2016 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
25285053
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Research Institution | National Graduate Institute for Policy Studies |
Principal Investigator |
岩間 陽子 政策研究大学院大学, 政策研究科, 教授 (70271004)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
小窪 千早 静岡県立大学, 国際関係学部, 講師 (00362559)
川嶋 周一 明治大学, 政治経済学部, 准教授 (00409492)
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Project Period (FY) |
2013-04-01 – 2018-03-31
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Keywords | 政治学 / 国際関係 / 安全保障 / 核不拡散 / 核戦略 / NATO / NPT |
Outline of Annual Research Achievements |
平成28年度は2回の公開研究会を開催した。28年度第1回の公開研究会(2016年5月14日)では友次晋介(広島大学平和科学研究センター准教授)氏が「ニクソン・フォード政権期の核不拡散政策と多国間濃縮・再処理構想-帝政イラン・日本・韓国・パキスタン」と題する報告を行った。第2回公開研究会では鈴木一人氏(北海道大学公共政策大学院教授)が「欧州の原子力産業」と題する報告を行った。2回の研究会により、核不拡散と原子力の関係について、知見を深めることが出来た。
また、2017年3月1日、2日の2日間にわたり、国際会議「NPT締結前後の核・原子力の選択」を開催した。国際会議では日本国内のみならず、アメリカ、イギリス、カナダ、フランス、ドイツからも研究者を招聘し、報告と討議を行った。会議の目的は、核不拡散条約が締結された1960年代後半、1970年代に西側諸国が核をめぐって行った決定の全体像を明らかにし、各国が選択した様々な技術の組み合わせについての理解を深めることであった。2日間にわたって行われた報告と議論により、以下の諸点が確認出来た。
①NPT締結前後に各国が選択した政策の実態:NPT締結前後に各国が核兵器や原子力についていかなる決定を行ったのか、各国の専門家による報告と討議を通じて、その実態を確認することが出来た。 ②各国の選択の背後にあった要因の相違:各国が選択した政策の実態が明らかになるとともに、国ごとの相違も浮き彫りとなった。多くの報告や議論で共通して強調されていたのは、各国の「国内政治」に着目することの重要性である。各国の「国内政治」はそれぞれの国が核兵器や原子力についてどのような決定をしたのかに、大きな影響を与えたのである。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本研究の目的は、1960年代に成立した核の不拡散と抑止の体制を冷戦の中の「1968年体制」と位置付け、NATOにおける核兵器の共有(核共有)および、核兵器の使用に関する協議(核協議)制度がどのように成立し、運用されてきたのかを、外交史・国際関係史の手法を用いて明らかにすることである。
これまで4年間のプロジェクトを通じて、10回を数える公開研究会を実施し、NATOにおける核共有・核協議制度成立の実態に、相当程度、実証的に迫ることが出来た。特に平成28年度は海外からも研究者を招聘した国際会議、「NPT締結前後の核・原子力の選択」を開催し、プロジェクトのこれまでの研究成果を整理し直すとともに、不足していた部分を補足し、核共有・核協議制度成立の全体像をより詳細に把握することが出来たと言えるであろう。研究の最終的な成果として刊行予定の著書についても、全体の構成、枠組み等を確定し、原稿の準備を進めている。
以上に鑑み、本研究は当初の研究目的に関して、おおむね順調に進展していると評価できるであろう。
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Strategy for Future Research Activity |
本研究は、本来平成28年度に終了予定であったが、平成29年2月に開催を予定していた国際会議が、出席者都合により3月に延期されたため、29年度にも作業が発生した。具体的には、当該国際会議に提出されたペーパーを、国際出版に向けて準備中であり、現在翻訳、編集、ネイティブチェックなどの作業を進めている。作業は29年度中に終了し、2018年にNPTの50周年にあわせて出版予定である。 本研究は平成29年度より基盤研究(A)「核不拡散体制の成立と安全保障政策の再定義」に移行し、これまで中心的に検討してきたNATO加盟国に加え、日本をはじめとするアジア諸国等も含めた研究を実施していく。具体的には、以下を予定している。 ①「不拡散体制研究プロジェクト」の立ち上げ:研究代表者・岩間の所属するGRIPSに「国際不拡散体制研究プロジェクト」を立ち上げる。メンバーによる定例研究会を開催し、不拡散分野における互いの知見と問題意識を共有していく。年度ごとに目標を定め、適切な研究者を招いて研究会を行う。 ②関係資料の収集・整理、海外一次資料状況の調査:すでに米欧の1960年代の核・原子力政策についてはGRIPS図書館を中心に、デジタル史料と二次文献の蓄積が一定程度出来ているところ、これをさらに日本とアジア、1970年代まで拡大して、研究拠点にふさわしい資料の蓄積を行う。 ③日本のオーラル・ヒストリープロジェクト開始:NPT交渉、署名、調印の際に主力になって働いた日本の外交官数名にはすでに連絡が取れており、できるだけ早期にインタビューを始める。 ④国際ワークショップの開催:同盟国として米国の拡大抑止を得ることの出来ない中立諸国は、どのように考えて非核保有国に留まり、NPTに署名したのか。まずは比較的研究が進んでいるスウェーデンの研究者を招聘し、国際ワークショップを開催する。
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Causes of Carryover |
本来2月に開催するはずであった会議が3月開催となったため、ペーパーの提出やそれに伴う作業が28年度中に完了しなくなってしまった。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
次年度使用額は、平成28年度に行った国際会議の内容を英文出版するに際し、ネイティブ・チェック、翻訳等の謝金、人件費として使用する予定である。
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Research Products
(4 results)