2014 Fiscal Year Annual Research Report
雑草に除草剤抵抗性を付与する一塩基多型の維持機構に関する雑草防除学的研究
Project/Area Number |
25292013
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Research Institution | Kyoto University |
Principal Investigator |
冨永 達 京都大学, (連合)農学研究科(研究院), 教授 (10135551)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
大段 秀記 独立行政法人農業・食品産業技術総合研究機構, その他部局等, 研究員 (70343978)
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Project Period (FY) |
2013-04-01 – 2016-03-31
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Keywords | 雑草 / 除草剤抵抗性 / スズメノテッポウ / スルホニルウレア剤 / 作用点抵抗性 |
Outline of Annual Research Achievements |
除草剤抵抗性雑草の顕在化は、作物生産に大きな負の影響を及ぼす。九州北部の麦畑では、スルホニルウレア系除草剤(SU剤)に対して抵抗性を示すスズメノテッポウが出現し、問題となっている。 本年度は、昨年度種子を採集した九州北部(福岡県、佐賀県、熊本県)のスズメノテッポウ19集団および対照として栃木県、埼玉県、静岡県の各1集団の合計22集団について、昨年度設計したALS1およびALS2を特異的に増幅するプライマーを用いて、1集団それぞれ30個体のALS遺伝子型を決定した。供試した22集団のうち、感受性4集団ではALSにおいて抵抗性を付与する変異が確認されなかった。残りの18集団では、ALSのPro197部位がSer、LeuあるいはHisへ、また、Trp574部位がLeuへ変異するなどの一塩基置換が認められ、かつ、16集団においては多型が認められた。また、ヘテロ遺伝子型の存在も確認した。 抵抗性を付与する異なる一塩基置換をもつ抵抗性生物型のうち、ALS1のPro197部位がLeuに変異した生物型(1Leu197と表記)、1Ser197生物型および2Ser197の適応度を感受性型と比較したところ、いずれの抵抗性生物型も感受性生物型との間に差異は認められなかった。 抵抗性遺伝子型のうち、1Leu574型、1Thr197型、1Ser197型、1Ala197型、1His197型、2Ser197型、1Leu197型、2Leu197型にSU剤に対する抵抗性の程度を発根法により感受性型と比較したところ、1Leu574型および1Thr197型がもっとも抵抗性の程度が高く、1Leu197型および2Leu197型の抵抗性の程度がもっとも低かった。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
ほぼ当初計画通り進行している。スズメノテッポウではALSが2コピー存在することを明らかにし、それぞれを個別に増幅することに成功した。これをもとに、SU剤抵抗性集団においてALS2コピーにおける集団内多型の存在を明らかにした。また、それぞれの抵抗性変異型の遺伝子型を決定した後、それぞれの抵抗性遺伝子型のSU剤に対する抵抗性の程度が異なることも明らかにした。また、一部の変異型については、それらの適応度も明らかにしたが、感受性型との差異は認められなかった。最終目標である多型の維持機構の解明にむけて、スズメノテッポウは自殖であると報告されているが、ヘテロ個体の存在が確認されたことから、他殖率を解析する必要がある。また、埋土種子集団の動態も明らかにする必要がある。
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Strategy for Future Research Activity |
SU剤抵抗性を付与する一塩基多型の維持機構の解明にむけて、自殖であると報告されているスズメノテッポウの他殖率を、一塩基多型をマーカーとしてCAPS法によって明らかにする。また、ヘテロ個体の適応度を感受性型と比較する。さらに、埋土種子集団の動態を明らかにすることによって多型の維持機構を明らかにする。
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