2013 Fiscal Year Annual Research Report
重イオンビーム欠失変異マッピングによる組換え抑制領域からの有用遺伝子同定
Project/Area Number |
25292009
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Research Category |
Grant-in-Aid for Scientific Research (B)
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Research Institution | Institute of Physical and Chemical Research |
Principal Investigator |
風間 裕介 独立行政法人理化学研究所, イノベーション推進センター, 研究員 (80442945)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
安井 康夫 京都大学, (連合)農学研究科(研究院), 助教 (70293917)
高原 学 独立行政法人農業・食品産業技術総合研究機構, 畜産草地研究所, 主任研究員 (90355123)
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Project Period (FY) |
2013-04-01 – 2016-03-31
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Keywords | 育種学 / 重イオンビーム / 組換え抑制領域 / 植物 / 生殖システム |
Research Abstract |
染色体の組み換えが抑制された領域に存在する有用遺伝子を同定するため、組換え抑制領域に大小様々な欠失サイズをもつ変異体ラインを多数整備し、それらの欠失パターンから原因遺伝子を特定する「欠失変異マッピング」を実施している。 雌雄異株植物ヒロハノマンテマの2つの性決定遺伝子(雄蕊発達促進:SPF、雌蕊発達抑制:GSF)については、無性花変異体11 個体、両性花変異体14個体、葯形成不全変異体15個体、表現型が雄である重イオンビーム照射50個体、合計90個体を用いて、86個のSTSマーカーについて欠失領域を調べた。ゲノム情報の無い巨大染色体の性決定領域を絞り込むため、最適化問題である「巡回セールスマン問題」を応用した新手法を開発した。マッピングの結果、SPFに6マーカー、GSFに4マーカーがマップされ、これらの領域を含むBACクローンを同定した。 ソバの二花柱型自家不和合性遺伝子については、1,500個体からなるM1集団を育成し、任意交配後にM2変異集団を作成した。また原因遺伝子が座乗すると考えられるゲノム領域を整備するため、20Kbpのロングジャンピングライブラリーを作成し、アセンブラを用いてscaffold群の構築を行っている。またS領域連鎖マーカーとS-ELF3マーカーを用いて、S領域欠失個体をスクリーニング中である。これまでに500個体程度のM2を調べて、S領域連鎖マーカーを失った個体を1個体確認できた。 ギニアグラスのアポミクシス遺伝子については、同遺伝子周辺領域のBACクローン193個を次世代シークエンサーで解読し、これまでに約23.2Mbpの配列情報が得られ、28 contigが形成された。また有性生殖への転換が示唆された変異体2系統についてアポミクシス特異的STSマーカー120個による解析を行い、欠失マーカーが4個および3個と、欠失領域が比較的小さいことを明らかにした。さらにこの欠失領域に位置するBACクローンを特定し、現在解析を進めている。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
ヒロハノマンテマとギニアグラスについてはおおむね順調に進展している。ソバについては、2013年9月16日に京都地方をおそった大雨のため、育成していたM2植物の多くが被害を受けた。そのため、M2植物の個体数が予定を下回る1,500個体程度と少なくなってしまった。2014年度の春に再度の育成を行い、大規模にM2植物を育成したい。
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Strategy for Future Research Activity |
ヒロハノマンテマの2つの性決定遺伝子については、計画通りレーザーマイクロダイセクションによるY 染色体連鎖遺伝子群の時空間発現プロファイルを行う。GSFは雌蕊の発達が抑制される時期、SPFは雄蕊の発達が促進される時期にそれぞれ高発現する遺伝子を絞り込む。また、GSFについては雄花では発現するが両性花変異体で発現しない遺伝子、SPFについては雄花では発現するが無性花変異体で発現しない遺伝子を検出する。これらの発現情報とBACのシーケンス解析との情報を照らし合わせ、2つの性決定遺伝子の絞り込みを進める。 ソバの二花柱型自家不和合性遺伝子については、S領域欠失個体のゲノム情報から原因遺伝子が座乗すると考えられるゲノム領域を特定し、S遺伝子の候補遺伝子を絞り込む。候補遺伝子が少なければ各遺伝子の発現パターンをRT-PCRにより精査し、S遺伝子を特定する。候補遺伝子が多い場合は、NGS-RNAseqを実施し、雄蕊もしくは雌蕊のどちらかで高発現する遺伝子を調査する。最終的にはNGSを利用したTILLINGを実施し、候補遺伝子の破壊と表現型の変化を調査し、S遺伝子を同定する。 ギニアグラスのアポミクシス遺伝子については、ゲノム配列情報を元に高密度STS マーカーを作出・解析し、これまでに得られたイオンビーム突然変異体の欠失領域を精密に決定する。また、変異体の生殖様式の表現型(アポミクシス/有性生殖)をAFLP フィンガープリンティングと微分干渉顕微鏡を用いた胚のう分析法により決定する。これらの結果からアポミクシス原因遺伝子の座乗領域を絞り込む。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
ヒロハノマンテマについて巡回セールスマン問題を用いたマッピングがうまくいき、SPF、GSF領域に存在するBACのスクリーニングも予定通り終了した。次年度の発現解析からSPF、GSF領域に存在する遺伝子が新たに求められることが期待される。その際に新たに同定されたBACクローンのシーケンスを、本年度同定したBACとをまとめて効率的にシーケンスするため、次年度に経費を繰り越した。 繰り越した経費を用いて新たにBACのスクリーニングを行い、今年度同定したBACと合わせてシーケンシングを行う。
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Research Products
(28 results)