席者から意見が出され、活発な討論が行われた。3回の研究会と中川氏との報告・検討会、そして学会での討論を通して、本研究の目的である核の「1968年体制」の成立・展開の実態解明のための有用な視座を得ることができた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本研究会の目的は、1960年代に成立した核の不拡散と抑止の体制を冷戦の中の「1968年体制」と位置付け、NATOにおける核兵器の共有(核共有)および、核兵器の使用に関する協議(核協議)制度がどのように成立し、運用されてきたのかを、外交史・国際関係史の手法を用いて明らかにすることでである。このような本研究にとり最も重要な研究基盤は各国、国際機関等の一次資料であるが、26年度はドイツ(ボン大学政治学講座図書館所蔵「核の歴史プロジェクト(Nuclear History Program)」関連史料)、フランス(国立公文書館および外務省外交史料館)、アメリカ(ニクソン、フォード、カーター各大統領図書館)で資料を収集することができた。これは、本研究に目的達成に向けた大きな前進である。今後はイギリス等で残された関連資料の収集を行っていく予定である。
また、25年度から引き続き定期的に研究会を開催するとともに、日本国際政治学会2014年度研究大会(福岡国際会議場)で「NATO 核共有制度の起源―1956-1957 年の同盟危機を中心に」と題する部会を企画し、数多くの研究者と討論、意見交換を行った。これにより、今後研究を進めていく上で重要となるテーマやイシューについて、その基本となる事実を確認するとともに、今後より深く掘り下げるべき論点を特定することができた。
以上に鑑み、本研究は当初の研究目的に関して、おおむね順調に進展していると評価できるであろう。
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Strategy for Future Research Activity |
①実態調査の継続:これまでに引き続き、海外における一次史料の収集を継続する。また、これまで収集してきた史料の集積、整理を行い、インターネットを利用して発表出来るものは発表していく。さらに、60年代、70年代にNATOの核政策に携わった実務家、政治家のオーラル・ヒストリーを実施するために、候補者の選定を行う。
②定例研究会の拡充:これまで、平成25年度、26年度で計6回の公開研究会を行ってきたが、今年度はこれをさらに拡充し、研究会の回数を増やしていく。内容的にも、これまでの研究会では欧州の核問題の専門家を中心に講演、報告を依頼してきたが、今年度からは、アジアの核問題や日本政治外交史の専門家にも報告を行ってもらい、本研究の目的である核の「1968年体制」成立過程の解明を、より多角的・立体的な視点から進められるようにしていきたい。また、可能であれば海外の研究者を招聘し、意見交換を行いたい。
③これまでの研究成果の発表(学会報告、論文発表):本年12月5-6日の国際安全保障学会2015年度年次大会(慶応義塾大学三田キャンパス)でセッションを企画し、これまでの研究成果を発表する準備を進めている。報告者は、小窪千早(静岡県立大学)、合六強、小林弘幸(関東学院大学非常勤講師)を予定している。ここでは、研究会外部の研究者に討論者を依頼するとともに、研究者、実務家に幅広く参加を呼びかけ、討論を行いたい。また、2014年度日本国際政治学会の部会「NATO 核共有制度の起源――1956-1957 年の同盟危機を中心に」での報告をもとに論文を執筆し、『国際政治』等の国内学会誌への掲載を目指して投稿を行う。それ以外にも、国内外の学会誌、専門誌への掲載を目指して、論文を準備していきたい。
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Causes of Carryover |
予定していたイギリス等での資料調査が都合により行えなかったため、次年度使用額が生じた。 岩間陽子が予定していたドイツ・ベルリン外務省文書館での資料調査は、予定の期間が、現地見本市と重なり、ホテル代が予算をはるかに超過するため、次年度に繰り越すこととしたため、その分残額が生じた。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
次年度使用額は、平成27年度請求分の研究費と合わせて、平成27年度の海外資料調査に使用する。渡航先は、英国公文書館、ドイツ外務省文書館を予定している。また、合わせてオーラルヒストリー対象者との事前調査も行いたい。
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Research Products
(5 results)