2014 Fiscal Year Annual Research Report
宿主におけるエンテロウイルス71カプシド適応変異と受容体特異性・病原性の変化
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25293111
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Research Institution | National Institute of Infectious Diseases |
Principal Investigator |
清水 博之 国立感染症研究所, その他部局等, その他 (90270644)
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Project Period (FY) |
2013-04-01 – 2017-03-31
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Keywords | エンテロウイルス / 受容体 / レセプター / PSGL-1 / 手足口病 / エンテロウイルス71 / 感染モデル |
Outline of Annual Research Achievements |
手足口病および重症中枢神経合併症の原因ウイルスであるエンテロウイルス71(EV71)の分子進化・遺伝的多様性を反映した一連のEV71変異株を作製し、受容体特異性・抗原性等のウイルス表現型、また、動物モデルにおける病原性発現について比較解析を行い、以下の結果を得た。 1.リンパ球におけるEV71の主要な宿主受容体であるPSGL-1結合性を規定する主要なウイルスカプシドアミノ酸としてVP1-145を同定した。VP1-145はウイルス粒子表面でVP1-244リシンと隣接し、リシン側鎖の向きに影響を与えることが示唆された。VP1-145のアミノ酸の種類がスイッチとなり、VP1-244リシン側鎖の向きを変えPSGL-1結合性を規定する。クライオ電顕等を用いたEV71粒子の構造解析により、EV71中和活性を有するモノクローナル抗体の結合部位が、VP1-145を含むPSGL-1結合領域と一部重複することを明らかにした。 2.PSGL-1受容体依存性および非依存性EV71感染・病原性発現機構を解析するため、PSGL-1結合に関与するアミノ酸のみが異なる感染性クローン由来PSGL-1結合株(02363-EG株)とPSGL-1非結合株(02363-KE株)を作製した。PSGL-1結合株および非結合株を、それぞれ、カニクイザルに感染させ、病原性発現、異なる組織におけるウイルス増殖、ウイルス抗原・病変の局在、免疫炎症反応、個体内でのウイルス遺伝子変異等について比較検討した。 3.PSGL-1非結合02363-KE株はPSGL-1結合02363-EG株と比較して感染個体内で効率よく増殖し、無菌性髄膜炎等中枢神経症状が強い傾向が認められた。PSGL-1結合株はカニクイザル感染後すみやかにPSGL-1結合領域アミノ酸(VP1-145G → 145E)に変異を生じることが明らかとなった。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
1.リンパ球における主要な宿主受容体であるPSGL-1とEV71結合の構造学的基盤の解析を継続し、PSGL-1結合性を規定する主要なウイルスカプシドアミノ酸としてVP1-145、VP1-242、VP1-244等を同定した。VP1-145は、ヒトEV71分離株において多様性を示すアミノ酸可変部位として、PSGL-1受容体特異性・中和抗原性とその変化に関与することが示された(一部成果は論文発表済)。 2.上記構造学的解析結果に基づき、PSGL-1受容体結合・中和抗原性に関与するアミノ酸のみが異なる感染性クローン由来PSGL-1結合株(02363-EG株)とPSGL-1非結合株(02363-KE株)を調整し、培養細胞レベルにおけるウイルス学的性状の違いを確認した。 3.in vivoにおけるEV71の病原性発現、異なる組織におけるウイルス増殖、ウイルス抗原・病変の局在、免疫炎症反応、個体内でのウイルス遺伝子変異等について比較検討するため、PSGL-1結合株(02363-EG株)とPSGL-1非結合株(02363-KE株)を用いたカニクイザル感染実験を実施した。今年度は、各種臨床検体や中枢・非中枢神経組織におけるウイルス局在や病変についての詳細な解析を実施した。各種臨床検体や臓器中のウイルス遺伝子解析により、PSGL-1結合株は、カニクイザル感染後、PSGL-1結合領域アミノ酸(VP1-145等)における速やかなウイルス遺伝子変異により、PSGL-1受容体特異性や抗原性等のウイルス表現型が変化することが示唆された。また、EV71接種後の変異ウイルスの選択的増殖およびquasi-speciesについて解析を行った(一部研究成果は論文投稿中)。
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Strategy for Future Research Activity |
1.カニクイザル感染実験のウイルス学的・病理学的解析を継続し、感染後のEV71カプシドアミノ酸変異とPSGL-1受容体特異性・抗原性等のウイルス表現型変化の関連性について明らかにする。 2.カニクイザル感染実験により、VP1-145等における、特異的かつ速やかな変異株(non-PB VP1-145E variant)の出現が明らかとなった。カニクイザル感染モデルで認められた特異的アミノ酸変異部位は、ヒト集団におけるEV71の分子進化に重要なアミノ酸部位であることが示されており、ヒトにおけるEV71の分子進化を反映したモデルとして期待できる。また、VP1-145等におけるアミノ酸多様性は、ヒトにおける病原性の違いに関与するとの報告があることから、EV71の分子進化、受容体特異性・病原性変化の関連性を解析するための、in vivo感染モデルとして解析を進める意義がある。 3.PSGL-1結合株(02363-EG株)は、カニクイザル感染後速やかにPSGL-1結合領域アミノ酸(VP1-145)が変異し、ほとんどの臨床検体や臓器から、変異したPSGL-1非結合株(non-PB VP1-145E variant)が検出され、多くの組織では、PSGL-1非結合株が効率よく増殖することが明らかとなった。一方、感染後期の血中PBMCの一部からPSGL-1結合株 (VP1-145G variant)が検出されたことから、PSGL-1依存性EV71増殖への免疫細胞の関与が示唆された。今後、in vivoにおけるPSGL-1依存性EV71増殖の標的細胞の特定と生理的意義の解析を進める。
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Causes of Carryover |
今年度分は、当初予定していたより、カニクイザル組織由来のEV71分離・塩基配列解析実験の回数が少なくなり、予定していた物品日を次年度の感染動物実験に使用することとした。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
次年度は、昨年度予定していなかったPSGL-1/SCARB2発現ノックインマウスを用いたEV71病原性解析実験を計画しており、ノックインマウス作製(外注予定)に関わる経費使用を予定している。
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Research Products
(13 results)
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[Journal Article] Establishment of a panel of in-house polyclonal antibodies for the diagnosis of enterovirus infections2015
Author(s)
Kotani O, Iwata-Yoshikawa N, Suzuki T, Sato Y, Nakajima N, Koike S, Iwasaki T, Sata T, Yamashita T, Minagawa H, Taguchi F, Hasegawa H, Shimizu H, Nagata N
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Journal Title
Neuropathology
Volume: 35
Pages: 107-121
DOI
Peer Reviewed / Acknowledgement Compliant
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