2015 Fiscal Year Annual Research Report
中国とインドの社会経済的重層性と技術・技能の高度化:後発超大国のイノベーション
Project/Area Number |
25285086
|
Research Institution | Ryukoku University |
Principal Investigator |
大原 盛樹 龍谷大学, 経済学部, 准教授 (50401443)
|
Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
加藤 篤史 青山学院大学, 経営学部, 教授 (00286923)
岡田 亜弥 名古屋大学, 国際開発研究科, 教授 (00313982)
木村 公一朗 独立行政法人日本貿易振興機構アジア経済研究所, その他部局等, 研究員 (10466071)
伊藤 亜聖 東京大学, 社会科学研究所, 講師 (60636885)
加藤 弘之 神戸大学, 経済学研究科(研究院), 教授 (70152741)
日置 史郎 東北大学, 経済学研究科(研究院), 教授 (80312528)
|
Project Period (FY) |
2013-04-01 – 2017-03-31
|
Keywords | 中国 / インド / イノベーション / 技術 / 産業発展 |
Outline of Annual Research Achievements |
中国、インドの両大国のイノベーションのあり方の特色を、その社会的な特質との関わりから探ってゆくのが本研究の目的であった。 プロジェクトの3年目の本年は、日本の研究分担者に加え、中国とインドの共同研究者を加えた成果の報告を重点的に行った。2015年8月に北京で、11月に京都でそれぞれワークショップを行った。そこで論じられた主なテーマは、(1)政府の技術促進制度がイノベーションに与える影響と、(2)需要の質がイノベーションに与える影響であった。政府の技術促進策については純粋な政府支出というより、国内外の企業が起業と協業の中でイノベーションを重層的に続けるエコシステムの形成の一翼を担う役割が注目された。エコシステムの投資者としてだけでなく、環境規制のような新しい技術要求をビジネスサイドとともに作り出してゆく点により注目が集まった。政府と企業群の一体性がより強い中国でこの面の効果がより高く、そうでないインドでより弱い傾向がある。需要の質の影響については、中国では政府が国有企業等を通じて戦略的な重点技術に対して設備投資需要を喚起し、国内企業により多くのイノベーションの機会を提供していること、一方、インドでは供給面に比べて投資需要面でのイノベーション促進の役割を多く果たしていないことがわかった。中国では、設備投資の新技術の導入で外国技術と競わせる形で国内供給企業に技術投資を促しており、その試みは必ずしも短期的な効果を生むわけではないが、長期的に蓄積されることで次のイノベーションを生む土壌となっている可能性が示唆された。 3年間の研究を通じて中印での政府とビジネスのつながり方の違いがイノベーションに影響を与えていることに注目が集まっているが、ただし、まだ十分な実証ができている段階にはない。さらなる充実を図る必要がある。
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
4: Progress in research has been delayed.
Reason
当初想定していた社会的格差や階層性の相違がイノベーションに与える影響については、まず企業の供給側の側面からアプローチしたが、かんばしい成果が得られなかった。中国とインドで得られるデータが大きく異なる(中国側はより詳細なデータが得られるがインド側はそれが難しい)ことも理由であった。そこでアプローチを修正し、インタビュー等でより観察がしやすい政府の役割と主要企業の関係に注目することとした。2014年度末と2015年度夏にそのために中国とインドで企業調査を実施した。その成果に基づき、また、2015年度に購入したインドの企業データベースと中国の市場データを活用して、研究の完成を目指したい。
|
Strategy for Future Research Activity |
より具体的な成果を出せるように、中国とインドにおける企業のイノベーションに与える中央/地方政府の役割に重点を当てる。供給面におけるイノベーション促進のエコシステムの形成と、新技術の投資需要に対する政府の関与の仕方に注目する。特に地域エコシステムの形成と国有企業等の主要企業の技術・設備購入時の政府関与の仕方の比較である。具体的なケースとそのインプリケーションについてはすでに調査で得ているので、中印の客観的なマクロ/ミクロデータを合わせて、中印の産業発展におけるイノベーションの違いについて統合的な成果をまとめる。
|
Causes of Carryover |
研究の方向性を変更することとなり、当初予定していた規模での現地調査ができなかった。2014年末と2015年夏にインドと中国で調査をしたが、分担者の多くが参加できず、旅費が特に余った。当初購入を予定してたインドのセンサスデータだが、1年先延ばしして最新のものを購入することにした。
|
Expenditure Plan for Carryover Budget |
研究成果を出すのが遅れており、あと1年かけて研究成果をまとめる必要がある。未購入のインドのセンサスデータを購入し、昨年度購入したインドの工業統計データ(ASI)とあわせて実証分析を進める。その際にデータ処理のために臨時雇用を使用する。今年度中に成果をまとめるワークショップを実施する。
|
Research Products
(15 results)