2013 Fiscal Year Annual Research Report
農林生態系における捕食者-被食者多種系の分子同定システムの開発と実証
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25292034
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Research Category |
Grant-in-Aid for Scientific Research (B)
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Research Institution | Kobe University |
Principal Investigator |
前藤 薫 神戸大学, (連合)農学研究科(研究院), 教授 (80346238)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
三浦 一芸 独立行政法人農業・食品産業技術総合研究機構, その他部局等, 研究員 (10355133)
小西 和彦 独立行政法人農業・食品産業技術総合研究機構, その他部局等, 研究員 (90414747)
吉松 慎一 独立行政法人農業環境技術研究所, その他部局等, 研究員 (10354127)
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Project Period (FY) |
2013-04-01 – 2017-03-31
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Keywords | 昆虫同定 / DNAバーコーディング / 捕食性天敵 / 天敵寄生蜂 / 生物的防除 / 次世代シーケンサー |
Research Abstract |
捕食者の消化管内で混合した捕食者自身および複数種餌生物の同定を可能とするため、ブロッキング・オリゴと次世代シーケンサーを組み合わせてシステムの開発に取組んだ。セアカヒラタゴミムシ成虫をモデル捕食者として、それに3種の餌生物(ハスモンヨトウ、エンマコオロギ、ニワトリ)を与える実験系を設定した。まず、4種のDNAバーコード領域(ミトコンドリアCOI遺伝子の部分領域約650bp)の塩基配列データを参考にして、セアカヒラタゴミムシのDNAバーコード領域のPCR増幅を阻止するためのブロッキング・オリゴを設計した。また、イルミナの次世代シーケンサーを用いて多数アンプリコンの解析を行うために、(DNAバーコード領域を増幅する)ユニバーサルプライマー配列と(イルミナ用の)シーケンスプライマー配列を組み合わせた第1プライマー、およびその末端配列に(サンプルを区別するための多種類の)インデックス配列と(イルミナ用の)アダプター配列を含む第2プライマーを設計した。餌生物を補食させたセアカヒラタゴミムシ成虫の消化管内容物から抽出したDNAを第1プライマーによって増幅させる際に、 ブロッキング・オリゴを加える処理と加えない処理を行った。その増幅物を第2プライマーによって増幅して得た多サンプルのアンプリコンを次世代シーケンサーによって解析した。その結果、捕食者のブロッキング・オリゴと次世代シーケンサーの併用によって、混合した餌生物のDNAバーコード領域を解読・同定することが出来た。 異なる生殖型タイプ(両親型/単親型)が混棲する寄生蜂について、DNAバーコードによる同定を検討し、一部の例外を除けば同定可能であることを明らかにした。野菜ハモグリバエ類およびコナガの寄生蜂類について、バーコーディングのための試料収集と同定、一部サンプルの解読を行った。また、ガ類害虫についても試料収集と解析を開始した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
次世代シーケンサーを利用することによって、捕食者体内の複数種餌生物の同定など、種混合DNAサンプルの同定を行う技術に見通しが得られた。農業生態系昆虫の基盤的なDNAバーコード情報を集積してゆく課題も順調に開始した。しかし、次世代シーケンサーを利用した同定技術は、技術的にやや難しい微小捕食者の餌分析に応用する必要がある。また、現在のPCR条件ではアンプリコンの増幅が著しく不安定であり、原因を解明して改善する必要がある。
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Strategy for Future Research Activity |
農環境におけるより一般的な餌解析手法を開発するために、カメムシ類あるいはアザミウマ類などの微小捕食性昆虫の実験系を確立する。アンプリコンの増幅条件を改良するため、定量PCRを利用した精密な条件検討を進める。また、引き続きガ類害虫と寄生蜂類のDNAバーコード集積を進めるとともに、甲虫類など他の重要な昆虫群についても試料収集を行う。 一方、最近海外の研究者が、野外寄生蜂の体内に残留する寄主DNAの解読によって寄主昆虫の同定が可能であるという報告を行ったので、その確かさを彼らが行っていない室内実験系を用いて検証し、技術的な見込みがあれば本研究課題に取り込んで発展させたい。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
アンプリコンの増幅条件・解析条件の最適化などに正確を期しているため、次世代シーケンサーを用いた解析等が一部、次年度にずれ込んだために基金の降年度使用が生じた。 次年度使用額は、主として次世代シーケンサー等の試薬消耗品費および解析補助者の雇用等に使用する計画である。翌年度請求分は、新たに必要となるDNA分析試薬のほか、少額分析機器の購入、調査・学会発表、施設使用、書籍購入、発表論文の英文校閲などに使用する。
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Research Products
(15 results)