2014 Fiscal Year Annual Research Report
髄膜・脈絡叢に展開する免疫系の組織構築と精神・神経病態への関与
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25290020
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Research Institution | Institute for Developmental Research, Aichi Human Service Center |
Principal Investigator |
島田 厚良 愛知県心身障害者コロニー発達障害研究所, 病理学部, 室長 (50311444)
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Project Period (FY) |
2013-04-01 – 2017-03-31
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Keywords | 脳神経疾患 / 病理学 / 免疫学 / 細胞・組織 / 生体分子 |
Outline of Annual Research Achievements |
「C. 髄膜・脈絡叢に展開する免疫系が末梢の炎症反応を脳組織に伝達することの証明」に関して、成体雄マウスに内毒素LPSを腹腔投与し、1, 4, 24時間後に脾臓と海馬をホモジナイズして、33種のサイトカイン濃度を一斉定量出来るマルチプレックス解析を行い、saline投与1時間後の対照群と比較した。同じ時間経過でマウスを4%PFAにて灌流固定し、脾臓・海馬で検出したサイトカインとその受容体に対する免疫組織染色を行った。その結果、脾臓では15種のサイトカインの濃度がLPS投与1, 4時間後に上昇した。海馬では10種のサイトカイン(TNF-α, CCL2, CXCL1, CXCL2, IL-6, CXCL9, LIF, CXCL10, CCL11, G-CSF)がLPS投与後に増加したが、その経時変動パターンは脾臓とは異なった。LPS投与4時間後に、CCL2, CXCL1, CXCL2は、脈絡叢上皮細胞、脈絡叢間質・髄膜間質のCXCL12陽性細胞、脳血管内皮細胞が産生した。受容体であるCCR2, CXCR2はアストロサイトの突起/終足に発現していた。LPS投与4, 24時間後に増加したCXCL10は脈絡叢間質・髄膜間質のCXCL12陽性細胞、脳血管内皮細胞、アストロサイトが、また、CCL11はアストロサイトが産生した。LPS投与24時間後に増加したG-CSFはアストロサイトが広範に産生した。以上のことから、全身炎症が生じると、免疫系と脳のインターフェイスに位置する髄膜・脈絡叢のCXCL12陽性細胞、脈絡叢上皮、血管内皮が早期に応答し、多彩なサイトカインを介する細胞間相互作用をアストロサイト突起と行うことによって、免疫応答が脳に伝達されることがわかった。これに続くアストロサイトの広範なG-CSF産生は、神経保護的微小環境の形成を示唆している。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
研究計画の「C. 髄膜・脈絡叢に展開する免疫系が末梢の炎症反応を脳組織に伝達することの証明」については海馬を対象としたひととおりの実験を完了し、知見を論文にまとめて国際誌へ投稿することが出来た。さらに、海馬のみならず、脳の他の領域へ炎症反応がいかに伝達されるのかという課題についても、生化学的測定を完了した。また、研究計画のD,Eについてもその一部を実施出来ている。
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Strategy for Future Research Activity |
平成27~28年度の研究計画・方法「G.SAM加齢変性モデルにおける髄膜・脈絡叢免疫系の起炎性シフト」のうち、脳組織サイトカイン濃度の加齢変化に関する実験が順調に進む中で、嗅覚神経回路における神経変性には、嗅上皮・嗅神経から嗅球へと至る部位を覆う髄膜にそって生じる炎症性刺激が関与する可能性が浮上してきた。そこで、今後の推進方策として、当初の計画を若干修正し、以下の計画を推進することとする。 ①成体マウスの片側鼻腔に内毒素LPSを、他側鼻腔に生食を滴下する作業を1日1回行う。②この作業を週3回隔日で行い、4週間継続することによって、片側鼻腔に慢性炎症を惹起する。③対照群として、LPSのかわりに生食を投与したマウスを作製する。④LPS投与による局所的炎症の効果を組織学的に評価するために、鼻骨を含む頭蓋前部と嗅上皮・嗅神経・嗅球およびその周辺組織の切片を作製し、各種組織学的染色を施す。また、同部位に含まれる組織サイトカイン濃度をMultiplex assayにより測定する。⑤嗅球・嗅結節・梨状葉・嗅内野・扁桃体を含む嗅覚神経回路、および、線条体、中脳黒質に生じる神経変性を組織学的に評価する。⑥嗅覚神経回路を可視化し、嗅脳系の神経変性を俯瞰的に評価できるマウスの実験系として、嗅球のmitral cellおよびtufted cellの細胞体と軸索を特異的に蛍光標識できる遺伝子改変マウス(Tbx21Cre/ tdTomato)を米国ペンシルバニア州立大学と共同で作製し、上記の実験をこのモデルマウスで行う。
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Causes of Carryover |
質量分析装置を用いての測定については、研究協力先の機器の故障などが重なり、実際に測定することが出来なかった。そのために予定していた試薬類などを購入しなかったために未使用額として発生した。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
次年度は計画の一部を修正し、嗅覚神経回路における神経変性の際に、嗅上皮・嗅神経から嗅球へと至る部位を覆う髄膜にそって生じる炎症性刺激が関与する可能性を検討する。その計画実施に必要な試薬類、マウス作製費用などを計上し、本助成金を使用する予定である。
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Research Products
(11 results)
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[Journal Article] Novel flame-shift mutation in Slc5a2 encoding SGLT2 in a strain of senescence-accelerated mouse SAMP102014
Author(s)
Unno K, Yamamoto H, Toda M, Hagiwara S, Iguchi K, Hoshino M, Takabayashi F, Hasegawa-Ishii S, Shimada A, Hosokawa M, Higuchi K and Mori M
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Journal Title
Biochemical and Biophysical Research Communications
Volume: 454
Pages: 89-94
DOI
Peer Reviewed
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[Journal Article] Niemann-Pick disease type C1 predominantly involving the frontotemporal region, with cortical and brainstem Lewy bodies: An autopsy case2014
Author(s)
Chiba Y, Komori H, Takei S, Hasegawa-Ishii S, Kawamura N, Adachi K, Nanba E, Hosokawa M, Enokido Y, Kouchi Z, Yoshida F and Shimada A
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Journal Title
Neuropathology
Volume: 34
Pages: 49-57
DOI
Peer Reviewed / Acknowledgement Compliant
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