2015 Fiscal Year Annual Research Report
「グローバル化を支える技術移転の在り方に関する研究」-自動車産業のブラジル展開ー
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25285118
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Research Institution | Kagawa University |
Principal Investigator |
塚田 修 関東学院大学, 経済学部, 研究員 (90633884)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
田村 豊 愛知東邦大学, 経営学部, 教授 (40340400)
清 ショウ一郎 関東学院大学, 経済学部, 教授 (80171312)
板倉 宏昭 香川大学, その他の研究科, 教授 (80335835)
伊藤 誠悟 武蔵大学, 経済学部, 教授 (80612275)
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Project Period (FY) |
2013-04-01 – 2017-03-31
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Keywords | 自動車産業 / サプライチェーン / 新興国市場 / 技術移転 |
Outline of Annual Research Achievements |
2015年は第4回目と第5回目となるブラジル出張を実施した。第4回目は3月2日より14日までの2週間、日系自動車企業のT1であるホンダロック、関自工、アイシン、東海理化、デンソーなどど、その部品供給会社であるT2のローカルカンパニーを6社訪問調査した。また、ブラジル自動車工業会(ANFAVEA)と部品工業会(Sindipecas)を訪問し資料の収集に努めた。第5回は7月13日から25日の2週間であった。ホンダ以外に、今回初めて欧米系であるVWを訪問し最終組み立てラインを見学した後、部品購買担当部長に面談し、部品調達の課題を聞くことができた。VWでは部品企業育成よりは短期の価格中心の購買政策が実施され文献による情報と一致していた。 日系T1であるG-TKTはホンダのプレス部品供給会社である。労賃上昇の環境下で利益を出すことに苦慮していた。T2がブラジル国内に育っていないために、為替が上昇、輸入価格が高騰し収支を圧迫する構造である。首都ブラジリアへ行き、ブラジル経済産業省を訪問し、自動車行政について話合うことが出来た。こちらから日本の東北におけるトヨタの部品供給社の官民一体となった育成事例を説明した。サンパウロ大学、FGV大学、ESPM大学を訪問し、ブラジル自動車産業の課題について話し合うことが出来た。構造的な課題として、いわゆるブラジル・コストと呼ばれる3要因がある。一つ目は、継続的に上昇する労働賃金、二つ目は、質に問題があり競争原理が働かなく価格の高い原材料、三つめは高税負担である。 6月10日から12日パリで開かれたGERPIS学会では、日本における自動車ディーラーの先進的活動について報告した。今後ブラジルでの自動車販売活動を調査するプロジェクトを申請することで自動車産業全体の解明に拡大したいと考えている。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
研究調査は過去5回の出張で概要が捉えられ始めたが、距離の遠さ(片道30時間近い飛行時間)と費用(物価は日本とほぼ同じ)の高さに直面し厳しい状態である。一つの工場を訪問するにも片道2時間程度かかり効率が悪い。しかし、ブラジルの協力研究者たちの支援で企業訪問もここまでに60社を達成し現状の把握に成功していると言える。 また現地の政府機関であるJETROやJICA、そして伯日商工会議所の自動車部会の協力を得ている。これらの機関は蓄積された情報を持っているので重要である。ローカルカンパニーを訪問する時は英語が通じないことが多いのでポルトガル語の習得に勤めている。ポルトガル語を読むことでANFAVEAや工業会(FIESP)の資料を読むことで情報の収集を補っている。
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Strategy for Future Research Activity |
来年度は4年間研究期間の最後の年になるため、これまでの調査研究の結果をまとめる本を出版する予定である。日本とブラジルの協力または共同研究者に分担してもらい執筆する。 ブラジルの自動車産業にはいくつの課題があることも今までの研究で分かってきた。一つは、前述したブラジル・コストと呼ばれる高コスト体質、そしてもう一つは生産性の問題である。過去10年間(2002-2012)でブラジルは0.6%の上昇で先進・新興国12か国中最低であった。各社とも生産性の向上には関心があり、特にトヨタ生産方式については日本からの支援を求める声が多かった。今回企業のトヨタ生産方式の浸透度を測定する調査票を作成したので次年度配布して定量的に解析する予定である。
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Causes of Carryover |
全体として大きな差とは言えない。 旅費の一部を個人のマイレージで補うなどして次年度に多少の余裕を残した。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
次年度は最終年度になるために本の出版を計画している。
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