2015 Fiscal Year Annual Research Report
白金錯体の非共有性相互作用に基づく抗がん活性解明と創薬化
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25288027
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Research Institution | Kanazawa University |
Principal Investigator |
小谷 明 金沢大学, 薬学系, 教授 (60143913)
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Project Period (FY) |
2013-04-01 – 2017-03-31
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Keywords | 非共有結合 / 白金抗がん剤 / 錯体合成 / 細胞実験 / 動物実験 / RIトレーサー / 薬物動態 |
Outline of Annual Research Achievements |
臨床抗がん剤シスプラチンにIP6リン酸による水素結合を導入すると白金は核酸鎖内結合のみが起こることを細胞実験から示した。シスプラチンからオキサリプラチン,白金単核から多核への構造変化は白金の核酸鎖間結合を増加させ,高い抗がん活性を示すことが推定された。IP6のリン酸基と骨成分ヒドロキシアパタイトとの強い水素結合によると思われる骨への白金集積が見られ,非共有結合の導入による標的薬剤開発に成功した。動物モデルであるラット骨がんの腫瘍体積抑制から有用性が示された。一方,シスプラチン配位DNA-HMG複合体モデル錯体である芳香環スタッキング含有白金錯体は,芳香環スタッキングの強さと抗がん活性が比例することから,芳香環スタッキングが重要な鍵構造であり,シスプラチン作用機構で未解明なシスプラチンの核酸複合体の認識系の存在が示唆された。芳香環スタッキングはある程度の強さ以上あればよいので,混合配位子錯体を安定化させる役割も持つと推定された。事実,共同研究によるプロテオーム研究からはタンパク質との白金の置換反応は認められなかった。候補薬はマウスに作成した腫瘍体積をシスプラチン以上に抑制した。芳香環スタッキングにより,細胞内への取込が増加する,マウスでの体内動態が腎排泄から腸肝循環になり体内滞留が長くなる等の有利な薬動態も明らかとなった。このように非共有性相互作用を白金錯体に導入することにより,新しい標的への攻撃が可能になるばかりでなく,白金自体の反応性が調節され,異なる作用機構発現が可能になり,元の親薬剤とは異なる薬剤を創製できることが示された。従って,非共有結合の導入は白金抗がん剤の開発に非常に有用な手法であることが明らかとなった。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
1: Research has progressed more than it was originally planned.
Reason
非共有結合をカチオン及びアニオンの白金抗がん剤に導入することにより,ドラッグデリバリーを含めた動態ばかりでなく,作用機構を調節できることが明らかとなった。このことは,シスプラチン耐性がんに対してさらに白金抗がん剤を投与できることを意味し,抗がん剤治療の幅が広がるものと期待される。
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Strategy for Future Research Activity |
新規白金抗がん剤に導入された非共有結合が,白金抗がん剤の動態に及ぼす効果をin vitroおよびin vivoから明らかにし,総合的な抗がん剤開発を行い,非共有結合を使った創薬手法の基礎を形成する。
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Research Products
(11 results)