2013 Fiscal Year Annual Research Report
洪水リスク時空間的相関性と治水安全度階層性を考慮した流域一体河川計画手法の構築
Project/Area Number |
25289150
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Research Category |
Grant-in-Aid for Scientific Research (B)
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Research Institution | Hokkaido University |
Principal Investigator |
木村 一郎 北海道大学, 工学(系)研究科(研究院), 准教授 (60225026)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
安田 浩保 新潟大学, 学内共同利用施設等, 准教授 (00399354)
内田 賢悦 北海道大学, 工学(系)研究科(研究院), 准教授 (90322833)
渡部 靖憲 北海道大学, 工学(系)研究科(研究院), 准教授 (20292055)
清水 康行 北海道大学, 工学(系)研究科(研究院), 教授 (20261331)
赤堀 良介 愛知工業大学, 工学部, 准教授 (50452503)
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Project Period (FY) |
2013-04-01 – 2017-03-31
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Keywords | 洪水 / 河川災害 / 数値解析 |
Research Abstract |
1.大規模河川災害におけるシナリオ解明:本年度は2011年に発生した信濃川水害をとりあげ、ケーススタディを実施した。信濃川下流部では5kmほどの区間に4つの河川の分合流が連続し,複雑な河道形態を成している.観測データより洪水規模の違いにより一部区間で流向が逆転すること,洪水規模大きいほど水面勾配が緩勾配となり,現象の時空間非線形性が顕著となること等を示した. 2.流域一帯洪水物理モデルの構築:支川を含めた流域を一体として捉え,洪水開始から終息までの一連の物理挙動を一括して数値解析で再現するモデルを構築した.モデル構築にあたっては高性能パーソナルコンピュータ程度で実時間程度で計算信仰が可能となることと,地形,堤防,建物,植生,土砂移動等も考慮した総合モデルとすることを目標に進めた.数値解析モデルは,河川モデルとしては極めて新規性の高いなマルチレベルグリッド型スキームをベースとした.また,格子サイズよりも空間スケールの小さい建造物,植生などを適切に表現できるモデルを検討した.また洪水にともな土砂輸送の予測モデルの組み込みについても基礎的検討を実施した.前述の信濃川水害に本モデルを適用した結果,支川の洪水ピークのずれの効果が極めて大きいことが指摘され,河道内の貯留効果が遊水地の10倍程度に上る可能性が指摘された. 3.洪水経済モデルに関する基礎的検討:洪水経済モデルに関する基礎的検討として交通システムと洪水リスクの関係のモデル化を試みた.ドライバーの経路選択行動を考える必要のない極めて単純な道路ネットワークを対象とし,洪水リスク下における交通・経済影響モデルの開発を行った.開発したモデルでは,洪水リスクの要因となる降雨量の不確実性と洪水リスク下における移動時間の不確実性を考慮している.このモデルを適用することによって,社会的費用が最小化される最適な河川改修工事計画の立案が可能となる.
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
平成25年度に予定していた課題を進め,いずれにおいてもある程度の基礎を確立し,論文あるいは学会発表等で発信することができた.特に,流域一体型洪水物理モデルの基礎となるマルチレベル型数値解析ツールの構築を達成した点,新規性の高い試みである洪水経済モデルの主要要素である交通ネットワークと洪水リスクの相関性のモデル化を達成した点は,本研究の基礎を固めるうえで重要な成果と考えられる.ただし,流域一体モデルの計算機負荷が比較的大きい点,広域を扱うモデルとはいえ構造物,複雑地形,植生,土砂輸送,流域内降雨を適切に考慮することが必要であり,これに関して残された課題は大きいことを考慮して,ほぼ予定通りの進捗状況と判断した.
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Strategy for Future Research Activity |
研究最終年度である平成26年度には,次のような課題を進めていく. 1. 巨大河川災害のシナリオ解明:今年度は2013年に発生した山口県阿武隈川水害を取り上げ,そのケーススタディを実施し,災害の背景,原因,被害状況等を明らかにする.また,本研究のテーマである流水挙動の時空間非線形性に着目し,災害のシナリオを整理する.さらに,昨年度開発した数値シミュレーションモデルによる災害の再現計算を試み,モデルの妥当性の検証も実施する. 2. 流域一体洪水追跡モデルの改良:流域一体広域洪水追跡モデルについては,平成25年度にほぼその基礎となるモデルを構築済みである.しかし,計算機負荷の低減や,計算格子よりもスケールの小さい構造物や地形等塔の扱いに課題が残っている.これらの点について,平成26年度はさらに検討を進め,流域一体モデルの完成度を高める. 3. 内水外水一体氾濫モデルの構築に着手:平成26年度より新たに洪水物理モデルを構成するもう一つのモデルである内水外水一体氾濫モデルの構築に着手する.モデルのベースとしては,流域一体洪水追跡モデルで用いたマルチレベル型モデルと,新たなコンセプトのダブルグリッド型モデルの2つの可能性を検討し,種々の検討を通じて最適なモデルを選択する.内水の扱いには近年発展の著しいXバンドレーダの降雨データを直接反映できるモデル化を検討する. 4.洪水経済モデルの高度化:洪水経済モデルについては,平成25年度にそのフレームをある程度構築済みである.平成26年度はこれを拡張することによって,より複雑な道路ネットワークでの解析が可能なモデルを開発する.そのためには,ドライバーのリスク回避的な経路選択行動を均衡条件として表現する必要がある.
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
研究初年度である平成25年度では,モデルの構築段階であり,大規模な数値シミュレーションの必要性が予定よりも少なく,既往のパーソナルコンピュータ等を工夫して活用することで,計算機関係の購入経費を抑えることにつながった. 研究二年目に入り,昨年度構築したモデルを大規模領域に適用し,検証を進める段階に入る.このため,計算速度の大きい計算機が必要であり,クロックの大きいマルチCPU型の計算シミュレーションエンジンを購入する.加えて,研究データの蓄積と,研究者間での共有に対応するため,データベースサーバPCを購入する.
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