2017 Fiscal Year Annual Research Report
Research on the Weil-Petersson metric of infinite dimensional Teichmueller spaces
Project/Area Number |
25287021
|
Research Institution | Waseda University |
Principal Investigator |
松崎 克彦 早稲田大学, 教育・総合科学学術院, 教授 (80222298)
|
Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
中西 敏浩 島根大学, 総合理工学研究科, 教授 (00172354)
須川 敏幸 東北大学, 情報科学研究科, 教授 (30235858)
佐官 謙一 大阪市立大学, 大学院理学研究科, 特任教授 (70110856)
小森 洋平 早稲田大学, 教育・総合科学学術院, 教授 (70264794)
|
Project Period (FY) |
2013-04-01 – 2019-03-31
|
Keywords | 複素解析学 / タイヒミュラー空間 |
Outline of Annual Research Achievements |
古典的なポアソン積分よる円周の自己同相写像が擬等角写像となるクラスとしてソボレフ空間 H(1/2) がある.この擬等角拡張はディリクレ積分有限なユークリッド的調和写像である.H(1/2) のソボレフノルムと拡張された写像のディリクレノルムは等しい.この空間が擬対称写像による引き戻しで閉じている(ディリクレ空間は擬等角写像による引き戻しで閉じている)ことは古典的結果であるが,この作用素が擬対称写像のタイヒミュラー位相に関して連続的に動くことの証明には多くの問題が関連している.最近の Shen によるベルトラミ微分が双曲計量に関して2乗可積分となるタイヒミュラー空間(ヴェイユ・ピーターソン計量}をもつタイヒミュラー空間)の研究では,時間に依存して変化する円周上のベクトル場の生成するフローを考察している.これは普遍タイヒミュラー空間の原点における接空間のひとつの表現であり,2乗可積分タイヒミュラー空間の接空間はソボレフ空間 H(3/2) の元がつくるベクトル場からなる.2乗可積分タイヒミュラー空間の任意の元は,このベクトル場のフローとして生成されるが,逆にフローが2乗可積分タイヒミュラー空間に属することは Figalli により予想された問題であった.Shen の理論によれば,上記の作用素の連続性がこの問題の解決を導くことになる.この理論を精査し,問題の周辺について考察した. この研究課題で扱われる写像族のタイヒミュラー空間はすべて無限次元となるが,リーマン面のタイヒミュラー空間の場合でも位相型が無限の場合は無限次元となり,有限次元の理論とは異なる現象が現れる.このような空間とそれに作用する写像類群の研究について以前からある研究成果を論文として出版した.
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
これまでの研究では,円周の微分同相写像のタイヒミュラー空間の研究をし,とくに微分がヘルダー連続となる族について,そのタイヒミュラー空間を定義し,擬等角写像を用いた普遍タイヒミュラー空間論の枠組みのなかで基礎理論を完成させた.要点は,単位円板の擬等角写像のベルトラミ微分の境界に近づくときの減衰オーダーと境界拡張の微分同相写像の微分のヘルダー指数が一致することを定量的な関係まで含めて証明したことである.微分同相写像のタイヒミュラー空間から対応する減衰ベルトラミ微分の空間への等角重心拡張で定義される切断の連続性を示し,この空間が可縮であることを証明した.この理論を基礎にして,フックス群の微分同相写像群への対称写像による共役表現の剛性と,微分同相写像群がフックス群と自明な共役をもつための必要十分条件を証明した.この条件は,2乗可積分タイヒミュラー空間のヴェイユ・ピーターソン計量を使って与えられる.また,上記共役問題を一般化するために,p 乗可積分タイヒミュラー空間に p-ヴェイユ・ピーターソン計量というフィンスラー計量を新たに導入した.今年度は,これらの成果の精密化と発展の可能性について考察したため,形となる成果はあらわれてはいないが,研究課題全体としてみれば,おおむね順調に進展していると言える.
|
Strategy for Future Research Activity |
Ghys による3次元多様体の葉層構造の理論から証明される有名な剛性定理がある.この定理をタイヒミュラー空間論から証明し,さらに必要な滑らかさのシャープな限界まで求めることを考える.微分同相写像群への表現の剛性定理としては,本研究では既に対称自己同相写像による共役の剛性,すなわち,それが内部自己共役でしかないことを証明している.対称写像とは擬対称写像の特別なクラスで,擬対称度が漸近的に1に近づくものである.この結果を擬対称写像一般による共役について考えれば Ghys の剛性定理に到達する.擬対称写像をフックス群の変形を与える成分と対称写像に分解することが議論の方針である.また,微分同相写像群の滑らかさの限界については,ヘルダー連続微分性なしには剛性定理が成立しないことが予想できる.自明な擬等角写像のベルトラミ微分の特徴付けに関する命題が未解決で残っているのが現状である.
|
Causes of Carryover |
普遍タイヒミュラー空間の部分空間に関する類似の研究をする研究者を招聘して共同研究をする予定であったが,都合により次年度に延期となった.課題の研究期間を1年延長して,この研究計画を実施する.また,成果発表のために国際研究集会に参加する.
|