2015 Fiscal Year Annual Research Report
可視光・紫外線遮光 フィルムをコートした超大型・高感度X線CCDの開発実証
Project/Area Number |
25287042
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Research Institution | Tokyo University of Science |
Principal Investigator |
幸村 孝由 東京理科大学, 理工学部, 准教授 (20365505)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
冨田 洋 国立研究開発法人宇宙航空研究開発機構, その他部局等, 研究員 (30399547)
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Project Period (FY) |
2013-04-01 – 2017-03-31
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Keywords | X線CCD / X線 / 可視光線 / 紫外線 / 薄膜 / OBF / OBL / 遮光 |
Outline of Annual Research Achievements |
今年度は、本研究で開発するCCDの実用化に向けて「①X線に対する性能評価」と,「②宇宙線に対する耐久性」について評価実験を行った。 ①はKEKのフォトンファクトリーで計4回実施し,本研究で試作したCCDに0.2-3.5keVの帯域の単色のX線を照射した。評価項目は,衛星搭載品としてCCDで天体観測をする際に必要となる,エネルギー線形性,エネルギー分解能などのレスポンスと検出効率である。エネルギー線形性はHenkeのdata baseから予想したSiのK吸収端(1.85keV)と数eVずれた帯域で応答がエネルギーに対し連続的に変化することが分かり,昨年度打ち上げたひとみ衛星のCCDの応答関数にも反映させる。検出効率はCCD表面の不感層となるAlやSiのK吸収端も含め3.5keV以下の帯域で~1%程度の精度で測定を行い,ひとみ衛星のCCDの検出効率のレファレンスとして利用している。②は,放射線医学総合研究所において,軌道上で8年相当量の6MeVのプロトンを用いて放射線損傷実験を行った。損傷によって引き起こされる性能劣化の主原因となる電荷転送効率や暗電流の経年変化を評価し,劣化の度合いは、ひとみ衛星等に搭載したCCDと同等であることを確認した。これらの結果は国際学会で発表を行い、論文としてまとめる。 また,本研究で新たに課題となったCCD素子にコーティングした可視光遮光用のアルミニウムにピンホールが生じる問題の対策を進めた。素子の表面処理に使用する薬液、コーティング前の洗浄方法などを変え,成膜時に発生するピンホールの数と,数の経年変化を調べた。現段階では,成膜時のピンホールの数を抑えることはできるが,継時的に増加することまでは十分に抑えるまで至っていない。実用化にはピンホール数の経年変化を防ぐことが不可欠であるため,次年度も引き続き検証実験を進める。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
今年度は,X線CCDのX線に対する性能評価に加えて、新たに放射線損傷実験を行い,開発しているX線CCDの実用化に向けた評価実験の大きな課題を1つクリアした。ただし、CCD素子にコーティングする可視光遮光用のアルミニウム層に生じるピンホールについては、ピンホールの発生を抑制する技術課題が残り,実用化に向けて平成28年度には解決したい。
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Strategy for Future Research Activity |
CCD素子にコーティングするアルミニウムに生じるピンホールの発生が、本研究の1番の課題である。前年度に引き続き,ピンホールの発生を抑制する手法を検討し,CCD素子に可視光遮光用のアルミニウム層をコーティングする技術を確立する。 また,軌道上での放射線損傷対策である電荷注入法を用いて,試作したCCDの性能の劣化がどの程度抑えられるか定量的な評価を行う予定である。また、本研究は、今年度が最終年度であり、これまでの研究で得られた結果をまとめ,国内外の学会や論文で発表を行う。
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Causes of Carryover |
本研究を遂行する中で、CCD素子にコーティングする可視光遮光用のアルミニウム層に生じるピンホールが新たな課題となった。このピンホールの発生を抑制する技術課題を解決することにも注力するする必要があると判断し,今年度の予算を繰り越し、試作品の製作費用に充当する。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
ピンホールの発生メカニズムは、アルミをコーティングする下地の表面構造にも依ることが分かってきている。そのため、下地として、安価なガラス基板を使うのではなく、CCDと同じSi基板を選定する必要がある。また、ピンホールから漏れる可視光がCCDへ与える影響を定量的に評価するには、コーティング方法を選定した後、実際、CCD素子にコーティングを行い、CCDに可視光を照射し、評価実験を行う。そのため、繰り越した予算で、コーティングを行った試作品のCCD素子を購入する。
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Research Products
(37 results)
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[Journal Article] Improvement of spectroscopic performance using a charge-sensitive amplifier circuit for an X-ray astronomical SOI pixel detector2015
Author(s)
Takeda, A., Tsuru, T. G., Tanaka, T., Uchida, H., Matsumura, H., Arai, Y., Mori, K., Nishioka, Y., Takenaka, R., Kohmura, T., et al
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Journal Title
Journal of Instrumentation
Volume: 10
Pages: 1-8
DOI
Peer Reviewed
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[Journal Article] Investigation of the Kyoto's X-ray Astronomical SOIPIXs with Double-SOI Wafer for Reduction of Cross-talks2015
Author(s)
Ohmura, S., Tsuru, T.G., Tanaka, T., Takeda, A., Matsumura, H., Makoto, I., Nakashima, S., Arai, Y., Mori, K., Takenaka, R., Nishioka, Y., Kohmura, T., Tamasawa, K.
