2015 Fiscal Year Annual Research Report
酸化物量子井戸構造を用いた強相関電子の量子化状態の研究
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25287095
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Research Institution | High Energy Accelerator Research Organization |
Principal Investigator |
組頭 広志 大学共同利用機関法人高エネルギー加速器研究機構, 物質構造科学研究所, 教授 (00345092)
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Project Period (FY) |
2013-04-01 – 2017-03-31
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Keywords | 量子井戸構造 / 角度分解光電子分光 / 強相関電子系 / 酸化物 / バンド構造 / 超構造 / フェルミオロジー / 量子化 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究では、電子論的パラメーターを制御した強相関酸化物量子井戸構造を設計・作製し、量子化状態を角度分解光電子分光(ARPES)により直接決定することで、量子閉じ込めを受けた強相関電子の奇妙な振る舞いを明らかにすることを目的としている。そのため、本年度は、下記の3つのテーマを遂行した。 ○ 伝導性酸化物SrVO3と酸化物半導体SrTiO3で構成された量子井戸構造においては、伝導層(SrVO3層)を極限まで薄くすると臨界膜厚2~3 MLで金属からモット絶縁体への転移が見られる。この転移近傍における電子状態をARPESで調べた結果、臨界膜厚近傍においてフェルミ液体から非フェルミ液体へのクロスオーバーが生じていることが明らかになった。 ○ SrVO3薄膜を面方位の異なるSrTiO3(001)面と(110)面に積層することで、面方位の異なる量子井戸を作製し、そのARPES測定を行った。その結果、強相関酸化物量子井戸構造で見られる軌道選択的量子化現象が(001)面と(110)面とで異なった振る舞いを示すことを明らかにした。 ○ 巨大磁気抵抗効果を示すLa0.6Sr0.4MnO3薄膜についてARPESを行い、フェルミ準位近傍のバンド構造にキンクが等方的に存在することを明らかにした。また、詳細な解析の結果、電子とヤンテラーフォノンとの強い相互作用がLa0.6Sr0.4MnO3の異常物性解明の鍵であることを明らかにした。
また、H27年度5月から新しいビームラインBL2A MUSASHIが稼働し始め、偏光(垂直、水平、右円、左円)を任意に変えたARPES測定が可能になった。これにより、V 3d状態の量子化状態を軌道毎に分離して決定出来るようになった。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
放射光ビームラインの立ち上げ、およびそれを用いた偏光依存角度分解光電子分光実験はおおむね問題なく遂行されている。ただし、角度分解光電子分光装置に設置するマニュピレータの設計に遅れが生じたため、偏光依存ARPESのテーマに関する遅れが見られる。そのため、基金をH28年度に繰り越し、H28年度も下記の残されたテーマを遂行する予定である。
本研究で得た偏光依存ARPESデータが膨大なため、その解析プログラムを整備に時間がかかってしまったため、遅れが生じた部分があるが、想定の範囲内である。
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Strategy for Future Research Activity |
(今後の推進方策)現在、偏光(垂直、水平、右円、左円)を切り替え可能なビームラインが稼働し始め、偏光依存のARPES測定が可能になったため、必要だが膨大なデータが取得されている。このデータを効率よく整理・解析するために、測定系と連動した解析プログラムを整備しつつ、残されたテーマを遂行する。具体的には、ARPESデータの解析プログラムの開発、および膜厚依存・偏光依存などのルーチン測定データの解析スキームを構築することで強相関電子の量子化状態の研究速度を向上させる。これにより、SrVO3/SrTiO3/SrVO3二重量子井戸構造における量子化状態の干渉についての研究を遂行する。また、これらの知見をSrTiO3やKTaO3表面で報告されている量子化状態と比較・検討することで、強相関電子の量子化に関する学理構築を行う。
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Causes of Carryover |
H27年度末にビームラインの調整とARPES装置の改良が一段落し、ようやく高輝度放射光を用いた偏光依存ARPESが可能になった。それと同時に、ARPESデータの高速解析という新たな問題が生じている。そのため、ARPESデータを効率よく整理・解析するために、H28年度においても測定系と連動した測定系および解析プログラムを整備・調整しつつ、残されたテーマを遂行する必要が生じた。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
残されたテーマである、「SrVO3/SrTiO3/SrVO3二重量子井戸構造における量子化状態の干渉についての研究」を遂行するための研究経費と、ARPES解析プラットホーム構築のための物品購入費用として使用する。
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[Journal Article] Quadratic Fermi Node in a 3D Strongly Correlated Semimetal2015
Author(s)
T. Kondo, M. Nakayama, R. Chen, J.J. Ishikawa, E.-G. Moon, T. Yamamoto, Y. Ota, W. Malaeb, H. Kanai, Y. Nakashima, Y. Ishida, R. Yoshida, H. Yamamoto, M. Matsunami, S. Kimura, N. Inami, K. Ono, H. Kumigashira, S. Nakatsuji, L. Balents, and S. Shin
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Journal Title
Nat. Comnun.
Volume: 6
Pages: 10042[1-8]
DOI
Peer Reviewed / Open Access
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[Presentation] Charge transfer at the heterointerface between perovskite oxides LaNiO3 and LaMnO32015
Author(s)
M. Kitamura, K. Horiba, M. Kobayashi, E. Sakai, M. Minohara, T. Mitsuhashi, A. Fujimori, H. Fujioka, and H. Kumigashira
Organizer
22nd International Workshop on Oxide Electronics
Place of Presentation
College de France, Paris, France
Year and Date
2015-10-07 – 2015-10-09
Int'l Joint Research
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[Presentation] Polarization dependent angle-resolved photoemission study on the (110) surface of SrVO3 films2015
Author(s)
T.Mitsuhashi, M, Minohara, M. Kitamura, R. Yukawa, E. Sakai, K . Horiba, K. Yoshimatsu, A. Fujimori, M . Kobayashi, and H . Kumigashira
Organizer
International Conference on Electron Spectroscopy and Structure
Place of Presentation
Stony Brook University, Brookhaven, New York, US
Year and Date
2015-09-28 – 2015-10-02
Int'l Joint Research
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