2014 Fiscal Year Annual Research Report
東日本大震災におけるCFWの実態調査と災害対応技術としての確立
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25285162
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Research Institution | Kansai University |
Principal Investigator |
永松 伸吾 関西大学, 社会安全学部, 准教授 (90335331)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
本田 由紀 東京大学, 大学院教育学研究科(教育学部), 教授 (30334262)
越山 健治 関西大学, 社会安全学部, 准教授 (40311774)
仁平 典宏 東京大学, 大学院教育学研究科(教育学部), 准教授 (40422357)
安藤 至大 日本大学, 総合科学研究科, 准教授 (80377126)
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Project Period (FY) |
2013-04-01 – 2016-03-31
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Keywords | Cash for work / 緊急雇用創出事業 / 労働市場 / 復興事業 / レジリエンス |
Outline of Annual Research Achievements |
被災地における雇用状況に関して、以下の調査を行った。 第一の就労者調査については、緊急雇用創出事業により実施されたいくつかの事業(岩手県大槌町、釜石市、大船渡市における仮設住宅支援員事業、および石巻市における行政事務支援事業など)について、すべての被雇用者の属性データを入手し、分析をおこなった。その結果、いくつかの重要な事実が明らかになった。まず、緊急雇用は子育て世帯など、扶養家族を多く抱える人には届いていないことが明らかになった。加えて、大槌町など被害が激甚な地域においては、緊急雇用に就業する直前の失業期間が極端に長いことから、専業主婦層など従来労働市場に参加していなかった人々が主に雇用されていることが明らかになった。この結果は、緊急雇用がそもそも雇用の継続を意図したものであったにも関わらず、実際に雇用されているのは労働市場にいなかった人材であったというパラドックスを示している。 第二の労働市場調査については、被災三県についてのデータの入力が完成した。 第三の復興状況調査については、大規模な復興事業を行っている地域ほど人口流出が著しいという印象を持ったため、これについての実証的な分析を行った。その結果、面的整備事業規模は震災以降の人口増加率に負で有意であることがあきらかになり、面的整備をより多く行っている地域ほど人口流出が大きいという結果が明らかになった。このことは、復興事業が労働供給を制約している可能性を示唆するものである。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
就労者調査、復興状況調査については、ほぼ計画した通りに研究が進捗しており、十分な成果を得ていると評価できる。 しかしながら、労働市場調査については予定していた労働供給曲線の推計を行うことができなかった。これは、入手したデータが内部資料であったため、データのエラーチェックが十分に行われたものではなかったことに起因している。しかも、研究者の側ではそのチェック実施することはできない。このため、その処理をどのように行うかの検討に時間を要した。但し、最終的には一定割合のデータにエラーが生じていると仮定して統計的に処理することで方向が固まったため、研究の進捗の障害とはならない。
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Strategy for Future Research Activity |
引き続き、いくつかの地域における緊急雇用の就労者についてのデータ収集に努める。また、原発災害の特殊性を明らかにするため、福島県楢葉町をフィールドとして、同地域における雇用の復興状況についても調査を行う。 労働市場調査については、得られたデータを元に、被災地における労働供給が時系列とともにどのように変化したかについて引き続き分析を行う。またこれらの成果を報告書としてまとめる。
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Causes of Carryover |
労働供給曲線の推計作業の前提となるデータに無視できないエラーが多数見られたため、それらの処理方策を検討した結果、推計作業が来年度にずれ込んだことが理由である。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
推計作業に伴う業務の外注費およびPCの購入費用として用いる。
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