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Journal Title
Proceedings of International Workshop on SOI Pixel Detector (SOIPIX2015)
Volume: C15
Pages: 1-5
Open Access
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[Journal Article] Improving charge-collection efficiency of SOI pixel sensors for X-ray astronomy2015
Author(s)
Matsumura, Hideaki; Tsuru, Takeshi Go; Tanaka, Takaaki; Takeda, Ayaki; Arai, Yasuo; Mori, Koji; Nishioka, Yusuke; Takenaka, Ryota; Kohmura, T
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Journal Title
Nuclear Inst. and Methods in Physics Research, A
Volume: 794
Pages: 255-259
DOI
Peer Reviewed
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[Journal Article] The Soft X-ray Imager (SXI) for the ASTRO-H Mission2015
Author(s)
Tanaka, T., Tsunemi, H., Hayashida, K., Tsuru, T.G., Dotani, T., Nakajima, H., Anabuki, N., Nagino, R., Uchida, H., Nobukawa, M., Ozaki, M., Natsukari, C., Tomida, H., Ueda, S.,Kimura, M.,Hiraga, J.S., Kohmura, T., et al
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Journal Title
Proceedings of the SPIE
Volume: 9601
Pages: 10pp
DOI
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[Presentation] iWF-MAXI 広天域軟X線監視ミッション2016
Author(s)
河合誠之, 谷津陽一, 有元誠, 冨田洋, 上野史郎, 三原建弘, 芹野素子, 吉田篤正, 坂本貴紀, 常深博, 幸村孝由, et al
Organizer
日本物理学会第71回年次大会
Place of Presentation
東北学院大学
Year and Date
2016-03-21 – 2016-03-21
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[Presentation] X線天文衛星搭載を目指したイベント駆動型SOIピクセル検出器の開発2016
Author(s)
武田彩希, 鶴剛, 田中孝明, 松村英晃, 伊藤真音, 大村峻一, 新井康夫, 森浩二, 西岡祐介, 竹中亮太, 武林伸明, 野田向輝, 幸村孝由, et al
Organizer
日本物理学会第71回年次大会
Place of Presentation
東北学院大学
Year and Date
2016-03-21 – 2016-03-21
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[Presentation] X線天文衛星 ASTRO-H 搭載 X 線 CCD カメラ SXI の開発の現状 XI2016
Author(s)
信川正順, 常深博, 林田清, 中嶋大, 穴吹直久, 薙野綾, 鶴剛, 田中孝明, 内田裕之, 堂谷忠靖, 尾崎正伸, 冨田洋, 夏苅権, 上田周太朗, 廿日出勇, 山内誠, 森浩二, 西岡祐介, 平賀純子, 村上弘志, 幸村孝由, et al
Organizer
日本物理学会第71回年次大会
Place of Presentation
東北学院大学
Year and Date
2016-03-21 – 2016-03-21
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[Presentation] SOI 技術を用いた新型 X 線撮像分光器の開発 13: 裏面照射型素子の軟 X 線性能評価2016
Author(s)
伊藤真音, 鶴剛, 田中孝明, 武田彩希, 内田裕之, 松村英晃, 大村峻一 (京都大学), 中島真也 (ISAS), 新井康夫, 倉知郁生 (KEK), 森浩二, 西岡祐介, 竹中亮太, 武林伸明, 野田向輝 (宮崎大), 幸村孝由, 玉澤晃希, 小澤祐亮, 佐藤将 (東京理科大学), et al
Organizer
日本天文学会2016年春季年会
Place of Presentation
首都大学東京
Year and Date
2016-03-16 – 2016-03-16
