2014 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
25292078
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Research Institution | Doshisha University |
Principal Investigator |
斎藤 芳郎 同志社大学, 生命医科学部, 准教授 (70357060)
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Project Period (FY) |
2013-04-01 – 2017-03-31
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Keywords | セレノプロテイン / 受容体 / セレン / 細胞内輸送 / リソソーム / 回収エンドソーム / 酸化ストレス / 糖尿病 |
Outline of Annual Research Achievements |
平成26年度において本研究では、SePのセレン運搬作用に必須のプロセスである細胞表面への結合およびSeP受容体の同定を目指して検討を行った。前年度同定した高親和性の受容体の存在が示唆されたヒトTリンパ球腫Jurkat細胞と低親和性のヒト横紋筋由来RD細胞について、SePに由来するセレンの細胞内取り込み経路の詳細を比較した。SePが細胞内で分解されセレン源となっているかについて、リソソーム阻害剤の効果を検討した結果、RD細胞ではセレン供給が阻害されるのに対し、Jurkat細胞では阻害されなかった。これより、前者ではリソソームにおけるSePの分解を介してセレン供給されるのに対し、後者ではリソソームにおける分解を介していないと考えられた。細胞内局在について、共焦点レーザー顕微鏡を用いて観察した結果、細胞内に取り込まれたSePは、RD細胞ではリソソームに局在するのに対し、Jurkat細胞では回収エンドソームに認められた。リソソーム依存性の違いと同様、RD細胞ではセレノシステイン分解酵素に依存的であるのに対し、Jurkat細胞では分解酵素非依存的であった。以上の解析から、SePのセレン運搬作用に分解経路と非分解経路があることが示唆された。今度受容体同定を進め、同経路の分子機構を明らかにする。 受容体の同定については、前年度確立した75Se標識SePを用い、クロスリンカー処理後、SDS-PAGEで分離しSeP-結合タンパク質複合体を検出する解析系を立ち上げた。複合体を免疫沈降できる抗体のスクリーニングを行った結果、免疫沈降に使用可能な抗体を3種類同定した。複合体を大量調製し、免疫沈降法を用いて分離後、質量分析法による同定を目指す。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
1: Research has progressed more than it was originally planned.
Reason
本研究では、平成26年度において、前年度見いだしてきた低親和性・高親和性の培養細胞を詳細に比較し、SePによるセレン供給機構が、これらの細胞種で全く異なることを明らかにすることが出来た。SePの取り込み能が低い筋肉系細胞では、SePをリソソームで分解後、セレノシステインリアーゼによるアミノ酸の分解を介してセレンを用いてることが分かった。一方で、高親和性を有するリンパ球系細胞では、リソソームによる分解やセレノシステインリアーゼを介さずにセレン供給を行っていた。回収エンドソームに認められることから、受容体の種類によって、細胞内輸送経路が異なっていると考えられる。本結果は、生体のセレン動態を考察する上で、非常に重要な知見であり、受容体同定を行う研究基盤を構築出来たと考える。これらの検討課題については、当初の計画よりも進展が見られたと考えている。一方で、海外からの輸入、学内および学外の事務手続きおよび海外担当部署とのやりとりに時間を要した75Seを用いた実験系は、その後75Se標識SePの作成、結合アッセイが順調に進み、複合体の検出系構築から抗体のスクリーニングまで進むことが出来た。平成27年度は、培養細胞系で得られた結果を基に、受容体の同定に向けて、粘り強く検討を続けていきたいと考えている。以上の達成状況から、本年度は当初の計画以上に進展していると評価した。
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Strategy for Future Research Activity |
本研究では、SeP受容体の同定に加え、SePに含まれるセレンがどのようにして細胞内のセレン含有タンパク質に取り込まれるか、またセレン運搬後のSePの構造変化を明らかにし、SePによるセレン運搬作用の全貌の解明を目的としている。本年度の検討により、上記課題を遂行するための研究基盤が確立でき、必要な研究ツールがすべてそろい、検討する培養細胞の性質も明らかとなった。今後、受容体を同定し、これまで明らかになってきたセレン運搬メカニズムの研究とのクロストークから、高親和性・低親和性のセレン運搬機構を分子レベルで理解する詳細な検討を進めていきたい。研究室にある複数の抗体を用いることにより、複合体を認識する適切な抗体を同定できた。受容体の同定へと進む大きなブレークスルーととらえている。セレン運搬作用のメカニズム解析については、アウトラインが出来ており、本研究の進展に大きな問題は無いと考えている。
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Causes of Carryover |
事務処理上残額として26円生じたが、ほとんど使用した。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
次年度、全額使用する予定である。
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Research Products
(15 results)
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[Journal Article] LECT2 functions as a hepatokine that links obesity to skeletal muscle insulin resistance.2014
Author(s)
F Lan, H Misu, K Chikamoto, H Takayama, A Kikuchi, K Mohri, N Takata, H Hayashi, N Matsuzawa-Nagata, Y Takeshita, H Noda, Y Matsumoto, T Ota, T Nagano, M Nakagen, K Miyamoto, K Takatsuki, T Seo, K Iwayama, K Tokuyama, S Matsugo, H Tang, Y Saito, S Yamagoe, S Kaneko, and T Takamura
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Journal Title
Diabetes
Volume: 63
Pages: 1649-1664
DOI
Peer Reviewed / Open Access
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[Journal Article] Selenoprotein P as a diabetes-associated hepatokine that impairs angiogenesis by inducing VEGF resistance in vascular endothelial cells.2014
Author(s)
K Ishikura, H Misu, M Kumazaki, H Takayama, N Matsuzawa-Nagata, N Tajima, K Chikamoto, F Lan, H Ando, T Ota, M Sakurai, Y Takeshita, Kenichiro Kato, Akio Fujimura, Ken-ichi Miyamoto, Y Saito, S Kameo, Y Okamoto, YTakuwa, K Takahashi, H Kidoya, N Takakura, S Kaneko, and T Takamura
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Journal Title
Diabetologia
Volume: 57
Pages: 1968-1976
DOI
Peer Reviewed / Open Access
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