2014 Fiscal Year Annual Research Report
血管系におけるスフィンゴシン-1-リン酸シグナルの生理的・病的役割の解明
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25293050
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Research Institution | National Cardiovascular Center Research Institute |
Principal Investigator |
福原 茂朋 独立行政法人国立循環器病研究センター, 研究所, 室長 (70332880)
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Project Period (FY) |
2013-04-01 – 2016-03-31
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Keywords | スフィンゴシン-1-リン酸 / 内皮細胞 / ホメオスタシス / 動脈硬化 / Spns2 / 血管バリア |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究の目的は、脂質メディエーターであるスフィンゴシン-1-リン酸(S1P)が血管ホメオスタシス、さらには動脈硬化症、血栓症などの血管病の発症・進展を制御する機構について、S1PトランスポーターであるSpns2に着目し解明することである。 我々はこれまでに、Spns2は主に内皮細胞に発現し、S1Pトランスポーターとして機能していること、さらに内皮細胞からSpns2を介して産生されたS1Pが一次リンパ組織から血管内へのリンパ球の移出に必須であることを報告してきた。今回、我々は、内皮細胞からSpns2を介して産生されたS1Pの血管系、リンパ管系における機能について解析を行った。その結果、全身性Spns2欠損マウスおよび内皮細胞特異的Spns2欠損マウスのリンパ管では、内皮細胞の細胞間接着形成異常が観察された。そこで、内皮細胞間接着形成におけるS1Pの機能を理解するため、コンフルエントの培養内皮細胞をS1Pで刺激したとこと、内皮特異的な細胞間接着分子Vascular endothelial(VE)カドヘリンが細胞間接着部位に集積し、内皮細胞のバリア機能が亢進した。我々はこれまでに、低分子量G蛋白質のひとつRap1がアクチン細胞骨格系を再編することでVEカドヘリン接着を亢進し、内皮細胞バリアを増強することを報告している。そこで、Rap1がS1Pの効果に関与するか検討したところ、S1P刺激によってRap1の活性化が誘導され、細胞間接着部位に沿ってアクチン繊維が形成された。以上の結果から、Spns2を介して内皮細胞から産生されたS1Pは、オートクリンあるいはパラクリン因子として作用し、主にリンパ管構造の維持に寄与している可能性が示唆された。また、その分子メカニズムとして、S1PはRap1を介してアクチン細胞骨格の再編を惹起し、内皮細胞間接着を増強することが示唆された。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
平成26年度は、主に血管およびリンパ管におけるS1Pの機能について解析を行い、上述したように、リンパ管構造の維持におけるS1Pの重要性を明らかにした。また、昨年度の研究成果として報告した、胚発生におけるSpns2-S1Pシステムの新たな役割についての研究成果をDevelopmental Cell誌(Fukui et al. 2014)に報告することができた。以上の点から、本研究は概ね順調に進展していると考える。
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Strategy for Future Research Activity |
昨年度の実績報告書で述べたように、これまでSpns2とApoEの2重遺伝子欠損マウスやコンジェニック系統のSpns2遺伝子欠損マウスが胎生致死になるなど想定していなかった結果が得られている。そのため、動脈硬化症などの病態におけるSpns2-S1Pシステムの役割についての解析が遅れており、平成27年度はこの点を中心に解析を進めていく。 また、自己免疫疾患のひとつ多発性硬化症の発症におけるSpns2-S1Pシグナルの役割を解明するため、多発性硬化症の動物モデルである実験的アレルギー性脳脊髄炎の系を用いた解析についても継続して行っていく。
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Causes of Carryover |
平成26年度は、概ね当初予定していた研究費を使用したが、平成25年度にも次年度使用額があったため、その分が平成26年度の次年度使用額として残った。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
「今後の研究の推進方策等」の項で述べたように、平成27年度は動脈硬化症や多発性硬化症などの病態におけるSpns2-S1Pシステムの役割について中心に研究を遂行するため、予定より多くのマウスが必要となる。従って、これら実験動物の購入及び飼育費に充てる。
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Research Products
(14 results)
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[Journal Article] RhoA and ROCK mediate histamine-induced vascular leakage and anaphylactic shock.2015
Author(s)
Mikelis C.M., Simaan M., Ando K., Fukuhara S., Sakurai A., Amornphimoltham P., Masedunskas A., Weigert R., Chavakis T., Adams R., Offermanns S., Mochizuki N., Zheng Y., Gutkind J.S.
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Journal Title
Nat. Commun.
Volume: 6
Pages: 6725
DOI
Peer Reviewed
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[Journal Article] Tip cell specific requirement for an atypical Gpr124 and Reck-dependent Wnt/β-catenin pathway during brain angiogenesis.2015
Author(s)
1.Vanhollebeke B., Stone O., Bostaille N., Cho C., Zhou Y., Maquet E., Gauquier A., Cabochette P., Fukuhara S., Mochizuki N., Nathans J. and Stainier D.Y.R.
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Journal Title
eLife
Volume: 未定
Pages: 未定
DOI
Peer Reviewed
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[Journal Article] β-Catenin-dependent transcription is central to Bmp-mediated formation of venous vessels.2015
Author(s)
Kashiwada T, Fukuhara S (Co-corresponding author), Terai K, Tanaka T, Wakayama Y, Ando K, Nakajima H, Fukui H, Yuge S, Saito Y, Gemma A, Mochizuki N.
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Journal Title
Development
Volume: 142
Pages: 497-509
DOI
Peer Reviewed / Acknowledgement Compliant
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[Journal Article] The secreted protein ANGPTL2 promotes metastasis of osteosarcoma cells through integrin α5β1, p38 MAPK, and matrix metalloproteinases.2015
Author(s)
Odagiri H, Kadomatsu T, Endo M, Masuda T, Morioka MS, Fukuhara S, Miyamoto T, Kobayashi E, Miyata K, Aoi J, Horiguchi H, Nishimura N, Terada K, Yakushiji T, Manabe I, Mochizuki N, Mizuta H, Oike Y.
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Journal Title
Sci. Signal.
Volume: 7
Pages: ra7
DOI
Peer Reviewed
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