2013 Fiscal Year Annual Research Report
樹幹形成層における細胞増殖と木部形成過程をモニターするモデル樹木の育成
Project/Area Number |
25292107
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Research Category |
Grant-in-Aid for Scientific Research (B)
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Research Institution | Nihon University |
Principal Investigator |
片山 義博 日本大学, 生物資源科学部, 教授 (10214339)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
川合 伸也 東京農工大学, (連合)農学研究科(研究院), 准教授 (90202027)
伊澤 かんな (佐藤 かんな) 筑波大学, 生命環境科学研究科(系), 助教 (40456603)
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Project Period (FY) |
2013-04-01 – 2016-03-31
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Keywords | 木質バイオマス / 形成層 / 細胞増殖 / 細胞壁肥厚 / 木部形成 / 有糸分裂 / 細胞隔壁 / 二次壁 |
Research Abstract |
「樹幹形成層における有糸分裂突入細胞の生成と分布」をモニター可能な遺伝子組換ポプラ育成の課題では、有糸分裂段階で特異的に発現する細胞周期制御遺伝子、ポプラ由来サイクリンB遺伝子のプロモーター配列の下流に、GUSレポーター遺伝子を連結したDNA配列をアグロバクテリウム法で導入した遺伝子組換ポプラの作出に成功した。得られた遺伝子組換ポプラは、根端分裂組織、頂端分裂組織で鮮明なGUS染色を示し、茎の形成層においてもGUS染色を示したが、分裂組織以外でGUS染色は観察されなかった。さらに根端分裂組織におけるGUS染色は、aphidicolin処理12時間後には消失する事から、遺伝子組換ポプラのGUS染色は有糸分裂期の細胞を選択的に検出し、細胞周期の進行に伴い速やかに消失する事が示唆され、有糸分裂段階に突入した細胞を選択的に可視化する事が可能となった。 「樹幹形成層において薄壁(細胞板)形成に突入した細胞の生成と分布」をモニター可能な遺伝子組換ポプラの育成の課題では、ポプラ樹幹部で発現するポプラSCAMP遺伝子候補を複数同定し、発現挙動から可能性の高い候補遺伝子2種のプロモーター配列を取得し、その下流に、GUSレポーター遺伝子を連結したT-DNAベクターを構築する事に成功した。 「樹幹木部組織において二次壁形成を開始した細胞の生成と分布」をモニター可能な遺伝子組換ポプラの育成の課題では、ポプラ樹幹/木部における二次壁肥厚過程で、大量合成される二次壁特異的ヘミセルロースの合成酵素遺伝子(PtGT43,)のプロモーター配列の下流に、GUSレポーター遺伝子を連結したT-DNAベクターの構築に成功した。さらにそれら遺伝子をアグロバクテリウム法でポプラに導入し、遺伝子組換ポプラのシュート分化に成功した。遺伝子組換えシュートの二次壁肥厚を示す葉脈部分で鮮明なGUS染色を観察する事に成功した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
平成25年度の研究計画のうち、第一の課題である「樹幹形成層における有糸分裂突入細胞の生成と分布」をモニター可能な広葉樹モデル樹木の育成に関しては、遺伝子組換えポプラの作出に成功し目標を達成した。第二の課題では、有糸分裂の終結後の薄壁(細胞板)構築に関与する遺伝子、ポプラSCAMP遺伝子のプロモーター配列の下流に、GUSレポーター遺伝子を連結したT-DNAベクターを構築する目標を達成した。第三の課題についても、木部における二次壁肥厚を観察するためのベクター構築に成功し、ポプラへの遺伝子導入を実施出来た。
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Strategy for Future Research Activity |
平成26年度は、「樹幹形成層における有糸分裂突入細胞の生成と分布」のモニターを目的に作出した遺伝子組換えたポプラを対象に、優良クローンを選別し、形成層における有糸分裂細胞の生成と分布を詳細に調査するとともに、優良クローンの苗木を増やし、国内外の研究者に提供出来る条件を整える。その他、細胞板形成および二次壁形成のモニター樹木についても、同様に順次研究計画に沿って研究を実施する。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
平成25年度の研究計画は、おおむね順調に実施出来た。次の段階に研究計画を進めるには、遺伝子組換えポプラ優良クローンを選別し、苗木を増やし、国内外の研究者に提供出来る条件を整える事である。それを実施するために、人工気象器を新たに増設して分化個体数を増やす。あるいはクリーンベンチと恒温培養器を新たに購入して、苗木増産の効率化を図るかの2つのケースが考えられた。いずれかを決定するには、優良クローン個体数など実験規模の見極めが必要であり、25年度の最終的な研究成果を確認して決定する事とした。そのため25年度の機器購入を保留し26年度購入する事にした事が、次年度使用額が発生した理由である。 平成26年度研究費は、細胞板形成および二次壁形成のモニター樹木の作成などに用いる試薬、ガラス器具などに使用する。H25年度未使用額(899千円)は、苗木増産の効率化を図るために、卓上クリーンベンチ(440千円)の購入に、さらに細胞培養の恒温培養器(400千円)購入に使用する。
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