2013 Fiscal Year Annual Research Report
コナガの薬剤及び天敵微生物耐性獲得機構解明への分子遺伝学的アプローチ
Project/Area Number |
25292203
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Research Category |
Grant-in-Aid for Scientific Research (B)
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Research Institution | National Institute of Agrobiological Sciences |
Principal Investigator |
山本 公子 独立行政法人農業生物資源研究所, 昆虫ゲノム研究ユニット, ユニット長 (40370689)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
宮本 和久 独立行政法人農業生物資源研究所, 昆虫微生物機能研究ユニット, 上級研究員 (10370686)
和田 早苗 独立行政法人農業生物資源研究所, 昆虫微生物機能研究ユニット, 主任研究員 (50414959)
上樂 明也 独立行政法人農業生物資源研究所, 昆虫ゲノム研究ユニット, 任期付研究員 (60542115)
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Project Period (FY) |
2013-04-01 – 2016-03-31
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Keywords | 遺伝学 / 遺伝子 / ゲノム / コナガ / 害虫防除 |
Research Abstract |
1.コナガ連鎖地図構築 コナガゲノムの3種のインサート長(2kbp,5kbp, 8kbp)のメイトペア配列データ(36Gbp)を取得した。現在、これらを用いたゲノムコンティグ配列の拡張を実行しており、完了次第、2つの異なるコナガ系統(PXRと住友化学)間で獲得した 1,841 SNPの選抜を行なう。また、マーカー選抜と抵抗性の連鎖解析を同時に進めるためにRAD-seq を進め、2系統間の配列データ(34Gbp)を取得した。現在、このデータを用いたSNP拡充の準備を進めている。 2.コナガのフルベンジアミド等抵抗性系統確立と抵抗性因子の解析 住化Cry1Ac抵抗性系統の抵抗性遺伝子の遺伝様式の調査を行った。クボタの感受性系統(S系統)と交配したところ、F1の感受性はS系統より若干低下したが、感受性であった。このことから、抵抗性遺伝子は不完全劣性と考えられた。現在BC1における抵抗性形質の分離を調査中である。タイ国から導入したフルベンジアミド抵抗性コナガの国内での継代が飼料等の違いから容易でないことが分かり、来年度、人工飼料で継代中のS系統と交配後、抵抗性遺伝子の固定を行う準備を進めている。 3.糸状菌に抵抗性を示すコナガ系統の作出住友化学より購入したコナガの3~4令幼虫を、昆虫病原糸状菌Beauveria bassiana (No.32) の分生子懸濁液に浸漬したキャベツ葉で飼育し、生存虫を継代した。これまでに継代を10回繰り返し、5倍程度の抵抗性の増加傾向が認められた{LC50値:選抜区2.6×108(5.7×107~5.2×109)、無選抜区4.9×107(1.2×107~3.7×108)}が、有意差は認められなかった。また、大わしコナガ系統は、住友化学系統が1割程度致死する1/20の分生子濃度でも100%致死したことから、コナガ系統間に本菌に対する感受性差異があると考えられた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
コナガ連鎖地図構築において、予定通り解析集団を構築しSNPマーカーの選抜を進めた。また、RADシーケンスを行い、網羅的なマーカー選抜と連鎖解析を予定通り進めた。 コナガのフルベンジアミド等抵抗性系統確立と抵抗性因子の解析において、タイ国より導入したコナガの国内での長期継代は容易でないことが示唆されたが、国内産コナガとの交配後代の解析で目的である抵抗性形質の固定化と抵抗性関連遺伝子の解析は可能であるため大きな問題とはなっていない。その他のCry1Ac抵抗性系統の抵抗性遺伝子の遺伝様式の調査等は順調に進んでいる。 糸状菌に抵抗性を示すコナガ系統の作出において、昆虫病原糸状菌Beauveria bassiana(No.32)の分生子懸濁液に浸漬したキャベツ葉で飼育し、生存虫の継代を繰り返すことでこれまでに5倍程度の抵抗性の増加傾向が認められた。また、大わしコナガ系統は、住友化学系統が1割程度致死する1/20の分生子濃度でも100%致死したことから、コナガ系統間に本菌に対する感受性差異があると示唆されるなど、抵抗性系統作出へ前進している。 以上のことから、本課題はおおむね順調に進展していると評価した。
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Strategy for Future Research Activity |
1.コナガ連鎖地図構築 コナガの異なる2系統間で獲得したSNPを利用し、解析集団(BC1)を用いた連鎖解析により連鎖地図上のマーカーを増やし地図の高度化を進める。一方、 マップベースドクローニングにおける原因遺伝子候補領域の絞り込みをより効率的に行うため、ゲノムシーケンスデータの追加および再アセンブルを適宜継続して行う。得られたゲノム配列情報は速やかにデータベース化し、予測遺伝子配列情報の更新、ゲノムブラウザによる可視化、アノテーション情報の更新等を進め、マップベースドクローニングに活用していく。鱗翅目昆虫ではシンテニーが保存されていることが示唆されているため、全ゲノムが解読されている鱗翅目昆虫のゲノム情報を活用することも重要である。これらの昆虫との網羅的な比較ゲノム解析を行い、相同領域の識別および可視化を行い、該当領域における各昆虫の遺伝子情報等の網羅的かつ効率的な検索を可能とすることで候補遺伝子の機能推定に役立てるツールを作成する。 2.コナガのフルベンジアミド等抵抗性系統確立と抵抗性因子の解析 タイから入手したフルベンジアミド抵抗性のコナガを実験室内で兄妹交配により近交系を進め、解析集団を構築する。また、タイ系統と人工飼料で飼育している系統とを交配後フルベンジアミド抵抗性遺伝子の固定を試みる。その後、構築した抵抗性解析集団あるいは、抵抗性固定集団を用いて、遺伝様式の調査を行う。また、平行して上記と同一地域において得られたコナガからBt毒素の内、Cry1C毒素に対して抵抗性を示す系統を分離し、フルベンジアミドと同様に遺伝様式の解析を実施する。 3.糸状菌に抵抗性を示すコナガ系統の作出 前年度までに作出したB.bassiana抵抗性コナガ系統と、元々の感受性系統との間で後代(F1およびBC1)を作製し、同菌に対する抵抗性の遺伝様式を調査する。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
次世代シーケンサーを用いた解析に必要なコストが大幅に低下したことから、薬剤抵抗性の連鎖解析を計画より多く実施が可能となった。新たな解析集団の構築に所定の時間がかかることから、追加の次世代シーケンサー解析を次年度に行うこととしたため次年度使用額が生じた。 タイから入手したジアミド剤抵抗性コナガと国内の感受性コナガを交配し、後代の解析集団を構築し、次世代シーケンサーを利用したRADシーケンス法により抵抗性とリンクしたゲノム上の領域を絞り込む。
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[Presentation] High degree of resistance to Cry1Ab toxin caused by a single amino acid insertion in an ABC transporter in the silkworm.2013
Author(s)
Atsumi, S., Miyamoto, K., Yamamoto, K., Sezutsu, H., Wada, S., Marian R. Goldsmith, M. R., Sato, R. and Noda, H.
Organizer
Entomology 2013, 61st Annual Meeting of the Entomological Society of America
Place of Presentation
Austin, Texas, USA
Year and Date
20131110-20131113
Invited
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