2014 Fiscal Year Annual Research Report
想定外事象発生時の人間の適応行動パフォーマンス向上に関する研究
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25289347
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Research Institution | Tohoku University |
Principal Investigator |
高橋 信 東北大学, 工学(系)研究科(研究院), 教授 (00243098)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
大橋 智樹 宮城学院女子大学, 学芸学部, 教授 (00347915)
三浦 直樹 東北工業大学, 工学部, 准教授 (70400463)
川島 隆太 東北大学, 加齢医学研究所, 教授 (90250828)
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Project Period (FY) |
2013-04-01 – 2016-03-31
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Keywords | 想定外事象 / 脳機能解析 / マイクロワールドシミュレーション |
Outline of Annual Research Achievements |
適応的能力の評価方法の構築に関しては、三つの側面から研究成果を挙げることができた。 第一に複数の人間が関係する適応的能力の評価の一つの方法として、NIRS信号の共鳴に基づくコミュニケーションの評価方法について検討を行った。認知実験を通じて適応能力に関係するコミュニケーションの質が、NIRS信号間のDistance Correlationで評価可能であることを示した。 次に、スマートグリッドをシミュレーションする環境において、操作に関する知識を手順のみで与える群と、汎化した知識を与える群のパフォーマンスの比較を通じて、想定外事象への対処能力の違いをあきらかにした。この研究では想定外事象への対処能力が汎化知識を与えた群の方が高いこと、事象毎の独立性が高いにもかかわらず、繰り返し想定外事象を経験していくと対処能力が向上する可能性を示した。 次に脳科学的側面からの研究として、マイクロワールドシミュレーション環境構築を用いた認知工学的シミュレーション環境を利用してMRI装置による脳機能評価を行い、適応的な対処能力と特定の脳機能部位の関連に関しての評価実験を行った。シミュレータでは想定内シナリオのみが発生する想定内シナリオと想定外事象が発生する想定外シナリオを発生させ,想定外事象発生中の脳活動と想定内事象発生中にシミュレータのパラメータ変化を観測している際の脳活動を比較し,高対処能力群において特に特徴的に活性化する領域を明らかにした. 本研究では高対処能力群が低対処能力群と比較し状況の変化を監視している際,「状況を汎化する能力」および「状況の変化を受け取り予測する能力」が優れており,それらが高対処能力群に特有な認知過程である可能性が示唆された.
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本年度の研究においては、適応的能力の評価手法を検討することを目的に、想定外事象が発生した緊急時の状況を実際に模擬して、その状況に対峙した人間の挙動を脳科学的な側面から明らかにすることができた。本研究においては、複雑性を有するプラント環境をマイクロワールドシミュレーションとして模擬して、その限定された環境における「想定外」を生起させることで、予想していなかった事態の発生という意味での想定外を模擬することを目指し、それを実現する事ができた。想定外事象を被験者を用いた認知実験で再現すると言うこと自体が難易度の高い課題であったが、それを実現する事ができた。更に、被験者群を想定外事象に対する「高対処能力群」と「定対処能力群」に分けることに成功し、それそれの群における特徴的な脳活動を明らかにできたという点で、適応的能力の評価手法をある程度実現出来たと考えられる。但し、想定外事象への対処能力の向上のための訓練方策に関する検討がまだ未着手であり、この点が達成度が100%ではない理由である。
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Strategy for Future Research Activity |
研究の最終年度は、想定外事象への対処能力を向上させる訓練方策の提案が主な課題となる。計画では仮想的なマイクロワールドシミュレーションとより現実に近いBWR運転訓練センターにおける適応能力向上訓練の有効性の検証を行う予定であった。しかしながらBWR運転訓練センターにおける実験は被験者の訓練やフルスコープシミュレータの利用可能性の問題等から、昨年度から使用可能となったPC上の原子力プラントシミュレータPCTRANを用いた認知実験に変更する予定である。PCTRANを用いた認知実験に変更することで、現実性を維持しながらもより多くの被験者を対象に実験を行うことが可能となり、研究成果の達成がより容易になると期待される。
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Research Products
(4 results)