2013 Fiscal Year Annual Research Report
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25286002
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Research Category |
Grant-in-Aid for Scientific Research (B)
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Research Institution | Saitama University |
Principal Investigator |
中林 誠一郎 埼玉大学, 理工学研究科, 教授 (70180346)
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Project Period (FY) |
2013-04-01 – 2016-03-31
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Keywords | ナノ気泡 / 標準水素電極電位 / 電気化学的水素発生 / 電極触媒 / 化学平衡 / ラプラス圧 / 3重線 |
Research Abstract |
固液界面上のナノ気泡は、衝撃波(6MPa)を照射しても消滅しない超安定性を有する(Lohse PRL 2007)。ナノ気泡は、極めて高い堅牢性を持つのである。しかしながら、この超安定性の原因は確定されていない。ナノメータサイズの気泡は、表面張力により強く押し潰されるので、通常その寿命はμs程度と考えられる。超安定性を示す実験事実と従来の理論との間には、巨大な解離が存在し、表面特有のファンデルワールス相互作用などでは、到底この乖離を埋め得ない。 電気化学的に水を分解して水素ガスを発生させた。この時、電流あるいは電位を規制すれば、電極界面近傍の水素ガス濃度が制御できる。ナノ気泡は、ブクブク発生する巨視的な水素気泡の2次元核と考えられる。白金回転ディスク電極(RDE)と、プログラムされた電位走査を用いて、水素ナノ気泡を検出した。白金電極を3000rpmの速度で回転させながら、電極電位を銀仮参照電極に対して、-0.4V(-0.02V vs NHE)にT秒間保持する。保持状態で水素発生が5μA/cm2で進む。この間、生成した巨視的水素気泡は電極の回転により表面から離脱し、水素ナノ気泡のみが表面に残る。保持時間Tを変化させて、表面に残存する水素ナノ気泡を酸化電流として、電気化学的に検出した。水素発生T秒後、電極電位を三角波走査して、酸化電流を測定する。電位保持状態では、水素原子が最外層白金表面を覆っている(UPD水素原子)。第1走査では、UPD 水素原子と水素ナノ気泡が電気化学的に酸化されQ1+の電気量が得られる。第2走査以降は、ナノ気泡発生の保持時間Tがゼロであるから、UPD水素の酸化のみ、Q2+として得られる。Q1+とQ2+の電気量差から、ナノ気泡中の水素量を求めた。このデーターを精査して、ナノ気泡が水素ガスを捕獲する捕獲率を,保持時間の間数として求めた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
1: Research has progressed more than it was originally planned.
Reason
電気化学的に発生させた水素ガスが、電極表面にナノ気泡として捕獲される捕獲率を電極表面の粗さの関数として求めた。白金平板電極を電位走査により表面積を増加させあらすと、捕獲率は増加するものの、粗さをさらに大きくしても飽和する傾向が得られた。この事実は、フラクタル化した表面に、捕獲されるナノ気泡の大きさに下限があり、表面荒れが、この下限値よりも大きくなってもナノ気泡の安定化に寄与しないことを示す初めての結果である。この事実は、CheccoらはBrookhaven LabのSRをもちいて、Siナノピット中に捕獲された気泡をX線散乱から明らかにし、ピット中の気泡はより高い安定性を持つことを示した実験事実と整合的である。
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Strategy for Future Research Activity |
標準水素電極反応が不均一反応であることを示すことができた。不均一反応であることを考慮すると、交換電流は非対称となる。ナノ気泡によりカソード交換電流は減少し、アノード交換電流は増加する。この時、動的平衡電位(実験値)は、より負に移動する。すなわち、実験で用いられるNHEの絶対電位は、IUPAC勧告値(4.44eV)よりも小さな値となるはずである。 平衡電位より大くずれた領域では,従来用いられたTafel解析が原理的に可能である。しかしながら、平衡電位近傍の振る舞いは、Tafel解析から大きく外れ、固液気の3重線上での電気化学反応を考慮に入れる必要がある。昨年度の実験から、表面荒れによりナノ気泡捕獲率が飽和する領域があることは、100年以上前にKohlrauschにより白金黒を用いることが推奨された事実と調和的である。 本年度では、3重線上での電気化学反応を考慮に入れた動的平衡モデルを用いて、実験で用いられるNHEの絶対電位は、IUPAC勧告値(4.44eV)からずれる原因を明らかにする。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
本年度では、回転電極を用いた実験に研究を集中させ、電気化学的な事象を明らかにした。その結果、原子間力顕微鏡に関する測定が予定よりも少なくなった。その結果、原子間力顕微鏡に関わる比較的高額な消耗品の購入が減少し、残額が増えた。 原子間力顕微鏡測定に比べて、電気化学測定の再現性は高い。そこで、電気化学測定により注力して、表面の粗さとナノ気泡の生成、消滅に関する測定を進めた。その結果、疎面上では、ナノ気泡の安定性は増加するものの、ナノ気泡の大きさに下限値(それ以上小さくなると気泡が安定に存在できない)あるため、表面の粗面化により、捕獲気泡量に上限が認められた。次年度では、より原子間力顕微鏡測定に注力して、電気化学測定から得られた事実を画像観測から明らかにする。 次年度では、原子間力顕微鏡の解像性をより向上させるため、振動除振をアクティブ除振台を購入して、向上させる。併せて、原子間力顕微鏡測定用電気化学セルを改良して、電解液のリークを押さえ、解像性の高い画像収集に努める。このとき、開放型の電気化学セルでは、大気からの気体溶解が実験結果を曖昧にするので、気密型の測定が可能となるセルに改良向上させる。 次年度では、原子間力則手により注力するため、探針・除振・電気化学セルを改良して、測定の精度を向上させる。このために、繰り越した資金を使用する予定である。
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Research Products
(6 results)
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[Journal Article] High Contrast Visualization of Cell-Hydrogel Contact by Advanced Interferometric Optical Microscopy2014
Author(s)
Matsuzaki, T (Matsuzaki, Takahisa); Sazaki, G (Sazaki, Gen) ; Suganuma, M (Suganuma, Masami) ; Watanabe, T (Watanabe, Tatsuro) ; Yamazaki, T (Yamazaki, Takashi); Tanaka, M (Tanaka, Motomu) ; Nakabayashi, S (Nakabayashi, Seiichiro); Yoshikawa, HY (Yoshikawa, Hiroshi Y.)
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Journal Title
JOURNAL OF PHYSICAL CHEMISTRY LETTERS
Volume: 5
Pages: 253-257
DOI
Peer Reviewed / Open Access / Acknowledgement Compliant
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[Journal Article] Brief Report: Reconstruction of Joint Hyaline Cartilage by Autologous Progenitor Cells Derived from Ear Elastic Cartilage2014
Author(s)
:Mizuno, M ; Kobayashi, S ; Takebe, T ; Kan, H ; Yabuki, Y ; Matsuzaki, T; Yoshikawa, HY ; Nakabayashi, S ; Ik, LJ; Maegawa, J
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Journal Title
STEM CELLS
Volume: 32
Pages: 816-821
DOI
Peer Reviewed
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[Journal Article] Effect of Gel-Solution Interface on Femtosecond Laser-Induced Nucleation of Protein2013
Author(s)
Nakayama, S ; Yoshikawa, HY ; Murai, R ; Kurata, M ; Maruyama, M; Sugiyama, S ; Aoki, Y ; Takahashi, Y ; Yoshimura, M ; Nakabayashi, S
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Journal Title
CRYSTAL GROWTH & DESIGN
Volume: 13
Pages: 1491-1496
DOI
Peer Reviewed
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