2014 Fiscal Year Annual Research Report
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25285176
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Research Institution | Hokkaido University |
Principal Investigator |
竹澤 正哲 北海道大学, 文学研究科, 准教授 (10583742)
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Project Period (FY) |
2013-04-01 – 2016-03-31
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Keywords | 文化進化 |
Outline of Annual Research Achievements |
本年度は、世代間重複伝達パラダイムに基づいた一連の実験を実施し、技術が世代から世代へと伝達される中で累積的に進化していく状況を再現した。具体的には実験室内で累積的文化進化を再現した過去の研究に基づき、与えられた素材を用いて制限時間内にペアが共同でできるかぎり高い構造物を作成する実験を実施した。同一のペアが繰り返し課題を実施するペア条件と、個人が次々と入れ替わり技術や情報が世代から世代へと伝達されていく状況を模した伝達条件の2つを設定し、複数の実験を実施した。実験を通じて、技術が伝達されていく条件においては、ペアが繰り返し試行錯誤を通して技術を向上させていく条件と同程度に技術が向上していくこと、だが前者においては技術がより単純な方向へと進化する現象が繰り返しロバストに観察された。これは伝達という過程において、あまりにも複雑な技術や知識は伝達され得ないこと、すなわち伝達という過程が自然淘汰と同様のふるいとしての機能を技術に対して持つことを示唆すると考えられる。従来の実験研究では、情報や技術が世代から世代へと伝達される中で漸進的に向上していく現象、すなわち文化の累積的進化を実験室内で再現することにのみ注目が集まっていたが、本研究は世代間の伝達を通して情報や技術が一定の構造を持つようになることを見出したものである。こうした伝達を通じた構造の発生という現象は、言語進化に関する理論研究では既に指摘されているが、それ以外の情報や知識において同様の現象が発生することは見出されていなかった。本研究の成果に基いて英語論文を準備中である。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
期待通りの成果が得られており、特に今後の研究の進展に影響を与える要因は見当たらない。
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Strategy for Future Research Activity |
来年度も予定した研究、すなわち、個人では解決不可能な課題を用いた累積的文化進化の理論及び実証研究を実施する予定である。
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Causes of Carryover |
実験に利用を想定していたパソコンなどの機器の購入が予定額を下回ったため
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
最終年度であるため、研究成果の発表及のための旅費、あるいは、研究成果を議論するためのワークショップの開催費用として利用する予定である
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Research Products
(9 results)