2014 Fiscal Year Annual Research Report
湿潤熱帯アジア森林-農業景観における生物多様性・生態系サービス評価
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25292210
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Research Institution | National Institute for Agro-Environmental Sciences |
Principal Investigator |
大久保 悟 独立行政法人農業環境技術研究所, その他部局等, 研究員 (30334329)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
宮下 直 東京大学, 農学生命科学研究科, 教授 (50182019)
大黒 俊哉 東京大学, 農学生命科学研究科, 教授 (70354024)
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Project Period (FY) |
2013-04-01 – 2016-03-31
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Keywords | 生物多様性 / 生態系機能 / 生態系サービス / 景観生態学 / 景観管理 |
Outline of Annual Research Achievements |
昨年度と同じインドネシア・西ジャワの森林-農業景観において生態系サービス発現に寄与する生物相調査を行った。前回鳥類の点センサスを行った調査地点において,今年度はパントラップを用いた送粉昆虫相の調査を行った。その結果,潜在的な送粉昆虫およびハナバチ類の多様度は,残存天然林で最も高く,果樹を中心とした樹木園がそれに続いた。調査地点を中心に半径50m円内の植生構造,天然林までの距離(天然林内の調査区の場合は天然林縁までの距離のマイナス値)および土地利用を説明変数とし,全種数および機能タイプ別の種数を応答変数とした一般化線形モデルを使った解析を行ったところ,局所的な変数の影響が大きく,水田や畑地の中でも木本被覆率が高くなると種数が増加する傾向があった。これは,農地内に樹木を確保すること,またはアグロフォレストリーのような土地利用を展開することが,送粉サービスの向上につながることを示す結果となった。また,昨年度に取得済みの地域農民の生態系サービスに関する認識調査を解析したところ,残存天然林に近い集落に居住しているほど様々な生態系サービスに高い認識を持っており,そのサービス供給源の多くが残存天然林であった。また,送粉や生物防御サービスも広く認識されていることがわかった。天然林から離れるに従って生態系サービスに対する認識程度は低下するものの,残存天然林に変わって果樹を中心とした樹木園がサービス供給源として強く認識されることがわかった。すなわち,日常的に接する樹木に被覆された土地利用が生態系サービスの供給源として認識されていた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
1: Research has progressed more than it was originally planned.
Reason
昨年度同様インドネシアでの調査が予想以上に順調であることから,温帯地域である日本国内での調査も実施し,モンスーンアジアスケールでの農業生物多様性と生態系サービスに関する知見の集積と比較が進みつつある。さらに,生物多様性が生態系サービスの発現につながる仕組みを詳細に解明する研究にも着手できたことから,当初の計画以上の成果が上がっていると判断した。
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Strategy for Future Research Activity |
最終年度として,当所の目的である生物多様性保全と生態系サービスの適正管理に向けた農地と景観の両方の管理方法について,実行可能性も踏まえた検討を行うことが課題であるため,農地レベルと景観レベルのどちらが生態系サービス発現に寄与するかを評価しながら,最終のとりまとめを進める。
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Causes of Carryover |
訪花昆虫の種同定依頼が若干安くなったため,残金が発生した。一万円以下の端数であったため,年度末の無理な執行を行わなかった。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
次年度も訪花昆虫の種同定を行うため,サンプル数を調整しながら残金の使用を計画している。
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Research Products
(5 results)