2013 Fiscal Year Annual Research Report
ストレスとアミノ酸栄養に応答したTORC1制御機構の解明
Project/Area Number |
25291042
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Research Category |
Grant-in-Aid for Scientific Research (B)
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
前田 達哉 東京大学, 分子細胞生物学研究所, 准教授 (90280627)
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Project Period (FY) |
2013-04-01 – 2016-03-31
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Keywords | 細胞内情報伝達 / TOR / target of rapamycin / TORC1 / TOR complex 1 / ストレス顆粒 / 栄養 |
Research Abstract |
「1.熱ストレスによるストレス顆粒へのTORC1隔離機構の解明」隔離に際して直接に相互作用するストレス顆粒側の構成因子を同定するため、構成因子のうち遺伝子破壊が致死になるeIF4E(cdc33-1)とeIF3A(rpg1-1)の温度感受性変異株、およびeIF3A(RPG1)とeIF3B(PRT1)のプロモーターシャットオフ株を検討したが、ストレス顆粒形成とTORC1隔離のいずれについても欠損を示すものは無かった。高度な構造冗長性を備えたストレス顆粒の形成ならびにTORC1隔離を阻害することは困難であることが明らかになった。 「2.LeuRS-Gtr複合体を介した栄養応答性酵母TORC1活性化の再検討」LeuRSとGtr複合体のそれぞれについて、その機能を欠損させた場合における栄養応答性TORC1活性化能を確認した。Gtr破壊株においても、LeuRSの特異的阻害剤であるDHBBで処理した処理した細胞においても、種々の窒素源に応答したTORC1活性化能は失われていなかった。このことは、LeuRS-Gtr複合体を介する機構が栄養応答性TORC1活性化に果たす役割は、あくまで限定的なものであることを示している。 「3.新規TORC1制御因子の探索」活性化型TOR変異体を導入することにより生育を回復するような致死変異株としてTORC1活性制御因子を包括的に同定することを試みた。60万株をスクリーニングし、約90株の候補を得て原因遺伝子の同定を進めている。また、Gtr複合体に依存しないTORC1活性化機構を探索する目的で、高発現することによりGtr破壊株の生育遅延を回復させるような遺伝子を、全ゲノムをカバーする遺伝子セットからスクリーニングした。その結果、リボソーム翻訳活性に関連した因子が同定された。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本年度に計画していた3つの研究内容の内、「1.熱ストレスによるストレス顆粒へのTORC1隔離機構の解明」については、ストレス顆粒構成因子のうち、残されていた遺伝子破壊が致死になるものについて検討したが、顆粒形成とTORC1隔離のいずれについても欠損を示すものは無かった。このことから、ストレス顆粒の高度な構造冗長性が明らかになると共に、TORC1隔離がストレス顆粒形成と分かちがたく結びついた現象であることが示された。さらに、アミノ酸栄養検知機構として提唱されているLeuRS-Gtr複合体を介した経路がTORC1活性化に果たす役割を再検討したところ、それがあくまで限定的なものであることを確認したため、Gtr複合体に依存しないTORC1活性化機構が大きな研究課題として浮かび上がってきた。そのため、「3.酵母TORC1活性制御因子の包括的単離」を最優先に研究を進めた。当初、計画していた活性化型TOR1変異体を用いたスクリーニング法に加え、Gtr複合体に依存しないTORC1活性化機構に特化したスクリーニングを行い、いずれも多数の候補株を得ると共に、一部については原因遺伝子を同定した。「2.アミノ酸トランスポーターDip5によるTORC1制御の検証」は次年度に行うことにした。
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Strategy for Future Research Activity |
まず、今年度に単離した新規TORC1活性制御因子の変異株候補の原因遺伝子を全て同定することに注力する。既に、リボソーム翻訳活性に関連した因子を同定している。リボソーム翻訳活性は細胞内アミノ酸プールが健全に保たれていることを反映するため、栄養検知機構としてのリボソームというアイディアは検討されるべき仮説である。今後は同定した因子がTORC1に及ぼす影響とその分子機構を明らかにすると共に、当初の計画に従って、ストレス顆粒やアミノ酸トランスポーターによるTORC1制御機構についても平行して研究を進めたい。
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