2014 Fiscal Year Annual Research Report
蛍光タンパク発現マウスを用いた感覚系入出力における脊髄神経回路網の3次元機能解析
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25293137
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Research Institution | Kansai Medical University |
Principal Investigator |
伊藤 誠二 関西医科大学, 医学部, 教授 (80201325)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
松村 伸治 関西医科大学, 医学部, 講師 (70276393)
西田 和彦 関西医科大学, 医学部, 助教 (80448026)
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Project Period (FY) |
2013-04-01 – 2016-03-31
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Keywords | 多光子励起顕微鏡 / 脊髄後角 / 神経回路網 / 子宮内遺伝子導入 / トランスジェニックマウス / 皮膚刺激 / Ca2+応答 / 形態変化 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究では末梢組織からの感覚入力が脊髄後角の神経細胞ネットワークでどのように情報処理され、上位中枢に出力されるかを明らかにするため、形態観察用の蛍光タンパク(GFP)だけでなく機能解析用のCa2+センサー蛍光タンパクを子宮内遺伝子導入により脊髄後角神経細胞に発現させたマウスを用いて平成26年度の研究実施計画1)~3)に沿って多光子励起顕微鏡を用いた研究を実施し、以下の成果が得られた。
1)Ca2+センサー蛍光タンパクを子宮内遺伝子導入法を用いて発現させたトランスジェニックマウスを作製し、皮膚での熱、触、機械的刺激にCa2+応答する脊髄ニューロンとそのネットワークを多光子励起顕微鏡を用いてin vivoで解明を行った。その結果、多光子励起顕微鏡下に1回の皮膚刺激により応答する細胞が数10個同時に観察され、脊髄後角の表層では侵害刺激の受容として、熱や機械的刺激に応答するニューロン、深層では触による非侵害刺激に応答するニューロンが多数存在することを認めた。さらに、異なる皮膚分節からの入力に応答する脊髄後角のニューロンが数多く観察されたので、体節を超えた情報伝達が行われることを明らかにし、PLoS ONEに発表した。 2)神経特異的にYFPを発現するトランスジェニックマウス(thy1-YFP)で炎症性疼痛モデルを作製し、神経ネットワークの変化を形態学的に解析を行い、炎症直後から樹状突起上に新たなスパイン様構造が形成されること、炎症性疼痛モデルで多光子励起画像でシナプス数が経時的に増加すること、AMPA型、NMDA型グルタミン酸受容体いずれの拮抗薬でもその経時変化が抑制されることを明らかにし、Eur. J. Neurosci.に発表した。 3)脊髄後角ニューロン選択性、抑制ニューロン選択性をもつドライバーマウスとレポーターマウスを交配して、それらのニューロンに選択的にCa2+センサー蛍光タンパクを発現するトランスジェニックマウスを作製し、実験を開始した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
平成25年度実験計画の(1)~(3)は予定通り実験が実施され、成果が得られた。(5)の痒みモデル動物系を確立し、実験を実施し、早急に論文を作成する予定である。(4)の脊髄後角ニューロンとDRGニューロンの共培養系の実験は、現時点では開始できていない。 平成26年度実施計画(1)~(5)の4項目が達成できていることからB:おおむね順調に進展していると考える。
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Strategy for Future Research Activity |
本年度は露出した脊髄後角にグルタミン酸、プロスタグランジン(PG)E2などの神経伝達物質、生理活性物質で直接刺激する一方、阻害薬・拮抗薬を用いて刺激応答を解析する。さらに、昨年度報告した末梢組織からの刺激応答が脊髄後角の数多くのニューロンの情報処理の統合された結果を投射ニューロンの出力として捉え、出力に対する阻害薬・拮抗薬の影響を検討し、それに関与する生体因子を解析する。
1)脊髄ニューロンあるいは抑制性介在ニューロン特異的Creマウスをドライバーマウスとして、YCnanoよりCa2+応答、蛍光強度が優れているCa2+蛍光タンパクを発現するトランスジェニックマウスを作製、スライスを調製し、GABAとglycine受容体拮抗薬存在下、非存在下に神経伝達物質グルタミン酸で直接刺激し、さらにPGE2作動薬・拮抗薬を用いてCa2+応答を解析する。(松村、西田) 2)脊髄ニューロンあるいは抑制性介在ニューロン特異的に蛍光タンパクを発現するマウスに、皮膚に刺激を加えPGE2受容体作動薬・拮抗薬や酵素阻害薬を投与して、機能的変化への効果をin vivoで検討する。(松村、西田、伊藤) 3)一次求心性線維を介して脊髄後角に伝達された皮膚感覚は一次求心性線維、投射ニューロン、介在ニューロン、下行性抑制ニューロンが複雑に絡み合った神経回路網を形成し、情報処理され出力される。神経回路網の情報処理は、投射ニューロンに集約されることから、脳幹にコレラ毒素を投与して投射ニューロンを同定し、その刺激応答を解析する。(西田、松村) 4)痒みモデルマウスを作製し、痒みの伝達にグルタミン酸が関与することを明らかにしているので、疼痛と痒みの神経ネットワークの違いを検討する。(伊藤、松村)
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Causes of Carryover |
研究計画は研究実績概要に記載したように、順調に進捗している。次年度使用額が生じた主な理由は当初予定していた研究支援者の雇用費が十分使用できなかったためである。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
平成26年度に雇用した研究支援者の雇用を継続させるために基金分の一部を今年度執行する予定である。
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[Journal Article] Transcriptional mechanisms link epithelial plasticity to adhesion and differentiation of epidermal progenitor cells.2014
Author(s)
Lee, B., Villarreal-Ponce, A., Fallahi, M., Ovadia, J., Sun, P., Yu, Q.C., Ito, S., Sinha, S., Nie, Q. and Dai, X.
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Journal Title
Developmental cell
Volume: 29
Pages: 47-58
DOI
Peer Reviewed / Open Access
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[Journal Article] Three-dimensional distribution of sensory stimulation-evoked neuronal activity of spinal dorsal horn neurons analyzed by in vivo calcium imaging.2014
Author(s)
Nishida, K., Matsumura, S., Taniguchi, W., Uta, D., Furue, H. and Ito, S.
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Journal Title
PLOS ONE
Volume: 9
Pages: e103321
DOI
Peer Reviewed / Open Access
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