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[Presentation] SOI技術を用いた新型X線撮像分光器の開発14: Double-SOI構造素子の 性能2016
Author(s)
大村峻一,鶴剛,田中孝明,武田彩希,内田裕之,松村英晃,伊藤真音(京都大学),中島真也,(JAXA), 新井康夫, 倉知郁生, 三好敏喜(KEK), 森浩二, 西岡祐介, 竹中亮太, 武林伸明, 野田向輝(宮崎 大学), 幸村孝由, 玉澤晃希, 小澤祐亮, 佐藤将(東京理科大学), et al
Organizer
日本天文学会2016年春季年会
Place of Presentation
首都大学東京
Year and Date
2016-03-16 – 2016-03-16
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[Presentation] ASTRO-H 衛星搭載軟 X 線撮像検出器 SXI の現状2016
Author(s)
田中孝明, 鶴剛, 内田裕之 (京都大学), 常深博, 林田清, 中嶋大, 穴吹直久, 薙野綾 (大阪大学), 堂 谷忠靖, 尾崎正伸, 冨田洋, 夏苅権, 上田周太郎 (ISAS/JAXA), 廿日出勇, 山内誠, 森浩二, 西岡祐 介 (宮崎大学), 村上弘志 (東北学院大学), 幸村孝由 (東京理科大学), et al
Organizer
日本天文学会2016年春季年会
Place of Presentation
首都大学東京
Year and Date
2016-03-16 – 2016-03-16
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[Presentation] iWF-MAXI:国際宇宙ステーション搭載広天域軟 X 線監視ミッション2016
Author(s)
河合誠之, 谷津陽一, 有元誠(東工大), 冨田洋, 上野史郎, 海老沢研(JAXA), 三原建弘, 芹野素 子, 湯浅孝行 (理研), 常深博, 穴吹直久(阪大), 吉田篤正, 坂本貴紀 (青学大), 幸村孝由 (東理 大), et al
Organizer
日本天文学会2016年春季年会
Place of Presentation
首都大学東京
Year and Date
2016-03-16 – 2016-03-16
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[Presentation] ASTRO-H 搭載軟 X 線 CCD カメラの応答関数の構築 (2)2016
Author(s)
井上翔太, 林田清, 片多修平, 中嶋大, 薙野綾, 穴吹直久, 常深博 (大阪大学), 鶴剛, 田中孝明, 内 田裕之, 信川久実子, 鷲野 遼作 (京都大学), 信川正順 (奈良教育大学), 森浩二, 磯田依里, 坂田美 穂 (宮崎大学), 幸村孝由(東京理科大学), et al
Organizer
日本天文学会2016年春季年会
Place of Presentation
首都大学東京
Year and Date
2016-03-15 – 2016-03-15
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[Presentation] ASTRO-H 搭載軟 X 線撮像検出器 SXI における CTI 異常領域とその較正手法2016
Author(s)
内田裕之, 鷲野遼作, 信川久実子, 田中孝明, 鶴剛 (京都大学), 森浩二, 磯田依里, 坂田美穂, 西岡 祐介, 山内誠, 廿日出勇 (宮崎大学), 常深博, 林田清, 中嶋大, 穴吹直久, 薙野綾 (大阪大学), 堂谷 忠靖, 尾崎正伸, 冨田洋, 夏苅権, 上田周太朗 (ISAS/JAXA), 信川正順 (奈良教育大), 村上弘志 (東北学院大学), 幸村孝由 (東京理科大学). et al
Organizer
日本天文学会2016年春季年会
Place of Presentation
首都大学東京
Year and Date
2016-03-15 – 2016-03-15
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[Presentation] Development of CCD for iWF-MAXI2016
Author(s)
Tomida, H., Kohmura, T., et al
Organizer
4th Annual Symposium of the Innovative Area on Multi-messenger Study of Gravitational Wave Sources
Place of Presentation
Chiba, Japan
Year and Date
2016-02-19 – 2016-02-19
Int'l Joint Research
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[Presentation] X線天文用SOIピクセル検出器における低ノイズ化を目指した素子内新型読み出し回路と評価2015
Author(s)
武田彩希, 鶴剛, 田中孝明, 松村英晃, 伊藤真音, 大村峻一, 新井康夫, 森浩二, 西岡祐介, 竹中亮太, 幸村孝由, et al
