2014 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
25290076
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Research Institution | Kobe University |
Principal Investigator |
井上 邦夫 神戸大学, 理学(系)研究科(研究院), 教授 (40252415)
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Project Period (FY) |
2013-04-01 – 2016-03-31
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Keywords | 生殖細胞 / RNA / ゲノム情報 |
Outline of Annual Research Achievements |
生殖細胞は次世代を生む特殊な細胞である。初期発生過程に細胞質に存在する巨大なRNA-タンパク質顆粒である「生殖顆粒」によって始原生殖細胞の特性が規定される際には、細胞質の生殖顆粒から何らかの形で情報が伝達されて核内のゲノム情報発現制御の情報に変換されているものと推測される。本研究では、小型淡水魚ゼブラフィッシュ(Danio rerio)をモデル系として用い、「生殖顆粒において特定のmRNAの翻訳制御が行われ、その結果生成する翻訳産物が核移行して転写制御因子やクロマチン制御因子として働くことにより、生殖細胞特異的なゲノム情報発現制御を担っている」との作業仮説にもとづいて始原生殖細胞決定機構の分子基盤を明らかにすることを目的にしている。 平成26年度は、(1)前年度に引き続き、ゼブラフィッシュ受精卵に、始原生殖細胞で働くdead-end (dnd) 遺伝子に対するモルフォリノ修飾アンチセンスDNA(MO)をインジェクションすることによって始原生殖細胞の形成・移動を人為的に阻害したゼブラフィッシュ胚を作成し、野生型及びMOインジェクション胚から抽出したRNAを用いてRNA-seq解析を行った。その結果、MOインジェクション胚で発現が低下する遺伝子群が同定されたことから、これらの遺伝子の中から、接合子期に始原生殖細胞で転写活性化される遺伝子の同定を進めている。(2)ゼブラフィッシュ4細胞期胚の生殖顆粒に局在するBruno-like (Brul) について、ゲノム編集技術によって作製した変異体について、ヘテロ変異体系統の樹立を行った。(3)RNA結合タンパク質HERMESは、卵母細胞において生殖顆粒の前駆体的な「ミトコンドリア凝集体」に局在する。HERMESとRNAを介さずに相互作用するいくつかのRNA結合タンパク質を同定し、生殖顆粒との関係性を検討している。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
RNA-seq解析を用い、ゼブラフィッシュ接合子期に始原生殖細胞で発現する遺伝子の同定を進めている。また、前年度報告した通り、SBPタグを付加した生殖顆粒構成因子を発現するトランスジェニック系統についてはトランスジーンの発現抑制が起こったため生殖顆粒の単離・精製に供することが出来ない状況であるが、mRNAインジェクションによってタグ付きタンパク質を発現させることで生殖顆粒構成因子のプルダウン実験を進めており、現時点では、おおむね順調に進展している。
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Strategy for Future Research Activity |
概ね当初計画に従って研究を進めるが、とりわけ、ゼブラフィッシュ生殖顆粒構成因子のプルダウン実験によって生殖顆粒に含まれるmRNAやノンコーディングRNAの同定を強力に推し進め、同定したmRNAの中から、転写制御因子やクロマチン制御因子をコードし、始原生殖細胞の核内ゲノム情報発現制御に働く因子を同定する。
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Causes of Carryover |
生殖顆粒構成因子の単離・精製にトランスジェニック系統を使用する計画を中止したことに伴い、実験手法や実施順序を変更したため、次年度に当該助成金を使用予定となった。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
mRNAインジェクションによってタグ付きタンパク質を発現させて生殖顆粒構成因子を単離・精製するために試薬等の経費として使用する。
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Research Products
(3 results)