2013 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
25285163
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Research Category |
Grant-in-Aid for Scientific Research (B)
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Research Institution | Matsuyama University |
Principal Investigator |
山田 富秋 松山大学, 人文学部, 教授 (30166722)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
種田 博之 産業医科大学, 医学部, 講師 (80330976)
蘭 由岐子 追手門学院大学, 社会学部, 教授 (50268827)
佐藤 哲彦 関西学院大学, 社会学部, 教授 (20295116)
本郷 正武 和歌山県立医科大学, 医学部, 講師 (40451497)
松岡 一郎 松山大学, 薬学部, 教授 (40157269)
中塚 朋子 就実大学, 人文科学部, 講師 (50457131)
新ヶ江 章友 名古屋市立大学, 看護学部, 研究員 (70516682)
田代 志門 昭和大学, 医学部, 講師 (50548550)
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Project Period (FY) |
2013-04-01 – 2016-03-31
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Keywords | 薬害教育 / 医療社会学 / レギュラトリー・サイエンス / 薬害 |
Research Abstract |
平成25(2013)年度においては、8月と2月に研究合宿を開催し、研究分担者の役割を明確にしながら、各自の調査分野の進捗状況について相互に報告した。 今年度特に重視したのは、薬学分野における薬害の概念の使い方の状況を明らかにすることである。そのため「いしずえ」に研究協力を要請し、サリドマイド薬害について、その歴史的経緯、薬害の薬理、被害者の救済などについてレクチャーを受けた。また、主として医療社会学の分野における、医療化(メディカリゼーション)の概念の流れをくむ、ファーマスーティカライゼーション(薬物化)の議論について、欧米の議論を紹介し、集中的に議論した。 また、HIV感染被害者、遺族、保因者、血液事業関係者について継続的に聞き取り調査を行った。特に1980年代における血液事業者の動向に注目した。次に、サリドマイド、スモンなど他の「薬害」問題について、現在手に入る資料を調べたり、インタビュー対象者の候補を選定した。最後に、松山大学薬学部において、既存の授業のコマを利用しながら、「薬害教育」実践を実験的に行った。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
薬害の分野として、これまで継続的に研究してきた薬害HIV感染被害問題だけでなく、サリドマイド薬害について、歴史的経緯を踏まえて詳細な情報を得ることができた。また、製薬メーカーや薬害に関わる当事者たちに、当初予定していたインタビュー調査が順調に遂行できた。 さらに、薬学分野における薬害の捉え方について現状把握ができただけでなく、薬害をめぐる医療社会学的な議論を欧米文献も含めて把握することができた。
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Strategy for Future Research Activity |
第一に、あらためて「薬害HIV」訴訟運動をめぐる言説を分析の俎上に載せることで、「加害-被害図式」がどのように受容され、さらにこんにちの「薬害教育」にどのように浸透しているのかを考察する。 第二に、サリドマイドやスモンなどのHIVよりも先行した「薬害」問題事例との比較検討を行う。たとえば、現在進行中の血友病保因者への聞き取りは、サリドマイド児を出産した親との比較を通して、「薬害」問題から広く「障害児をもつ親」の考察へと一般化することができる。また、HIV感染の原因となった非加熱濃縮血液製剤の回収の動きを、スモンの原因となった整腸剤キノホルムの回収の動向と比較検討することで、その後の薬事政策の変遷と「薬害」訴訟運動の果実を考察することができよう。 第三に、「医薬品の規制」という切り口からの「薬害」概念の考察を行う。今年度は、血液凝固因子製剤の臨床治験の課題、効能の測定のあり方、薬事法の改正などの法制度の変遷への寄与などについて検討を進めていく。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
当初計画していたインタビュー調査について、予定していたすべてを行うことができなかったことが一つの理由である。さらにまた、年度末の3月下旬と年度初めの4月初旬に実施した調査の旅費支出の余裕を作るため、次年度使用額が生じた。 今年度は、5月にオーストラリアで開催される世界血友病連盟(WFH)大会に参加して、研究成果の一部を報告するため、昨年度に比較して旅費が多く必要になる。また、血液製剤によるHIV感染やサリドマイドだけでなく、他の薬害被害者にインタビューを行う予定なので、次年度使用額をそれらの旅費に充当する計画である。
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Research Products
(3 results)