Organizer
日本物理学会2015年秋季年会
Place of Presentation
大阪市立大学
Year and Date
2015-09-25 – 2015-09-25
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[Presentation] X線天文衛星 ASTRO-H 搭載 X線CCD カメラ SXI の開発の現状 X2015
Author(s)
平賀純子, 堂谷忠靖, 尾崎正伸, 冨田洋, 夏苅権, 上田周太朗, 木村公, 常深博, 林田清, 中嶋大, 穴吹直久, 薙野綾, 鶴剛, 田中孝明, 内田裕之, 信川正順, 村上弘志, 幸村孝由
Organizer
日本物理学会2015年秋季年会
Place of Presentation
大阪市立大学
Year and Date
2015-09-25 – 2015-09-25
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[Presentation] ASTRO-H 衛星搭載軟X線撮像検出器 SXI における電荷転送効率の評価 とその補正結果2015
Author(s)
内田裕之, 河畠久実子, 鷲野遼作, 信川正順, 田中孝明, 鶴剛(京都大学), 森浩二, 西岡祐介, 山 内誠, 廿日出勇(宮崎大学), 常深博, 林田清, 中嶋大, 穴吹直久, 薙野綾(大阪大学), 堂谷忠靖, 尾崎正伸, 冨田洋, 夏苅権, 木村公, 上田周太朗(ISAS/JAXA), 村上弘志(東北学院大学), 幸 村孝由(東京理科大学),et al
Organizer
日本天文学会2015年秋季年会
Place of Presentation
甲南大学
Year and Date
2015-09-15 – 2015-09-15
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[Presentation] ASTRO-H 搭載軟 X 線 CCD カメラの応答関数の構築2015
Author(s)
井上翔太, 林田清, 中嶋大, 薙野綾, 穴吹直久, 常深博 (大阪大学), 鶴剛, 田中孝明, 内田裕之, 信川 正順 (京都大学), 森浩二 (宮崎大学), 幸村孝由, 丹野憧馬, 玉澤晃希, 吉野祐馬, 近野貴博 (東京理 科大学), et al
Organizer
日本天文学会2015年秋季年会
Place of Presentation
甲南大学
Year and Date
2015-09-15 – 2015-09-15
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[Presentation] ASTRO-H 衛星搭載軟X線撮像検出器 SXI の検出効率測定2015
Author(s)
内田裕之, 河畠久実子, 鷲野遼作, 信川正順, 田中孝明, 鶴剛(京都大学), 森浩二, 西岡祐介, 山 内誠, 廿日出勇(宮崎大学), 常深博, 林田清, 中嶋大, 穴吹直久, 薙野綾(大阪大学), 堂谷忠靖, 尾崎正伸, 冨田洋, 夏苅権, 木村公, 上田周太朗(ISAS/JAXA), 村上弘志(東北学院大学), 幸 村孝由(東京理科大学), et al
Organizer
日本天文学会2015年秋季年会
Place of Presentation
甲南大学
Year and Date
2015-09-15 – 2015-09-15
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[Presentation] SOI 技術を用いた新型 X 線撮像分光器の開発 12: 開発の現状2015
Author(s)
松村英晃, 鶴剛, 田中孝明, 武田彩希, 伊藤真音, 大村峻一 (京大理), 森浩二, 西岡祐介, 竹中亮太 (宮崎大工), 玉澤晃希, 吉野祐馬, 近野貴博, 幸村孝由 (東理大理工), et al
Organizer
日本天文学会2015年秋季年会
Place of Presentation
甲南大学
Year and Date
2015-09-15 – 2015-09-15
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[Presentation] The Soft X-ray Imager (SXI) for the ASTRO-H Mission2015
Author(s)
anaka, T., Tsunemi, H., Hayashida, K., Tsuru, T.G., Dotani, T., Nakajima, H., Anabuki, N., Nagino, R., Uchida, H., Nobukawa, M., Ozaki, M., Natsukari, C., Tomida, H., Ueda, S.,Kimura, M.,Hiraga, J.S., Kohmura, T., et al
Organizer
SPIE
Place of Presentation
San Diego, USA
Year and Date
2015-08-09 – 2015-08-09
Int'l Joint Research
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