2013 Fiscal Year Annual Research Report
血管系におけるスフィンゴシン-1-リン酸シグナルの生理的・病的役割の解明
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25293050
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Research Category |
Grant-in-Aid for Scientific Research (B)
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Research Institution | National Cardiovascular Center Research Institute |
Principal Investigator |
福原 茂朋 独立行政法人国立循環器病研究センター, 研究所, 室長 (70332880)
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Project Period (FY) |
2013-04-01 – 2016-03-31
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Keywords | スフィンゴシン-1-リン酸 / 血管内皮細胞 / ホメオスタシス / 動脈硬化 / Spns2 |
Research Abstract |
本研究の目的は、脂質メディエーターであるスフィンゴシン-1-リン酸(S1P)が血管ホメオスタシス、さらには動脈硬化症、血栓症などの血管病の発症・進展を制御する機構について、S1PトランスポーターであるSpns2に着目し解明することである。 ① Spns2依存的に細胞外に放出されるS1Pが、動脈硬化症、血栓症の発症・進展を制御する機構を解析するため、Spns2およびApoE欠損マウスを交配したところ、Spns2とApoEの2重遺伝子欠損マウスは、予想される数より大幅に少ない個体数しか生まれなかった。このことから、Spns2、ApoEの2重遺伝子欠損マウスは何らかの異常を呈している可能性が考えられ、現在その原因を解析している。 ② Spns2欠損マウスをC57BL/6マウスと戻し交配することで、遺伝的に均一なコンジェニック系統を樹立した。その結果、コンジェニック系統のSpns2ホモ欠損マウスの多くは胎生致死となり、胎生期におけるSpns2-S1Pシグナルの重要性が示唆された。現在、胎生期におけるSpns2の機能を明らかにするため、Spns2ホモ欠損マウスの胎児の解析を開始した。 ③ 前年度作成したSpns2のモノクロナール抗体の評価を行ったところ、感度が低く免疫染色などに使用できないことが分かった。 ④ 自己免疫疾患のひとつ多発性硬化症の発症におけるSpns2-S1Pシグナルの役割を解明するため、多発性硬化症の動物モデルである実験的アレルギー性脳脊髄炎の系を用いた解析を開始した。 ④ Spns2-S1Pシステムの生理的な意義を明らかにするため、ゼブラフィッシュを用いた解析を行った。その結果、胎生期においてSpns2-S1Pシグナルは、Hippo-Yapシグナル伝達系を活性化することで内胚葉組織の形成と維持に関わり、2次的に心臓の発生を制御していることが示された。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
平成25年度は、Spns2とApoEの2重遺伝子欠損マウスやコンジェニック系統のSpns2遺伝子欠損マウスが胎生致死になるなど想定していなかった結果が得られた。このことから、当初の実験計画とは若干異なった方向に進展しているが、今後の解析でSpns2-S1Pシグナルの新たな機能を明らかにできる可能性があり、その点でおおむね順調に進展していると考える。 また、新たに本年度は、多発性硬化症におけるSpns2-S1Pシグナルの役割について解析を開始した。多発性硬化症は、神経系の難病であり、本研究でこの疾患におけるSpns2-S1Pシグナルの役割を解明できれば、臨床的にも非常に意義がある。この点からも、本研究はおおむね順調に進展していると考えられる。 高感度Spns2モノクロナール抗体の作製が出来なかった点で、本研究の達成度が低下している。
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Strategy for Future Research Activity |
上述したように、これまでの解析によって、当初想定していなかった結果が得られている。そのため今後の研究は、当初の実験計画を若干変更させ、以下の点について解析を進めていく。 ① Spns2とApoEの2重遺伝子欠損マウスの表現型を詳細に調べた上で、動脈硬化症や血栓症におけるSpns2-S1Pシグナルの役割を解明していく。 ② コンジェニック系統のSpns2遺伝子欠損マウスの胎児を詳細に解析することで、胎生期におけるSpns2-S1Pシグナルの役割を明らかにする。 ③ 実験的アレルギー性脳脊髄炎のSpns2欠損マウスを作製し、多発性硬化症におけるSpns2-S1Pシグナルの役割を明らかにする。 ④ 引き続き、Spns2の中和抗体の作製を試みる。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
Spns2とApoEの2重遺伝子欠損マウスやコンジェニック系統のSpns2遺伝子欠損マウスが胎生致死になったことから、本年度、実験に使用したマウスの数が少なかった。そのため、予定よりも使用額が少なかった。 多発性硬化症におけるSpns2-S1Pシグナルの機能について解析を開始したため、次年度の動物実験費に使用する。
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Research Products
(20 results)