2013 Fiscal Year Annual Research Report
ナトリウムボース・アインシュタイン凝縮体の超精密光操作に関する研究
Project/Area Number |
25287102
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Research Category |
Grant-in-Aid for Scientific Research (B)
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Research Institution | Tokyo University of Science |
Principal Investigator |
盛永 篤郎 東京理科大学, 理工学部, 教授 (90246687)
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Project Period (FY) |
2013-04-01 – 2016-03-31
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Keywords | ボース凝縮 / 原子レーザー / 超放射BEC / 量子渦 / 原子干渉計 |
Research Abstract |
本研究は、ボース・アインシュタイン凝縮体(BEC)を光で精密に操作する原子光学の研究を行い、ボース凝縮体の応用の可能性に資することを目的とする。そのため、最初の1年で、申請者らがこれまで開発してきた多原子数ナトリウムBEC発生装置を安定に再現性良く動作できるように改良する。次に、再現性良く繰り返し発生させたBECを用いて光操作を精密に行うことで、原子レーザー発振、超放射原子干渉計、集団運動・渦発生について研究する。 平成25年度はナトリウム原子ビームを整備し、磁気トラップに多数の原子数の捕捉を行い、再現性良くBECを発生させて、以下の研究を行った。 ① 原子レーザーの研究:BECから高指向性原子レーザーを発生させるために、最初にゼーマン準位間の2光子誘導ラマン遷移による原子レーザー発振の最適条件を調べた。ラマン光のボース凝縮体への入射角度、共鳴周波数、ラビ周波数を決定し、8ms間の連続発振に成功した。また、ビーム広がり幅の測定を行った。この結果をもとに、1.7GHz高効率音響光学変調器を購入し、超微細構造間のラマン遷移での照射条件、共鳴周波数について調べ、パルス発振に成功した。 ② 超放射原子干渉計の研究:BECに赤方離調した1μ秒程度の短パルス光を照射すると、エネルギー保存則が破れ、反跳運動量の偶数倍異なる多モードBECが超放射される。今年度は直交方向に進む2本の誘導ラマン光を用いて2次元的超放射パターンを観測した。また、非破壊測定が可能な位相コントラストイメージング法について研究を進めた。 ③ 集団運動の研究:BECに非対称磁場を印加して最少磁場をms程度で早く操作することで、多様な集団運動を励起できた。特に、超流動性を示すシザース運動が観測でき、その特性を調べた。さらにこの方法を発展させ、マヨラナ遷移を用いることで、m=0の準位に量子渦の兆候を見ることができた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
ナトリウムボース凝縮発生装置を再現性良く操作することができ、8ms間の原子レーザー発振、2次元超放射発振、超流動性を示すシーザースモード、量子渦の観測ができ、次年度以降、これらについて詳細に研究する基礎ができた。
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Strategy for Future Research Activity |
① 原子レーザー:ボース凝縮体作成装置を用いて、誘導ラマン光を適用し、原子ビーム縦断面CCD観測装置を用いてハイゼンベルグ限界までのビーム品質が得られたかを評価する。また、原子レーザーの持続時間が秒近くになるような最適結合条件を求める。このようにして作成した準連続原子レーザーに対して、空間的に離れた2か所で誘導ラマン遷移を用いた原子干渉計を構成し、時間・空間コヒーレンスを評価する。 ② 超放射原子干渉計:低次運動量モードのKapitza-Dirac超放射を利用して、大面積の原子干渉計を構築、同一運動量モード状態間の干渉性能を測定する。このとき、位相コントラストイメージング法を用いて時間発展の様子を記録する。 ③ 集団運動の研究:昨年開発してきた方法で渦発生メカニズムと渦特性を評価する。さらに、BECに非対称光双極子場を照射し回転を与え、その回転周波数と量子渦発生の関係を調べ、量子化条件を得る。測定は位相コントラスト法による非破壊測定で行い、同一BECの時間発展を観測する。これにより量子渦の渦度について評価する。 (平成27年度)BECを用いた3つの光精密操作に対し、それぞれで得られた実験結果を解析し考察する。これらの結果を評価し論文にまとめ、成果の発表を行う。多原子数ナトリウム原子BECの高安定生成方法について詳細な解析を行い、報告書として取りまとめる。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
ボース凝縮させるために必要な超高真空度を得るために、長年使用してきたイオンポンプに代わり、当初新たにイオンポンプを購入して、真空度の改善を予定していた。しかし、現状のものを焼きだし操作することでで超高真空維持ができる見込みが得られた。そのため、イオンポンプの購入をしばらく延期することとした。 ボース凝縮の研究のために色素レーザーの波長測定に20年にわたり使用してきたレーザー波長計が老朽化して故障し、使用困難になった。波長の測定ができないとボース凝縮実験が困難になるので、当初予定していたイオンポンプに変わり、その予算をレーザー波長計に宛て購入し、研究を進展させることにした。
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