2014 Fiscal Year Annual Research Report
地域をつなぐ自省的な「歴史認識」形成のための基礎的研究-東北地方を基軸に-
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25285241
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Research Institution | Iwate University |
Principal Investigator |
今野 日出晴 岩手大学, 教育学部, 教授 (10380213)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
外池 智 秋田大学, 教育文化学部, 教授 (20323230)
河西 英通 広島大学, 文学研究科, 教授 (40177712)
小瑶 史朗 弘前大学, 教育学部, 准教授 (50574331)
伊藤 大介 東北大学, 学内共同利用施設等, その他 (70400439)
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Project Period (FY) |
2013-04-01 – 2017-03-31
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Keywords | 歴史認識 / 歴史教育 / 東北 / 歴史実践 / 記憶 / 国際研究者交流 中国 |
Outline of Annual Research Achievements |
本年度は,9月に日中両国の研究者によって,中国東北部(旧満州)の現地調査をおこなった。宥和と和解の側面に焦点をあわせて,まず,「撫順戦犯管理所」,「中国残留孤児を育てた養父母関する展示室」等の視察をおこない,次に,黒竜江省の「日本人公墓」(満州移民の集合墓地・慰霊施設)や岩手依蘭開拓団の開拓村跡地,土龍山事件記念碑等の現地調査をおこない,<歴史実践の場>として,歴史教育プログラムの構想を具体化することができた。さらには,東北師範大学において,東北アジア歴史認識研究会(学術交流会「日本歴史研究中的中国東北問題」)を開催し,「<歴史実践>の場としての『中国東北部』」(今野)と「満洲移民史研究の現状と課題」(伊藤大介)の報告をもとに,感情的な歴史記憶の問題に関して議論を深めた(その状況は,東北師範大学のサイトにも掲載されている(http://sohac.nenu.edu.cn/News/WebNewsDetail.aspx?newsID=470)。 次に,11月には,第63回全国社会科教育学会全体シンポジウムにおいて,研究代表者が,「開かれた歴史教育実践へ-誰の声に耳をすませるか-」として,地域と地域をつなぎ,自省的な新しい歴史認識を形成するための方向性を提案した。それは,社会科教育の研究者が中心となって,日本と中国の異なる専門の研究者が,研究分野の垣根をこえた協働によって,<歴史実践>という方法論を軸に,加害と被害の記憶,「東北」意識などのを分析検討し,「感情の記憶」を包み越えようとする,これまでの東北アジア歴史認識研究会の研究活動の意味と意義を明らかにしようとしたものである。報告要旨は,以下のサイト(http://jerass.jp/?p=1439)。9月の調査の概要や日中の歴史認識の現在のおける課題に関しては,それぞれ研究成果をを公にしている。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本研究は,「感情の記憶」を包み越えるために,日本の東北地方と中国東北部(旧「満州」)の地域をつなぐさまざまな「生きられた経験」に着目して,<歴史実践の場>を措定し,それを軸に歴史教育プログラムを作成・実践するものである。平成26年度には中国東北部の<歴史実践の場>を共同で調査し,歴史教育プログラム(ワークショップ・プログラム)作成のための前提をつくることができた。また,第3回東北アジア歴史認識研究会では,中国の大学院生も含めた若い研究者の参加も得て,感情の記憶を包みこえるための議論を共同で深めることができた。さらに,全国社会科教育学会全体会シンポジウムで,中間報告をおこない,本研究が,日本と中国のあいだの「歴史認識」問題に対して,新たな可能性をひらくものとして提案した。しかし,歴史教育プログラムについては,当初の計画に比して,具体的なかたちにまで仕上げることができず,大まかな構想にとどまっている。それが次年度の課題として残っている。以上のことから,2年目の進捗状況としては,課題も残っているが,おおむね順調に進展していると判断される。
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Strategy for Future Research Activity |
平成26年度には,これまでの<歴史実践の場>を対象に,歴史教育プログラム(ワークショップ・プログラム)を具体的なかたちに仕上げて,検討の対象にしたいと考えていたが,実際には,大まかな構想にとどまった。そのため,平成27年度は,当初の予定を若干修正し,前半には社会科教育研究者を中心にして集中敵に歴史教育プログラムを研究開発する。具体的には,中国から東北地方へ連行された中国人を対象にした(花岡事件)ものと,東北から兵士として,満洲移民として中国にわたった日本人を対象にしたものの二つのプログラムを考えている。これらについては,補足的なフィールドワークも含めて,集中して共同究研究会をおこなうことで,研究の進度を調整する計画である。また,開発したプログラムについては,当初は,ただちに中国で学生に実施することを考えていたが,日本において,中国人留学生を対象に,試行的な実践をおこない,その検討を通して,修正を加え,プログラムの精度をあげることを計画している。
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Causes of Carryover |
平成26年度末に,社会科教育研究者によって,具体的な歴史教育プログラムの研究開発をおこなうための研究会を複数回予定していたが,日程等の都合により,開催することができなかった。そのため,研究会開催のために予定していた旅費等の額を次年度使用額として残すこととした。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
平成27年度の助成事業交付申請書の「研究実施計画」,及び,上記の理由に記したように,社会科教育研究者による歴史教育プログラムの研究開発のための共同研究会の開催のために支出する予定である。
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Research Products
(17 results)